中医協薬価専門部会は７月26日、薬価改定時における補正加算をめぐり議論を行った。小児や希少疾患などの効能追加の評価は2.5～15％まで幅があるものの、加算の実績は「５％」が大半を占めていることから、診療側の長島公之委員（日本医師会常任理事）は、「現行ルールの範囲内で、もう少し高めの加算率を適用するなどの運用を検討してもよいのではないか」との考えを示した。一方で、支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）は、効能追加が市場規模の拡大につながることから、見直しに際しては、「市場規模、さらには医療保険財政への影響を踏まえて議論する必要がある」と指摘。「どのような対応が必要なのか、市場拡大再算定のあり方とセットで判断させていただきたい」と述べた。

◎補正加算の実績「５％」が106成分、「7.5％」が５成分、「10％以上」はゼロ

薬価改定時の加算としては、小児、希少疾病、先駆的、特定用途に係る効能・効果が追加された既収載品（いずれも加算は2.5～15％）と、市販後に真の臨床的有用性が検証された既収載品（2.5～15%）がある。ただ、真の有用性加算を除き、併算定はできず、加算率が最も大きいものが採用されている。厚労省が中医協に提出した資料によると、2010年度以降の加算の実績を見ると、「５％」が106成分、「7.5％」が５成分、「10％以上」はゼロで、大半が５％にとどまっている状況にある。

◎診療側・森委員「加算率の適応、幅を広げていくことは一つの方法」

診療側の長島委員は、「例えば希少疾病の中でも極端に患者数が少ない適応が追加された場合や、小児適用の追加のために大規模な小児適応の治験を実施した場合など、しかるべき場合においては、現行ルールの範囲内で、もう少し高めの加算率を適用するなどの運用を検討してもよいのではないか」と述べた。

診療側の森昌平委員（日本薬剤師会副会長）は、「イノベーションの評価やメリハリの観点から加算率の適応、幅を広げていくことは一つの方法かと考える」と述べた。製薬業界が加算の併算定不可の見直しを訴えていることにも触れ、「イノベーション評価の点から、何かしらの配慮ができれば良いと考えるものの、全ての場合に算定可能にすることは議論が必要な点と考える」と述べ、「今後の議論の際には、具体的な品目例や優先度、想定される影響、現在受けている不具合などの詳細なご説明をいただきたい」と製薬業界に要望した。

◎支払側・松本委員　効能追加は企業の利益増に「市場規模も非常に重要な視点」

一方で、支払側の松本委員は、「効能追加や新たなエビデンスによって、医療現場で評価されること自体が企業の収入あるいは利益増につながり、市場規模というのも非常に重要な視点であると考えている」と述べた。そのうえで、「仮に評価対象となるデータの拡大や加算の適用方法を変更する場合には、市場規模、さらには医療保険財政への影響を踏まえて議論する必要がある。そうした議論に資するデータを提出いただいた上で、どのような対応が必要なのか、市場拡大再算定のあり方とセットで判断させていただきたい」との考えを示した。

◎石牟禮専門委員　加算率は「新薬収載時の加算率と同じレベルに広げることも一案」

専門委員の石牟禮武志氏（塩義製薬）は、「開発促進とかイノベーションの推進というインセンティブとして、こういった加算が設けられていると承知しており、市場規模自体は小さいものと認識している」と述べた。そのうえで、「適用される率が低いということと共に生産性が認められない場合があるということがある。これは運用上の課題として、きちんとその企業が汗をかいた結果が見える形となるような運用に改善していただく必要があると考えている」と述べた。補正加算の加算率については、「新薬収載時の加算率と同じレベルに広げるということを検討いただくのも一案ではないか」と述べた。

◎再生医療等製品など市販後エビデンスに基づく薬価引下げ「具体的な議論を始める時期に来ている」

このほか、条件・期限付承認を受けた再生医療等製品が改めて承認を受けた際、明らかでなかった医療上の有用性が客観的に示された場合は、改めて補正加算の該当性について評価することとされている。診療側の長島委員は、「今後、市販後に集積されるエビデンスに基づいて、薬価の引下げも含む見直しを行うことが必要となる再生医療等製品を含む医薬品は増えてくると思われる。将来に向けて、その仕組みについて、具体的な議論を始める時期に来ている」と述べた。