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国際共同治験前の日本人P1 海外先行品は原則実施不要 薬物動態は可能な限り収集を 厚労省・薬事検討会

公開日時 2023/09/14 05:30
厚生労働省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」は9月13日、海外で開発が先行している品目では、「国際共同治験開始前に日本人対象の第1相試験を追加実施する必要はない」とすることを了承した。ただ、「可能な限り、日本人における薬物動態等に関する情報を収集することが望ましい」ことも明確化する考え。日本だけで第1相試験の追加実施を求められることがあり、国際共同治験に参画できないなどの不利益があることが指摘されていた。同省は、国際共同治験に参画する日本人被験者の安全性確保とともに、こうした不利益を最小化したい考え。近く、通知を発出し、周知を図る方針。

日本人の第1相試験について、2007年の課⾧通知では、「原則として日本人の第Ⅰ相試験が必要」とされ、その後14年の事務連絡では、「日本人での第Ⅰ相試験を実施しないことが許容されうると考えられる場合の例」が示されており、「総合的に検討したうえで判断」されている。ただ、製薬企業にとっては、後から追加実施を求められるリスクが大きく、開発を断念するケースや、PMDAの相談をせずに第1相試験の実施に着手する企業もあるという。

こうした状況を踏まえ、同省は、これまでの通知を整備し、新たな通知を発出することで、現時点の考え方を周知する方針。あわせて、これまでの PMDA の相談実績等に基づき、被験薬や国際共同治験の実施時期、安全性、用量などの試験デザインなど、日本人の安全性について考慮すべき要素についてリストアップし、日本人第1相試験が必要か、企業が判断しやすいよう、整備する考え。

◎第1相から日本参画が「望ましい」とのスタンスは変更なし

具体的には、「一般に、国際共同治験開始前の第1相試験については、 人種・民族や国・地域ごとに実施することが必須となるものではない」ことを明確化する。臨床試験に参画する被験者の安全性の確保の観点から実施される観点から、利用可能なデータから安全性や忍容性のリスクを踏まえて日本人データが必要とされる場合を除き、「原則として、日本人での第1相試験を追加実施する必要はない」とする方針。日本人第1相試験を実施しない場合は、必要に応じて日本人被験者の安全確保策を別途設定するなど、安全性確保も求める。

ただ、「我が国の創薬力向上の観点からは、第1相試験の段階から日本も開発計画の議論及び臨床試験に参画することが望ましいというスタンスに変わりはない」としている。医療機関に対して詳細な情報提供を行う観点や、民族的要因など薬物動態に影響を及ぼす観点があることを踏まえ、「例えば第1相試験を国際共同治験として実施する場合には、日本がその第1相試験から参画するなど、可能な限り日本人における薬物動態等に関する情報を収集することが望ましい」ことも明確化する考え。第1相試験の実施の有無によらず、承認申請までの間に日本人のPK/PDデータを収集するなどして、国内外差の差について検討を行うことも求める。

◎オーファンや小児用医薬品は日本人P1不要で国際共同治験に参画可能も リスクは個別品目で判断を

個別品目としては、オーファンドラッグや小児用医薬品など、アンメットメディカルニーズが高く、治験に参画しない不利益が大きい品目では、「適切なインフォームドコンセントを得た上で、日本人第1相試験を実施せずとも国際共同治験に参加できる」とした。このほかの品目であっても、「非臨床データや海外で先行する臨床試験における複数の人種での結果 、類薬の情報を含めた既存の知見、モデリング&シミュレーションに基づき、薬物動態や反応、安全性が人種などの民族的要因の影響を受けやすいことが認められていない場合」 などで、日本人被験者の安全性が臨床的に許容・管理可能である場合には、日本人第1相試験を実施せずに、国際共同治験への参画を可能とした。

ただ、オーファンドラッグや小児用医薬品であれば、すべての品目が日本人第1相試験実施の必要性がないということではなく、利用可能な科学的データに基づき、最終的には個別品目で判断されることになる。例えば、抗がん剤など、「重篤な有害事象が高頻度に生じることが想定され、安全域の狭い医薬品であって、年齢層や適応によらず日本人での投与経験がない場合など安全性情報が限られている医薬品」については、日本人第1相試験の必要があるか、「より慎重に判断する必要がある」とした。

また、日本人で患者数が多く、時間がある場合では日本人第1相試験の実施を検討することが望ましいとした。

◎芦田構成員「第1相試験のスピードやコストの課題をどう解決していくか」と問題提起

検討会では、文言や英語での情報発信に際しての指摘も相次いだ。このほか、芦田耕一構成員(INCJ 執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)は、日本の創薬スタートアップであっても、スピードやコストの観点から海外で第1相試験を実施するケースが増える可能性を指摘。「投資家や今後提携を模索するような製薬企業に対して、自社の価値や魅力度を高めるために、FDAで治験開始の許可を得ようとするということは、いまの市場環境を考えれば、ある意味、自然な流れ」とも述べた。そのうえで、「第1相試験のスピードやコストについての課題をどう解決していくか、どう海外に比べて魅力的に競争力のあるものにするかは、検討する必要があるのでは」と述べた。治験環境の整備については、今後検討会で改めて議論される方針。
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