厚生労働省は12月13日、中医協薬価専門部会に、2024年度薬価改定で試行的に導入する後発品の企業指標に基づく評価のシミュレーションを示した。安定供給に貢献する上位20％の企業である「一定水準を超える取組を行っていると評価できる企業の区分（ A 区分）」は41社。現行の３価格帯とは異なる価格帯として評価を受けるのは、シミュレーションによると120成分。価格帯の増加を懸念する声のほか、24年度改定ではすべての企業指標で評価ができずに一部の評価項目のみにとどまることへの懸念の声が上がった。支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）は、「安定供給に支障を来すことのないよう、企業区分の線引きについてはここでは判断を保留させていただきたい」と述べた。

◎厚労省シミュレーション　A区分は41社、B区分は38社、C区分は111社

厚労省の実施したシミュレーションの対象は、後発品を１品目でも製造販売する190社、後発品 約8600 品目、その他品目約4400 品目。厚労省は企業から提出された資料や統計情報などを基に、後発品の供給実績や薬価の乖離状況などをポイント化した。

上位20％の企業である「一定水準を超える取組を行っていると評価できる企業の区分（ A 区分）」が41 社、「一般的な取組状況にある企業の区分（B 区分）」が38社、合計点がマイナスとなった「一定水準を下回る取組を行っていると評価される企業の区分（ C 区分）」が 111 社となった。上位20％となったA区分の企業では、「他社が出荷停止又は出荷量の制限を行った医薬品に対する自社品目の追加供給の実施」などを評価されている割合が高く、C区分の企業では自社都合の出荷停止や、乖離率が大きかったものなどが影響した。

◎後発品収載から５年以内、安定確保医薬品A・Bで平均乖離率以内の品目など要件満たす品目対象

A区分と評価された企業の品目について、最初の後発品収載から５年以内の後発品と、安定確保医薬品Ａ又はＢに該当する後発品（基礎的医薬品を除く）で、▽後発品全体の平均乖離率以内の品目であること、▽仮に現行ルールにより価格帯集約を行った場合に、後発品のうち最も高い価格帯となる品目であること、▽自社理由による限定出荷、供給停止を来している品目でないこと―の全てに該当する品目に限定して、現行の後発品の改定時の価格帯集約（原則３価格帯）とは別に、該当する品目のみを集約し、１価格帯増やすことを提案した。

◎診療側・長島委員「価格帯あまりに多くなるのは避けるべき」　支払側・松本委員「判断は保留」

診療側の長島公之委員（日本医師会常任理事）は、「３価格帯に集約する制度設定時の趣旨を踏まえると、この価格数があまりに多くなるのは避けるべき。いずれにしても、今回の試行による影響についてデータを収集してフォローしていくことが重要」との考えを表明。「ジェネリック医薬品については、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして、製造販売が承認されているという国による説明があるにもかかわらず、患者さんにとっては、どの会社の後発品が調剤されるかによって自己負担が変わってくるような状況になっている。品質や企業の体制によって、同じ成分でも薬価が異なることについて、国が国民患者に対して説明を果たすべき」との考えを表明した。

厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「ご指摘の通り、企業数が増え、価格帯が多くなり、元々3価格帯に集約したこれまでの経緯もある。試行的導入の中で、まずはＡ区分のものを一つの価格帯にまとめた上で、どういう影響が出るかを見ていければと思っているところだ」と述べた。

支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）は、A区分に属す企業でも大きくマイナスに振れている項目もあることから、「業界全体として安定供給が大丈夫なのか強い不安を覚える」と述べた。B区分の数社では、他社製品の増産を行っていることから、「20%で線を引くのか議論の余地があるように思う」と述べた。一方、C区分ではバラつきが大きいことから、「企業指標の一部のみを先行的に適用することで弊害が生じないのか疑問を持つ」とも述べ、「仮に試行的に実施するとしても、安定供給に支障を来すことのないよう、企業区分の線引きについてはここでは判断を保留させていただきたい」と述べた。

支払側の鳥潟美夏子委員（全国健康保険協会理事）は、「企業指標の導入および評価と評価結果の薬価制度における取り扱いは、後発医薬品の安定供給の第一歩」として、「早期の導入および着実な検証を通じて第2、第3の改善に繋げていただくよう改めてお願いする」と述べた。