国がん 患者申出療養制度を活用 小児・AYA世代のドラッグアクセス改善で医師主導臨床研究スタート
公開日時 2024/01/22 04:51
国立がん研究センターは1月19日、患者申出療養制度を活用し、小児・AYA世代のがん患者を対象とした国内未承認の複数治療薬による医師主導臨床研究を開始したと発表した。研究初期はグリベック錠やテセントリク点滴静注など5製品9剤型を対象に、小児がんの安全性および有効性を評価する。登録症例はコホートごと30例を予定し、6例で中間解析を行う。記者会見に臨んだ小児腫瘍科の小川千登世科長は、「新たな治療薬を使える体制を整えることで小児・AYA世代のがん患者さんのドラッグアクセスを改善したい」と強調。研究データについては、「将来的に保険適用を検討する際の参考となることを期待したい」と意気込んだ。
今回実施する医師主導臨床研究は、「小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療に関する患者申出療養」(NCCH2220;PARTNER試験)と呼ばれ、難治性小児・AYAがん患者を対象に、患者申出療養制度を利用して適応外薬あるいは未承認薬を投与する臨床研究。2023年12月21日の患者申出療養評価会議で承認されている。
対象患者は、①がん遺伝子パネル検査を受けて、何らかの適応外薬の推奨が専門家会議および担当医からなされている、②国内成人または海外小児において薬事承認された医薬品の適応がん種と診断されている―ことを要件とした。
◎対象薬剤はグリベック錠やテセントリク点滴静注など5製品9剤型
対象医薬品は、国内または海外で小児を対象とした臨床試験が行われており、小児で一定の安全性情報がある薬剤。具体的には、①グリベック錠100mg、②ヴォトリエント錠200mg、③ジャカビ錠5mg、10mg、④メキニスト錠0.5mg、 2mg、▽トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物経口液(未承認薬)、⑤テセントリク点滴静注840mg、1200mg―の5種9剤型で、ノバルティス(①~④)と中外製薬(⑤)から無償提供される。なお、対象薬剤は今後増やす方針。
主要評価項目は、医薬品コホートごとの用量制限毒性相当の有害事象発現割合、奏効割合(施設判定)、病勢制御割合(施設判定)、無増悪生存期間、全生存期間、薬物動態パラメータ。予定登録症例数は医薬品コホートごとに最大30例で、6例で中間解析を行う。登録期間は3年で、追跡期間は登録終了後1年間とした。スタート時の実施医療機関は国立がん研究センター中央病院とするが、その後、がんゲノム医療中核拠点病院および小児がん中央機関、小児がん拠点病院なども追加する予定。なお、薬剤については企業からの無償提供で行うほか、研究費はAMEDの研究費で賄う。このため患者費用は、保険診療内の入院料と検査料(小児慢性特定疾病医療費助成制度の助成対象)と食事費のみとなる。
◎小川・小児腫瘍科長「小児・AYA世代のがん患者のドラッグアクセスを改善したい」
小川千登世・小児腫瘍科長は会見で、「小児がんの患者さんから使用したいという申し出があると想定される適応外薬、あるいは未承認薬などの医薬品をあらかじめ準備し、使える体制を整えておくことで、必要とする医薬品を迅速に患者さんに届け、医師の管理のもとで 使用できることを目指している」と強調。「研究の中で収集する各医薬品の治療効果や副作用のデータが今後の患者さんのために役立ち、さらには将来的に保険適用を検討する際の参考となることを期待している」と述べた。
また、「新たな治療薬を使える体制を整えることにより、小児・AYA世代のがん患者さんのドラッグアクセスの改善を目指したい」と意気込んだ。