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新薬3製品承認へ アビガンのマダニ媒介感染症「SFTS」の効能追加は継続審議に 医薬品第二部会

公開日時 2024/05/10 04:49
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は5月9日、日本イーライリリーの再発・難治性マントル細胞リンパ腫治療薬・ジャイパーカ錠(一般名:ピルトブルチニブ)など新薬4製品の承認可否を審議し、うち3製品を承認することを了承した。審議品目のうち富士フイルム富山化学のRNAポリメラーゼ阻害剤・アビガン錠の「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染症」の効能追加は継続審議となった。SFTSウイルス感染症はマダニ媒介感染症として知られ、全世界で治療薬はない。

◎アビガンのSFTS効能追加 「明確に有効性が示されていない」 市販後対応を含め再度審議

厚労省は部会後の記者説明会で、アビガンのSFTSウイルス感染症の効能追加が継続審議となった理由などを説明した。SFTSウイルス感染症に治療薬が存在せず、致死性も高い病態ということもあり、臨床試験をデザインしにくいということを部会委員は理解した上で、現在提出されているデータからは「明確な有効性の結果が示されていない」との判断に至ったという。

ただ、今後の対応については、「部会で明確に追加試験を必要とされたわけではない」とし、「市販後を含めて対応を検討する必要がある、ということになった」と説明した。今後、承認内容に基づき市場で使用実態を積み上げていくのか、市販後に臨床試験を行うかなどを再度審議する見通し。

SFTSウイルス感染症は、主にマダニを介して感染し、発熱、倦怠感等に続き、嘔吐、下痢等の消化器症状が認められることが多く、臓器不全によって死に至る場合もある疾患。確立した治療法はない。患者数は763人と推定されている。

このほか、この日の部会では、MSDのキイトルーダ点滴静注の胆道がんの効能追加など4製品を承認する方針が報告された。効能追加などは5月中、新有効成分含有医薬品など薬価収載が必要な品目は6月の正式承認が見込まれる。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

ジャイパーカ錠50mg、同錠100mg(ピルトブルチニブ、日本イーライリリー):「他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤。用法・用量は「通常、成人にはピルトブルチニブとして200mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。

海外では、マントル細胞リンパ腫の適応で23年1月に米国、同年10月に欧州で承認された。24年1月時点で38の国又は地域で承認済み。

国内でBTK阻害剤としては、ヤンセンファーマのイムブルビカカプセル(イブルチニブ)がマントル細胞リンパ腫1次治療の適応を持っている。

プレバイミス錠240mg、同点滴静注240mg(レテルモビル、MSD):「臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は5年10カ月。

抗サイトメガロウイルス化学療法剤。18年3月に「同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」の適応で承認を取得している。今回、臓器移植患者における適応を追加する。

海外では24年1月時点で、米国および欧州を含む計32の国又は地域で、腎移植におけるサイトメガロウイルス感染症の予防を含む効能・効果で承認されている。

▽①小児用レルベア50エリプタ14吸入用、同50エリプタ30吸入用、②レルベア100エリプタ14吸入用、同100エリプタ30吸入用(フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロールトリフェニル酢酸塩、グラクソ・スミスクライン):「気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果とし、小児用量を追加する①新医療用配合剤、②新用量医薬品。再審査期間は4年。

ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の配合剤。2013年9月に成人気管支喘息の適応で承認されており、今回、小児用量の追加と小児用の剤形追加を承認することが了承された。

小児気管支喘息に対する用法・用量は、5歳以上12歳未満の小児に対しては通常、「小児用レルベア50エリプタ1吸入(ビランテロールとして25μg及びフルチカゾンフランカルボン酸エステルとして50μg)を1日1回吸入投与する」。12歳以上の小児に対しては通常、「レルベア100エリプタ1吸入(ビランテロールとして25μg及びフルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg)を1日1回吸入投与する」。

海外では24年3月現在、レルベア100の12歳以上の小児気管支喘息に対する用法・用量が欧州を含む60カ国以上の国又は地域で承認済み。米国において、レルベア50は、5歳以上の小児気管支喘息に対する用法・用量で承認されている。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

ビラフトビカプセル50mg、同75mg(エンコラフェニブ、小野薬品):「がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がん及びBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和8年9月26日まで)。
メクトビ錠15mg(ビニメチニブ、小野薬品):「同」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は同。

ビラフトビはBRAF阻害剤。メクトビはMEK阻害剤。2剤併用療法による甲状腺がん及び甲状腺未分化がんに対する適応追加の一変申請が23年5月に行われた。海外では24年1月時点で、甲状腺がんに対する2剤併用療法が承認されている国又は地域はない。

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺組織中に発生する悪性腫瘍であり、組織学的には、分化がん(甲状腺がんの約97%)、未分化がん(同1~2%)、髄様がん(同1~2%)に大別される。国内の罹患者数は、22年で約1万8600人、死亡者数は約1900人と推定されている。BRAF遺伝子変異陽性は、甲状腺がん患者の37~68%に認められる。

キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「治癒切除不能な胆道がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。

ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。今回追加する胆道がんに対する用法・用量は、「ゲムシタビン塩酸塩及びシスプラチンとの併用において、通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔又は1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する」。国内では19年に約2.2万人が新たに胆道がんと診断されている。

海外では24年1月時点で、胆道がんに係る効能・効果で7の国又は地域で承認済み。

ジーラスタ皮下注3.6mg(ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)、協和キリン):「造血幹細胞の末梢血中への動員」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(令和8年2月24日まで)。

持続型G-CSF製剤。22年2月に「同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員」の適応で承認されており、今回、自家末梢血幹細胞移植にも用いることができるよう、現在の「同種末梢血幹細胞移植のための」を削除する。
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