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武田薬品のCMV感染症薬など新薬9製品を審議へ 塩野義製薬のコロナワクチンも 5月24日の第二部会で

公開日時 2024/05/13 04:48
厚生労働省は5月24日に薬事審議会・医薬品第二部会を開き、武田薬品の臓器移植におけるサイトメガロウイルス(CMV)感染症を対象疾患とするpUL97キナーゼ阻害薬・リブテンシティ錠(一般名:マリバビル)など新薬9製品の承認の可否を審議する。審議品目には、先駆け審査指定を受けている第一三共のEZH1/2阻害薬・エザルミア錠(バレメトスタットトシル酸塩)の再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫の効能追加や、塩野義製薬の新型コロナワクチンのコブゴーズ筋注の再審議も含まれる。

コブゴーズは2023年7月31日の第二部会で審議されたが、「現在までに評価された臨床試験成績のみでは、本ワクチンの有効性を明確に説明することが難しい」と判断され、継続審議となった。当時、申請資料の中に参考資料として提出された臨床試験成績などに基づき改めて評価する、ということも確認されていた。厚労省は、この参考資料として提出された臨床試験成績の評価作業が「一定程度できたということで、再度審議する」としている。

【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
コブゴーズ筋注(組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン、塩野義製薬):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

遺伝子組み換えタンパクワクチンで、起源株を用いたもの。塩野義製薬は22年11月、18歳以上の初回免疫及び追加免疫による新型コロナの予防を予定適応として申請した。

コブゴーズの承認申請に用いた臨床試験は、初回免疫の対照薬はバキスゼブリア、追加免疫の対照薬はコミナティで、これらと中和抗体価を比較することでコブゴーズの有効性を評価する試験だった。23年7月の第二部会での審議では、「対照薬の中和抗体価の値が通常想定される値よりも相当程度低い」との議論があり、コブゴーズの有効性の評価が困難だとして継続審議となった。そして、申請資料の中に参考資料として提出されている臨床試験成績などに基づき、改めて評価することも確認された。

ザビセフタ配合点滴静注用(アビバクタムナトリウム・セフタジジム水和物、ファイザー):「本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、インフルエンザ菌、緑膿菌による敗血症、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。

セフェム系抗菌薬・セフタジジム水和物に、新規のβ-ラクタマーゼ阻害薬・アビバクタムナトリウムを配合した注射用β-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤。アビバクタムナトリウムがβ-ラクタム系抗菌薬の耐性機序に関わるβ-ラクタマーゼのうち、AmblerクラスA、クラスC、一部のクラスDのセリン-β-ラクタマーゼを阻害することで、セフタジジム水和物がβ-ラクタマーゼ産生菌に対して抗菌作用を発揮する。

ファイザーは薬剤耐性(AMR)対策への新たな治療選択肢として開発・申請した。AMRとは、感染症の原因となる病原体に対して治療薬が効かない、もしくは効きにくくなること。未来にも使える抗菌薬を残そうと、世界各国でAMR対策に向けた取り組みが進められている。

リブテンシティ錠200mg(マリバビル、武田薬品):「臓器移植(造血幹細胞移植も含む)における既存の抗サイトメガロウイルス療法に難治性のサイトメガロウイルス感染症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。

pUL97キナーゼ阻害薬。pUL97キナーゼとその天然基質を標的として阻害する最初で唯一の抗ウイルス剤。開発コードはTAK-620。サイトメガロウイルス(CMV)感染症は移植後の患者に最もよくみられる感染症のひとつで、移植後に感染又は再活性化すると、移植臓器の喪失などの深刻な状態になる可能性がある。

タイフィム ブイアイ注シリンジ(精製Vi多糖体腸チフスワクチン、サノフィ):「腸チフスの予防」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

腸チフスの不活化ワクチン。現在、日本で承認されている腸チフスワクチンはない。

腸チフスはサルモネラ・チフス菌を原因とし、症状には遷延する高熱、疲労感、頭痛、嘔気、腹痛、便秘、下痢などがある。患者の一部には発疹も現れる。重症になると、重篤な合併症を起こし、死に至ることもある。抗生物質で治療可能で、フルオロキノロン類を含む抗生物質に対する耐性が出現するに連れて、感染領域にはセファロスポリンやアジスロマイシンなど、より新しい抗生物質が使用される。

タルグレチンカプセル75mg(ベキサロテン、ミノファーゲン製薬):「皮膚病変を有する成人T細胞白血病リンパ腫」を対象疾患とする新効能医薬品。

合成レチノイドで、レチノイドX受容体に結合してアポトーシス誘導及び細胞周期停止作用により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。日本では16年1月に「皮膚T細胞性リンパ腫」の適応で承認されている。

オムジャラ錠100mg、同錠150mg、同錠200mg(モメロチニブ塩酸塩水和物、グラクソ・スミスクライン):「骨髄線維症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

JAK1、JAK2の阻害に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害という3つ目の新規のシグナル伝達経路を阻害する独自の作用機序を持つ。JAK1及びJAK2を阻害することで全身症状や脾腫を改善できる可能性があり、さらにACVR1を阻害することにより、骨髄線維症で増加し貧血の要因となるヘプシジンを減少させる。

骨髄線維症は、JAK-STATシグナルの伝達および調節異常により、体内での正常な血球の産生が妨害されることで起こる稀な血液がん。その臨床上の特徴は、進行性の脾腫(脾臓の肥大)、貧血、血液細胞の産生異常と、炎症性サイトカインの過剰産生による消耗性の症状となる。

日本では約70%の骨髄線維症患者が診断時にすでに中等度から重度の貧血をきたしており、最終的にはほぼすべての患者が貧血を発症すると考えられている。貧血の重症度や輸血への依存性は、予後不良や生存期間の短縮と強く関連している。

ハイイータン錠 50mg(グマロンチニブ水和物、海和製薬):「MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

経口MET阻害薬。MET(間葉上皮転換因子)のリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することで、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺がんに対して腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

海和(読み:ハイヘ)製薬は、中国Haihe Biopharmaの日本法人。本剤が承認されれば日本進出の第1号製品となる。

なお、国内の同種同効薬にはメルクバイオファーマのテプミトコ錠やノバルティス ファーマのタブレクタ錠がある。

レットヴィモカプセル40mg、同カプセル80mg(セルペルカチニブ、日本イーライリリー):「RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍(非小細胞肺がん及び甲状腺がんを除く)」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

RETキナーゼ阻害薬。RET融合遺伝子又はRET遺伝子変異は、RETを介したシグナル伝達経路を亢進させることにより、腫瘍の生存や増殖に大きく寄与することが報告されている。本剤はRETのキナーゼ活性を阻害し、RETを介したシグナル伝達を阻害することで腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

現在、RET融合遺伝子陽性の▽切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、▽根治切除不能な甲状腺がん、▽根治切除不能な甲状腺髄様がん――の適応を持つ。

エザルミア錠50mg、同錠100mg(バレメトスタットトシル酸塩、第一三共):「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を対象疾患とする新効能医薬品。先駆け審査対象品目。

EZH1/2阻害薬。EZH1及びEZH2は多くの血液がんで発現しているヒストンメチル化酵素で、がん抑制遺伝子の不活性化に関係している。本剤はEZH1/2のメチル化活性を阻害することでアポトーシスを誘導することなどにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は、非ホジキンリンパ腫の一種で、非ホジキンリンパ腫全体の10~15%を占める。初発PTCLに対する標準治療は多剤併用化学療法だが、大半が病勢進行し予後が不良であるため、再発又は難治性のPTCLには高いアンメット・メディカル・ニーズがある。

本剤は22年9月に再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫の適応で承認されている。

【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

ベンリスタ皮下注200mgオートインジェクター(ベリムマブ(遺伝子組換え)、グラクソ・スミスクライン):「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」を対象疾患に小児用量を追加する新用量医薬品。

完全ヒト型抗BLySモノクローナル抗体製剤。17年9月に成人の既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスの適応で承認されており、今回は小児用量を追加する。

セルセプトカプセル250、同懸濁用散31.8%(ミコフェノール酸モフェチル、中外製薬):「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。

免疫抑制剤。今回追加する全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の用法・用量は、「通常、成人にはミコフェノール酸モフェチルとして1回250~1000mgを1日2回12時間毎に食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日3000mgを上限とする」となる予定。緊急時に十分対応できる医療施設において、本剤についての十分な知識と全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の治療に十分な知識・経験をもつ医師のもとで使用すること、との警告も追記される予定。

アレモ皮下注15mg、同皮下注60mg、同皮下注150mg、同皮下注300mg(コンシズマブ(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスク ファーマ):「先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を対象疾患とする新効能医薬品。

抗TFPI(組織因子経路インヒビター)モノクローナル抗体。本剤はTFPIを阻害することでトロンビンと呼ばれる蛋白質である血液凝固因子の産生を促進し、血液凝固を助け、出血を防ぐ。

現在の効能・効果は「血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制」で、インヒビターを保有するあらゆるタイプの血友病を対象とする。今回はインヒビター非保有の血友病患者も投与対象とするもので、現在の効能・効果から「血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する」の部分を削除する。

パラプラチン注射液50mg、同注射液150mg、同注射液450mg(カルボプラチン、クリニジェン):「子宮体がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。

今回追加する子宮体がんに対する用法・用量は、「他の抗悪性腫瘍薬との併用において、通常、成人にはカルボプラチンとして、1日1回AUC5~6mg・min/mL相当量を投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量は、年齢、疾患、症状により適宜増減する」となる予定。
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