サワイGHD・澤井会長 供給不足解消へ「品質確保と生産能力拡大に経営資源を全集中」 品目集約も
公開日時 2024/06/10 06:00
サワイグループホールディングスの澤井光郎代表取締役会長兼社長は6月7日に都内で開いた中期経営計画説明会で、「医薬品不足の問題解決に寄与できる大きなチャンスと捉えている。品質確保と生産能力拡大に経営資源を全集中したい」と語った。同社の生産能力を活かし、品目を集約することで、各社が余剰製造能力を持つことが、最も早い供給不足の解消への道との考えも表明。「一番貢献できるのは、供給不足を解消すること。(今年7月に稼働予定の)”第二九州工場でまずは供給不足解消の品目をしっかり作ります”ということが我々のメッセージであり、覚悟だ」と述べ、業界をリードする姿勢を鮮明にした。
◎早期に自社の生産能力を拡充 他社との提携など「あらゆる手段を講じる」
同社が公表した26年度までの3か年の中期経営計画「Beyond 2027」は、30年までの長期ビジョンの「中間点」に位置付ける。長期ビジョンでは、国内ジェネリック市場でのシェア25.0%以上、240億錠、売上高3100億円を掲げる。澤井会長は、「将来にわたってジェネリック医薬品産業の中核を担い、リードするため、これから3年間は体制を整備する重要な期間」との見方を表明。「信頼される企業基盤の確立を土台とし、早期に自社の生産能力を拡充させ、ジェネリック医薬品企業間の連携・協力を推進する」方針を示した。
生産能力の拡充については、成長のドライバーの一つにもあげた。23年度の185億錠から中計期間中の26年度に220億錠まで増強、30年度に250億錠の生産体制を整える計画だ。3年間で工場の設備更新に270億円、生産能力増強に312億円などを投資する。澤井会長は、「当社は業界随一の生産能力と販売数量を誇ることになる」と胸を張る。「今後の新製品発売を始め、ジェネリック医薬品の供給不足を早期に解決させるため、また今後の業界再編・集約を見据え、能力拡充に積極的に取り組む」と強調。「自社工場の建設、または他社との提携など、あらゆる手段を講じることで、さらなる供給能力の向上を図る」と述べた。
◎「供給不足解消の品目をしっかり作ります」ということが我々のメッセージ
厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書では、「業界の中核を担う自覚のある企業には、こうした動きを牽引し、業界団体を通じて業界全体をリードする役割も求められる」とされている。澤井会長は、「一番貢献できるのは、供給不足を解消すること。それが我々のメッセージだと思っている」と表明。今年7月に稼働予定の九州第二工場やトラストファーマテックでの生産を視野に、「まずは、“供給不足解消の品目をしっかり作ります”ということが我々のメッセージであり、覚悟だ」と強調した。
◎生産余力で一気に引き受け スピードの重要性強調「3か月間で実現できるのでは」
供給不安の背景に、少量多品目構造が指摘される中で、大量生産を実現するためには各社の生産ラインに余力をもたせる必要を強調した。複数の製薬企業が製造しており、供給不安の起きている品目について、同社が製造している場合は生産を一手に引き受けることで、他の会社にとっては生産ラインが空き、余力ができると説明。これにより、生産を依頼した企業がその企業でしか製造できない品目を増産することも視野に入るとした。各社の連携・協力による生産効率化により、「一気に供給不足に解消できるのではないか。困っている品目を募って作っていくことがまさに一歩だと思っている」と述べた。
「スピード感を持ってやるには、(中計期間中に増産体制を進める)65億錠の生産余力で本当に足りないものを増産しましょうということ。話を進めていく中で、企業理念や品質理念が共有できるところがあれば、連携をどんどん進めていこうということになるが、最初にやらないといけないのは各社の生産ライン余力を持たしてあげることだ」と強調した。
品目の統合などを模索する企業もあるが、「話し合いだけで簡単に1年くらい経ってしまう。(生産における品目集約化であれば)3か月くらいの話し合いで実現できるのではないか。それくらい緊急事態だと認識している」と述べた。こうした各社の連携・協力については独占禁止法に抵触しないよう、留意する必要性にも触れ、厚労省医政局の医薬産業振興・ 医療情報企画課と連携する考えも示した。
後発品あり方検討会では、企業間の連携・協力の姿として“コンソーシアム”があがったが、形式にこだわることについては否定的な見解も示した。「コンソーシアム立ち上げて増産できるのか。今求められているのは安定供給を早くやることだ。コンソーシアムとかいう前に、作らしてください、ということが業界の貢献になるのではないか」とも述べた。
各社が依頼する品目は、「多くは、不採算品目だと思う」との見方も表明。「お引き受けして長くはもたない。赤字ばかりでは従業員の賃金も上げられなくなってしまうので、薬価の手当が必要になってくるとは思う」とも述べた。
◎ビジネスモデルの変革に意欲「ジェネリックは値引きできないカテゴリーに変えたい」
澤井会長はまた、ジェネリック医薬品のビジネスモデルにも言及。「過当競争状態を是正し過度な価格競争から脱却することに取り組むということが業界の中核を担う企業の覚悟だと思う」と強調。「(中期経営期間の26年度までの間に)価格政策を提案して、毎年の薬価改定でも薬価が大きく下がらないベースをまずつくる。新たに上市をした新製品等々がしっかり上に乗っかってくるというモデルにビジネスモデルに変えるということが根底にある」とも述べた。「新薬は値引きは少ないカテゴリーとして認められている。私が目指すのは、ジェネリックこそ、値引きはできないカテゴリーだということ。薬価が安いということが価値であるという、こういうカテゴリーに変えたい」と熱く語った。
◎新中計「Beyond 2027」 26年度売上高2200億円 新製品は3年間で44品目以上
「Beyond 2027」では、26年度の売上高は2200億円(24年3月期比24%増)、営業利益は310億円(67%増)を掲げた。成長ドライバーの一つには新製品の売上増加をあげ、シェアを拡大する考えもに盛り込んだ。新製品として3年間で44品目以上の発売を予定。「当社にしかできない高い製剤技術力を持って、競争優位な品目開発や単独上市を実現し、他社を凌駕することで収益とシェアの拡大を図る」と述べた。