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ジェンマブ・ダール社長 30年までに固形がん市場に参入 導出戦略から自社中心にシフトへ

公開日時 2024/11/22 04:51
ジェンマブのクリストファー・ダール代表取締役社長は11月21日に開いた事業説明会で、2030年までに婦人科がんや肺がんなどの固形がん市場に新規参入すると表明した。独自技術を用いた二重特異性抗体・Acasunlimabや抗体薬物複合体(ADC)・rinatabart sesutecanといった「100%ジェンマブ所有製品」で固形がん市場に参入する計画で、自社単独で参入する構えもみせた。日本法人は設立5年目。これまでは共同開発や導出戦略をとっていたが、「当社のストーリーは次の章に移る」と強調。「研究開発から商業化までを一貫して手掛けるバイオテクノロジー企業に進化する」と述べ、今後は自社中心の事業活動にシフトしていく考えを示した。

ダール氏は24年1月に日本法人の社長に就任し、この日、初の事業説明会にのぞんだ。日本法人の設立から5年間の軌跡について、23年11月に国内第1号製品として上市した再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫を対象疾患とする二重特異性抗体・エプキンリ皮下注を紹介しながら、「過去5年間で大きな成長を遂げた」とし、社員数は「この2年間で4倍となる200人超になった」と紹介した。エプキンリはグローバル提携契約のもとアッヴィと共同開発し、日本ではジェンマブが製造販売を行い、両社で共同販促している。

◎血液がんから固形がんに事業拡大

30年までの中期展望では、Acasunlimabやrinatabart sesutecan(以下、Rina-S)の承認取得による固形がん市場への参入計画を披露。「血液がんから固形がんに事業を拡大する」と述べた。そして、「長年にわたり標準治療がなかったがん患者さんに治療薬を提供できることを楽しみにしている。当社のストーリーは次の章に移る」とし、研究開発も営業も自社中心にシフトする方向を示しながら、「アンメットメディカルニーズを抱える日本のがん患者さんに、ジェンマブの革新的な抗体医薬品を届けたい」と話した。

また、「新薬開発に成功すればビジネスも大きくなり、プレゼンスも大きくなる」と述べ、今後の開発の進捗などを踏まえて社員数を増員する意向も示した。

◎Acasunlimabは「二重特異性抗体による次世代チェックポイント免疫療法」

Acasunlimab(開発コード:GEN1046)は、二重特異性抗体を生成する独自技術「DuoBody」を活用したもの。同社によると、Acasunlimabは「PD-L1依存の4-1BB活性化を通じて抗腫瘍免疫応答を強化する二重特異性抗体による次世代チェックポイント免疫療法」だという。Acasunlimabのグローバル第3相試験は、免疫チェックポイント阻害薬(CPI)治療後に再発した2次治療非小細胞肺がんを対象に、Acasunlimabと抗PD-1抗体・ペムブロリズマブとの併用療法を検証するもので、この試験に日本も今後参加する。なお、Acasunlimabは独ビオンテックと共同開発していたが、ジェンマブがこのほど全権利を獲得した。

Rina-Sは、5月に買収した米バイオテクノロジー企業・ProfoudBio社から獲得したADCで、卵巣がんなどを対象疾患に開発が進められている。

このほかの国内開発品には、承認申請中の品目として▽子宮頸がんを対象疾患とするADC・チソツマブ ベドチン(24年4月申請)、▽エプキンリの再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1-3A)の一変申請(24年3月申請)――がある。チソツマブ ベドチンはファイザーと共同開発したものだが、承認取得後はジェンマブが商業化の責任を持つ予定になっている。DuoBody技術を用いた二重特異性抗体「GEN1042」は、固形がんを対象に第1/2相試験段階にある。

◎自己免疫疾患市場の国内参入 開発を通じて「探求」 当面は「オンコロジーにフォーカス」

ジェンマブはグローバルで、がん領域のほかに自己免疫疾患でも新薬を創出しており、自己免疫疾患領域では活動性甲状腺眼症治療薬・テプロツムマブがある。日本ではアムジェンが製品名「テッペーザ点滴静注用」として承認を取得し、11月20日に発売した。国内のピーク時売上予想は494億円と大型化が期待されている。

ジェンマブが今後、日本で自己免疫疾患領域に参入するのかも気になるところ。これにダール社長は、国内開発パイプラインの現状から「当分の間はオンコロジーにフォーカスをあてる」としたが、「グローバル開発に日本も参加し、免疫・炎症疾患なども探求していきたい」と今後の参入に含みを持たせた。

◎5つの独自技術で新薬創出 DuoBodyが全体の42%に応用

ジェンマブはデンマークに本社に構え、今年で設立25周年を迎える。独自技術を取り入れた8つの承認薬(TIVDAK、EPKINLY/TEPKINLY、DARZAREX/DARZAREX FASPRO、Kesimpta、TEPEZZA、RYBREVANT、TECVAYLI、TALVEY)を持ち、臨床開発段階に10の開発品がある。

パイプラインを増強するDuoBodyなど5つの技術プラットフォームを持つことが最大の強みで、DuoBodyのほかに、▽独自の親水性リンカープラットフォーム「ADC Technology」、▽抗原・抗体結合依存的に抗体の六量体形成を誘導する技術「HexaBody」、▽DuoBody技術+HexaBody技術の「DuoHexaBody」、▽二種類の抗原が同時に発現する細胞に選択的に結合・作用する「HexElect」――がある。前臨床を含む開発品のうち42%にDuoBody技術が、21%にHexaBody技術が応用されており、ADCは16%を占めている。
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