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武田薬品・ウェバーCEO 関税影響は「限定的」も米国に5年間で約4兆3000億円投資へ

公開日時 2025/05/09 06:00
武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは5月8日、会見に臨み、「現在の戦略に基づくだけでも、今後5年で米国に約300億米ドル(約4兆3000億円)を投資する予定だ」と明らかにした。米トランプ大統領が医薬品への関税について検討を進めるなかで、米国内での製造拠点拡大に取り組むことを表明する企業が相次いでいる。同社は、関税影響については「限定的」との見通しを示したうえで、製造拠点を含む投資を米国に集中させる考えを示した。ウェバーCEOは、「米国が医薬品イノベーションにおける世界をリードする市場であるという事実を反映しており、この傾向が今後も続くことを願っている」と述べた。

◎原産国が米国以外の課税評価額は8~10% エンタイビオは100%米国が原産国

同社は25年度の業績に関税の影響を織り込まなかった。ウェバーCEOは「中国と米国の関税に対する当社への潜在的な影響度は限定的」であるためと話す。

関税措置による影響度については、「輸入品の売上収益への貢献度、製造地・原産国および移転価格ポリシーにより決定される」と説明し、この考えに基づいた定量的な分析を紹介した。

同社では米国事業が全社売上高の約50%を占めるが、原産国が米国以外の輸入品の課税評価額は米国総売上の約8~10%にとどまるという。米国で最も売上高の高いエンタイビオは100%、米国が原産国という。一方、中国に輸出する米国原産地製品の関税評価額は、中国における売上の10~15%。ウェバーCEOは、「中国は当社の事業といって非常に重要なビジネスであり、急速に成長はしているものの、中国での売上高が全社売上高に占める割合は約4%とかなり低い水準だ」として、影響は限定的であるとした。

ウェバーCEOは、「引き続き世界の関税の状況を注視していく。より詳細が明確になるまで関税の影響度を確実に予測するのは難しいが、他のグローバル企業と同様に投資はグローバルサプライチェーン全体を見渡し、関税の影響を受ける可能性のある輸入品に対する緩和策を実施する」と述べた。

◎「アメリカに非常に大きなプレゼンスを持っているということを再強調した」

米国に対する約300億米ドルの投資には製造拠点への投資に加え、一部研究開発費が含まれているという。同社は米国内の7拠点を含む20拠点を通じて、米国内に製品を供給している。生産の2割を占めるCMOへの委託製造費用も約70%は米国に拠点を置くCMOに対するものだという。なお、中国の製造拠点は中国国内へ供給している。ウェバーCEOは、製造拠点だけでなく、血漿分画製剤の製造ネットワークや研究開発機能の大部分などが米国にあるとして、「歴史的に米国に多大な投資を行ってきた」と強調する。

今回の投資についても、「戦略が変わったということではなく、あくまでグローバルな革新的な製薬企業として、アメリカに非常に大きなプレゼンスを持っているということを再強調した」と説明。「現在のプレゼンスを維持するため、そして会社をこれからも成長させていくため」の投資との考えを示した。ウェバーCEOは、「医薬品のイノベーション創出、またそのイノベーションを評価するという意味でも米国は非常に重要だと思っている」と強調した。

◎24年度売上高4兆6000億円 効率化プログラムで「年間2000億円のコスト削減」営業利益改善

25年3月期(24年度)決算は、売上高が前年同期比7.5%増の4兆5815億5100万円。コア売上収益全体の48%を占める成長製品・新製品が14.7%(CERベース)成長し、売上を牽引した。タクザイロが18.9%増の2232億円、免疫グロブリン製剤が11.5%増の7578億円と2桁成長。フリュザクラやアジンマなどの新製品も好調だった。エンタイビオは8.5%増の9141億円売上げた。予想売上高は下回ったものの、「エンタイビオペン(皮下注射製剤)の拡大により成長の行き合い勢いが増している」とした。ウェバーCEOは、「ビバンセの特許切れによる後発品参入の大きな影響を補って余りある成長製品・新製品ポートフォリオの力強い成長があった」と説明した。

コア営業利益は4.9%増の1兆1626億円、コア営業利益率は25.4%。24年からスタートさせた全社的な効率化プログラムが営業利益の改善に寄与した。古田未来乃チーフフィナンシャルオフィサーは「効率化プログラムで、現在までにおよそ2000億円の年間のコスト削減を実現している」と説明した。このうち、65%が約3000ポジションに影響する組織構造改革など報酬・福利厚生に関連するもの、20%は調達コストの削減、残り15%の中に、営業マーケティングから研究開発までの活動の合理化、米・サンディエゴの研究拠点の閉鎖を含む拠点の最適化になどが含まれているとした。一方で、事業構造再編費用としては1281億円を計上した。

古田チーフフィナンシャルオフィサーは、効率化プログラムによるコスト削減により、「パイプラインの進展・上市の準備や、データおよびデジタル技術能力のさらなる構築のためのリソースを確保することができるようになった」と話した。

◎25年度は横ばい見通し 後期パイプラインの進展で「タケダにとって極めて重要な年」

26年3月期(25年度)は前年同期比1.1%減の4兆5300億円を見込む。売上高やコア営業利益などはほぼ横ばいの見通しだ。真性多血症治療薬候補・Rusfertide(TAK-121、ピーク時売上高:10~20億米ドル)、ナルコレプシータイプ1治療薬候補・Oveporexton(TAK-861、20~30億米ドル)、乾癬治療薬候補・Zasocitinib(TAK-279、30~60億米ドル)などが開発後期にある。ウェバーCEOはこれらのパイプラインに期待感を示し、「将来への期待は高まっており、25年はタケダにとって極めて重要な年になると考えている。後期パイプラインの進展や上市の準備があるからだ」と強調した。

◎キム次期CEO「戦略を大きく変えることは考えていない」 タケダのレガシー引き継ぐ

この日の会見では、2026年6月にウェバー氏の後任としてCEOに就任する予定のジュリー・キムU.S. ビジネスユニットプレジデントが抱負を問われる一幕も。

キム氏は、「今後CEOに就任することを大変光栄に思っている。エグゼクティブチームのメンバーとしてこれまで戦略的なディスカッションに参加してきたので、戦略を大きく変えることは考えていない。タケダのレガシーを引き継ぎ、尊重して、クリストフ・ウェバー氏がこれまでリードしてきたものを引き継いだうえで、将来を見て、そして社内外のステークホルダーの方々の声を聞き、タケダに何を望むか、そういったお声を聞きした上で取り入れ、来年以降に会社の方向性についてお話ししたい」とコメントした。

【24年度連結業績 (前年同期比) 25年度予想(前年同期比)】
売上高 4兆5815億5100万円(7.5%増) 4兆5300億円(1.1%減)
営業利益 3425億8600万円(60.0%増) 4750億円(38.7%増)
親会社帰属純利益 1079億2800万円(25.1%減) 2280億円(111.3%増)

【24年度のグローバル主要製品全世界売上高(前年同期実績) 25年度見込み 億円】
消化器系疾患
ENTYVIO 9141(8009)9820
GATTEX/レベスティブ 1463(1193)1450
タケキャブ/VOCINTI 1308(1185)1380
PANTOLOC/CONTROLOC 446(465)410
DEXILANT 385(453)350
リアルダ/MEZAVANT 273(291)270
RESOLOR/MOTEGRITY 195(209)130
EOHILIA 55(2)>190%

希少疾患
タクザイロ 2232(1787)2300
アドベイト 1118(1229)1610(※25年予想のみ、アドベイトとアディノベイト/ADYNOVIの合算)
アディノベイト/ADYNOVI 646(663)
エラプレース 972(916)880
リプレガル 779(736)830
ビプリブ 535(513)530
フィラジル 180(212)120
リブテンシティ 330(191)450
ボンベンディ 209(162)240
RECOMBINATE 116(121)―
アジンマ 71(4) >50%

⾎漿分画製剤
免疫グロブリン製剤 7578(6446)1桁台半ば%の成⻑
アルブミン製剤 1414(1340)1桁台半ば%の成⻑
ファイバ 394(405)350
HEMOFIL/IMMUNATE /IMMUNINE 256(195)240
CINRYZE 164(171)120

オンコロジー 
アドセトリス 1290(1094)1380
リュープリン/ENANTONE 1193(1074)1150
ニンラーロ 912(874)810
アイクルシグ 707(547)720
アルンブリグ 364(285)410
ベクティビックス 262(264)270
ゼジューラ 143(142)140
FRUZAQLA 480(101) >20%
カボメティクス 84(84)80

ニューロサイエンス
VYVANSE/ELVANSE 3506(4232)2410
トリンテリックス 1257(1048)1250
ADDERALL XR 284(418)190
インチュニブ 404(336)420

ワクチン
QDENGA 356(96)570

その他
アジルバ 118(336)60
ホスレノール 79(135)70

【24年度の国内主要製品売上高(前年同期比)、億円】
ENTYVIO 176(16.2%増)
GATTEX/レベスティブ 92(15.6%増)
タケキャブ/VOCINTI 994(2.5%増)

希少疾患
タクザイロ 33(13.7%増)
アドベイト 28(20.7%減)
アディノベイト/ADYNOVI 136(3.7%減)
エラプレース 2(58.0%減)
リプレガル 84(2.5%減)
ビプリブ 12(2.4%減)
フィラジル 19(4.0%増)
リブテンシティ 10(―)
ボンベンディ 8(11.8%増)
アジンマ 12(―)

⾎漿分画製剤
ファイバ 5(29.2%減)

オンコロジー
アドセトリス 116(9.6%減)
リュープリン/ENANTONE 281(0.6%増)
ニンラーロ 63(4.4%減)
アルンブリグ 25(1.6%増)
ベクティビックス 262(0.6%減)
ゼジューラ 113(2.1%減)
FRUZAQLA 25(―)
カボメティクス 84(0.2%増)

ニューロサイエンス
VYVANSE/ELVANSE 29 (39.2%増)
トリンテリックス 129(19.6 %増)
インチュニブ 264(20.5%増)

その他
アジルバ 118(64.9%減)

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