中医協 費用対効果評価で意見陳述 製薬協・宮柱会長「価格調整範囲拡大すべきでない」
公開日時 2025/11/13 04:51
日米欧製薬団体は11月12日に開かれた中医協費用対効果評価専門部会で業界ヒアリングに臨んだ。日本製薬工業協会(製薬協)の宮柱明日香会長は、「追加的有用性が示されず、費用増加の場合であっても、薬価算定時に認められた有用性が否定されるものではなく、価格調整範囲を拡大すべきではない」と主張した。ユルトミリス点滴静注やレクビオ皮下注を例にあげ、薬価算定時に有用性として評価された「臨床上有用な新規の作用機序」や「製剤工夫による高い医療上の有用性」が評価されない例があると説明。「新薬の有用性は薬価算定時点ですでに認められており、その後の追加的有用性の評価で、結果的にないものと見なされることは適切ではない」と理解を求めた。
欧州製薬団体連合会(EFPIA)の岩屋孝彦会長も、「注射薬については投与間隔を延長するなど利便性の向上は有用性加算の対象として評価をしていただいており、実際、特に移動を困難な患者さんたちの通院等の負担を軽減させるなど明らかな治療効果があると考えているが、費用対効果評価制度の中では必ずしも考慮されていない」と指摘。「追加的有用性が示されず、費用が増加しているという分析について、実際加算を行ったときの根拠に立ち返って価格調整範囲を考えていただくということが適切ではないか」と訴えた。
◎米国での関税やMFN導入を懸念する声も
また、米国で関税や最恵国待遇(MFN)が導入されたことに対する懸念も表明。米国研究製薬工業協会(PhRMA)の勝間英仁・在日執行委員会委員も「米国で最恵国待遇(MFN)が導入され、日本が参照国となった場合を想定し、日本の薬価が米国の薬価に悪影響を及ぼすことを避けるため、製薬企業が日本への新薬導入に慎重になる懸念が現在高まっている」と指摘。「特許期間中の薬価を引き下げる費用対効果評価制度の拡大は、日本市場の魅力を低下させ、さらに国際競争力を低下させる政策となり得る」として、「国際競争の視点を持って、制度改革をご検討いただきたい」と訴えた。
◎診療側・江澤委員 薬価と費用対効果に差異があるのは「当然のこと」
中医協委員からは、診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「薬価や材料価格は保険収載時の評価であるのに対し、費用対効果は保険収載後の価格が標準的な方法と比較して費用に見合った効果があるかどうかという、全く別の視点から検討する仕組み。両者に差異があるのは当然のこと」とクギを刺した。
このほか、製薬団体は「第三者を交えた客観的な検証」を改めて訴えた。宮柱会長は、第三者のメンバーとして、「現在の厚労省であったり、国立保健医療科学院、そして費用対効果評価専門組織等の現制度の関係者に加えて、例えば試行導入以降の関係者として元の中医協委員であったり、医療経済専門家や医療政策、疫学、公衆衛生、そして統計の先生方、また重要なのは実際に診療を行っている臨床医の先生方、あるいは関連学会、さらには我々企業サイド、業界団体などを想定している」と説明した。