東京科学大医工研・笹野院長 病院内に工学系研究員の研究スペース 現場感・スピード感で医工共創実現
公開日時 2025/07/14 04:50

東京科学大学「国際医工共創研究院(医工研)」の初代研究院長に就任した笹野哲郎教授(大学院医歯学総合研究科循環制御内科学分野)は7月8日、医工研設立記者会見に臨み、医歯学と理工学の共創による国際的なヘルスケア・ソリューションの開発に注力する考えを表明した。笹野院長は、「病院の施設内に工学系研究員の研究スペースを作り、その場でクリティカルクエスチョンに応える環境を整えた」と強調。医学系、工学系の研究者が同一空間で一体型の研究体制を構築することで、「現場感、スピード感を大事にした医工共創研究の社会実装を実現したい」と意欲を表明した。
◎医療データの価値化による収益増に期待感 「病院経営の面からもアプローチできる」
東京科学大学の古川哲史執行役副学長(研究・改革担当)は、日本の医学が抱える「3大問題」として、①医学研究力の低下、②医療機器の輸入超過、③病院経営の悪化―をあげ、「我々は医工共創で3つの課題を克服したい」と強調。「研究力と病院経営はトレードオフの関係に思われがちだが、我々はこの両面に同時にアプローチすることができると一気に競争優位性が高まる」と述べた。また、医工共創に伴う成果として、ヘルスケアイノベーションの推進によるスタートアップ創設や、それに伴う世界大学ランキングのポジショニング向上、さらには医療データの価値化による収益増にも期待感を示した。このほか医療スタッフ配置の最適化や電子カルテの自動化、ロボティクスの導入による人件費削減など、「病院経営の面からもアプローチできる」と表明した。
なお、2024年10月の東京医科歯科大と東京工業大の統合に伴い、医工共創研究のマッチングファンド助成に100件以上の応募があり、すでに37件に助成した。また、研究者の規模も当初120人としているが、将来的な目標として200人規模まで拡大する計画も公表された。
◎笹野院長「クリティカルクエスチョンのすぐ横で研究をスタートできる環境づくり」

医工研・研究院長の笹野哲郎教授はこの日の会見で、「医学部と工学部を持っている大学が多くある中で、我々は2つのポイントで進めていきたい」と強調。1点目として、「病院の中に実際に研究できるスペースを作っていこうと考えている」と強調。国際医工共創研究院では、量子、AI、バイオマテリアル、半導体などのテーマをもつ工学研究院が病院をフル活用し、「クリティカルクエスチョンのあるすぐ横で、実際に研究をスタートできるような環境を作りたい」と述べた。また、2点目として、「研究ネットワークを活用したスピード感」をあげ、「医学系および理工系の研究者がアイデアのレベルで一緒になって、すぐに研究をスタートできるそのような環境を作りたい。現場感とスピード感を大事に、医工共創研究を進めていきたいというふうに思っている」と述べた。
◎小池副院長 「診療通した医療ニーズをリアルタイムで把握」 日本初イノベーションに期待
副研究院長に就任した小池康晴氏(東京科学大学総合研究院未来産業技術研究所教授)は理工系の研究者としての立場から、「研究室にいるだけではできない、日々の診療を通した医療ニーズや困っていることをリアルタイムで把握することができる。この環境によって基礎研究が実際の臨床課題に直結しやすくなり、現場密着型の医療イノベーションを実現する原動力になると思っている」と強調。「この取り組みの成果が発展していくことで日本発の医療イノベーションの世界が広がっていくことを期待している」と抱負を述べた。