財政審 外来薬剤の自己負担見直しを提言「早急に結論を得るべき」 処方箋料見直しなど診療所を狙い撃ち
公開日時 2025/11/06 06:30
財務省は11月5日に開かれた財政制度等審議会財政制度分科会に「薬剤自己負担の見直し」についてOTC類似薬だけでなく、「外来薬剤に関して広く対象として、一定額の自己負担を追加的に求めることも含め、幅広い選択肢について真摯に検討を進め、早急に結論を得るべき」と提言した。過去に導入された“薬剤一部負担金”も例示。法改正も視野に入れ、「正面から国民的な議論を喚起すべきではないか」と強く迫っている。財務省の提示した改革項目には、かかりつけ医機能や処方箋料の見直しなど、実現されれば診療所の経営に打撃を与える項目が並ぶ。2026年度診療報酬改定について、「病院への重点的な支援のため、診療所の報酬の適正化が不可欠」とも強調した。調剤基本料1の見直しなど調剤報酬の適正化の必要性も指摘した。
◎高市首相の所信表明 「OTC類似薬“を含む”薬剤自己負担の見直し」 スコープ広げる
薬剤自己負担の見直しをめぐっては、自公維の3党合意の段階から、OTC類似薬の保険給付のあり方が議論となってきた。しかし、高市首相は所信表明演説で、「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」について「迅速に検討を進める」と発言。これを受け、財務省は、OTC類似薬だけでなく、外来薬剤の幅広い見直しへとスコープが広げ、“薬剤自己負担”として一歩踏み込んだ形で提言した。
◎薬剤一部負担金の廃止は日本医師会の強い反対が
薬剤の種類に応じた患者負担割合を設定するフランスやイギリス、スウェーデンに加え、日本で1997年から2003年まで導入された“薬剤一部負担金”も例示。薬剤一部負担金は、薬剤の種類や日数に応じて患者が支払う定額負担として導入されたが、日本医師会が強く反発。「98年参議院選挙の際、自民党との間で(若者も含めて)同負担金の廃止に合意したことを踏まえてのもの。2000年改正では高齢者のみが廃止されたが、改正法附則により、若人の薬剤一部負担金も2002年度までに廃止することとされた」との経緯も示した。2002年の法改正では、改正法附則において、「将来にわたり自己負担割合が3割を超えない」とする旨が明記されることとなった。
◎健保法附則の改正も視野に「国民的議論を喚起すべき」
財務省は、外来薬剤費がOECD諸国のなかでも高いとのデータも提示。「特に、日常的な疾病管理の中で処方される薬剤などリスクの高くない医薬品については、別途の自己負担を求めることを改めて議論すべき」と指摘した。その際、「仮に、2002年健保法附則第2条との関係が問題となるのであれば、その改正も視野に入れ、正面から国民的な議論を喚起すべきではないか」と踏み込んだ。
◎OTC類似薬 公平性の観点からも課題を指摘
OTC類似薬についても問題意識を示している。花粉症薬や湿布薬、漢方薬、保湿剤などについて、医療用医薬品を処方された場合とOTC薬を購入した場合のコスト比較を具体的に示した。OTC薬はOTC類似薬と比べて高い価格で販売される傾向があり、診療・調剤の医療費を含めても、自らOTCを購入するよりも自己負担が低くなるケースがあるとした。ただし、「OTC類似薬の処方を受ける場合、そのコストの多くは、保険料・税で賄われている」と指摘。「薬剤自己負担に係る改革が先延ばしされてきた結果、効能・効果等が同等であるにもかかわらず、薬局やドラッグストアなどで自らOTC薬を購入する場合と医療機関でOTC類似薬の処方を受ける場合との間で自己負担額に格差が生じており、公平性の観点からも課題」との認識を示した。
◎外来受診時定額自己負担「早急に具体策の検討に着手を」 かかりつけ以外の診療所で
「外来受診時の定額負担の導入を実現すべく、早急に具体策の検討に着手し、その是非を広く国民に問うべき」とも提言した。2020年度の診療報酬改定では、紹介状を持たない患者に対する大病院の定額負担が導入されたが、今回の提案では診療所に主眼を置く。「原則として一定額を患者に求めた上で、例えば、かかりつけ医療機関以外を受診した場合には、更に追加負担を徴収することとしてはどうか」と提案している。
◎処方箋料「院内処方と同程度の水準に」 一般名処方加算は廃止、後発品体制加算は減算
26年度診療報酬改定に向けて、診療所については、院⾧の所得水準が高いことや、24年度改定で創設された賃上げ措置(ベースアップ評価料)の算定率は4割止まりであることなどを指摘。「病院に比べ、診療所が高い利益率を維持している現状を踏まえ、病院への重点的な支援のため、診療所の報酬の適正化が不可欠。また、調剤薬局が増加を続け、調剤技術料が一貫して顕著に伸びている中、調剤報酬の適正化も必須」と主張した。
具体的には、処方箋料やかかりつけ医機能の見直しを求めた。処方箋料については、医薬分業の推進に向けて点数設計されていた。財務省は、「薬価差益に代わる利益を医療機関に付与する観点から、処方箋料(院外処方)の設定・引上げにより実現が図られた」と指摘。処方箋受取率(院外処方の割合)は8割を超えるなかで、「処方箋料(院外処方)の水準は、処方料(院内処方)の水準と同程度とすべき」と主張した。
また、後発品の使用割合が9割を超えるなかで、「一般名処方加算は廃止し、後発医薬品に係る体制加算は減算措置に振り替えるべき」と指摘。「更なる後発品の促進は、先発品との価格差に係る選定療養化の拡大により図っていくこととしてはどうか」とした。これらの政策に伴う診療報酬点数設計についても問題視。「医師による薬剤処方に係るこれらの報酬面での評価の在り方は、医師の自発的協力又は規制的手法であれば不要だった多大な財政的な負担(患者自己負担、保険料、税)を伴うものでもあったことを踏まえ、再考すべき時期に来ている」とも指摘している。
◎かかりつけ医機能 外来管理加算や機能強化加算、地域包括診療料の見直しを主張
26年度診療報酬改定で焦点となることが想定されるかかりつけ医機能についても言及した。かかりつけ医の“あるべき姿”として、多くの国民がかかりつけ医を持つ「登録制」や、第三者による「認定制」などをあげ、こうした姿を見据えながら、かかりつけ医機能の評価に係る報酬体系を再構築する必要性を指摘した。
具体的には、外来管理加算や特定疾患療養管理料、機能強化加算の見直しを主張した。再診料に加算される「外来管理加算(52点)」について、「廃止又は地域包括診療料等への包括化を行うべき」と主張した。財務省は、「すでにその役割を終えている」との認識を示し、基本料への包括化などの考えも示した。なお、外来管理加算は再診料が算定された場合の3分の1以上で算定されている。また、現行制度では、地域包括診療加算や特定疾病療養管理料との併算定は可能となっていることにも問題視し、「見直しを行うべき」と主張した。
機能強化加算についても、「廃止を軸に検討すべき」とした。外来管理加算や機能強化加算の抜本的な見直しと併せて、地域包括診療料・加算について「発展的改組を試みるべき」と指摘。その際に、「認知症地域包括診療料・加算との統合も検討してはどうか」と主張した。特定疾患療養管理料については、「頻回受診を誘発する要因となりかねないことから、特定疾患処方管理加算等との併算定を一律で不可とすべき」などと主張した。このほか、日常的な診療を総合的・継続的に行う機能である「1号機能」を有さない医療機関について「厳しく対応すべき」と主張。「初診・再診料の減算を行うべき」とした。
◎調剤報酬「予算のコントロール機能していない」 調剤基本料1を問題視
調剤報酬についても「適正化」の必要性を指摘した。処方箋1枚あたりの技術料の伸びは、過去の報酬改定における調剤報酬(技術料)の改定率を大きく上回って伸⾧しているとのデータを提示。「予算によるコントロールが機能していない」と断じた。医科:歯科:調剤の比率を1:1.1:0.3とされてきたが、「調剤薬局の利益率は一貫して高水準で推移してきたにもかかわらず、これまでの診療報酬改定で十分な適正化が行われることはなく、調剤報酬は、医科・歯科と同水準で技術料が伸びるよう、改定率が設定されてきた」と踏み込んだ。
特に、調剤基本料1を問題視。処方箋受付枚数が少ない薬局では処方箋集中率が高い場合でも調剤基本料1が算定されており、これらの薬局を「調剤基本料1の適用対象から除外する方向性を徹底すべき」と主張した。また、地域支援体制加算については調剤基本料1とし例外の薬局で算定要件が異なり、調剤基本料1の薬局では要件が緩和されていることから、「優遇を廃止」し、「地域フォーミュラリへの参画や、OTC薬の普及啓発、リフィル処方の促進などを評価対象に加え、地域の医療資源の有効活用や薬剤安定供給の拠点としての機能を重点的に評価できる加算に再編すべき」と主張した。また、後発医薬品調剤体制加算についても、「役割を終えた」として廃止を訴えた。
◎70歳以上の患者自己負担割合を現役世代と同様に3割とすべき
国民負担の観点からは、年齢ではなく能力に応じた負担の必要性を指摘。「70歳以上の患者自己負担割合を現役世代と同様に3割とすべきであり、その実現に向けた具体的な道筋を明確に示すべき」と主張した。金融所得の捕捉も課題とされるなかで、「金融所得のうち、本人の選択によって保険料の賦課対象となるかどうかが変わり得るもの(上場株式の配当など)については、保険料の賦課ベースに追加するとともに、窓口負担割合の判定においても活用する仕組みとし、能力に応じた公平な負担を実現すべき」としている。