あすか製薬ホールディングス（ＨＤ）は8月18日、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツらから議決権総数の30%程度となる水準まで同社株式を取得する意思のあることを明記した「大規模買付行為等趣旨説明書」を受領したと発表した。同社は7月1日付でダルトンらの大規模買付行為等への「対抗措置」を導入すると公表。同社取締役会は、「ダルトンらと一般株主との間に利益相反が生じる可能性があり、当社の企業価値ないし株主の共同の利益を毀損する可能性がある」と指摘し、この方針に則り、8月18日を除く５営業日以内に、ダルトンらに大規模買付行為等の内容を検討するために必要と考えられる情報の提供を求めることを目的として、情報リストを交付すると明かした。

同社によると、ダルトンらは短期間にあすか製薬HDの株式20.49％を取得しており、8月18日付の「大規模買付行為等趣旨説明書」で議決権総数（発行済み株式総数-自己株式数）の 30％程度となる水準まで同社株式の買付けを行う意思があることを表明している。ただ一方で、状況によっては、議決権総数の30%程度まで買わず、または売却することもありえる旨の記載や、非公開化（MBO）すると決断した場合には、独立系ファイナンシャル・アドバイザーの紹介を含む支援をするつもりであること等が記載されていたと明かした。あすか製薬HDは趣旨説明書の受理に際し、7月1日付の大規模買付行為に対する「対抗措置」の公開後もダルトンらとの対話も重ねてきたことも明らかにしながら、「新たに重大な懸念事項が生じている」と危機感を募らせ、対抗措置発動への準備に取り掛かる考えを示した。

◎ダルトンらの株式買集め「MBOの要求を実現させる目的のため」　自己利益追求か

あすか製薬HDの懸念は、ダルトンらによる株式の買集めがMBOの要求を実現させる目的のためという見方だ。同社は2003年から2005年にかけて、ダルトンらから同社株式を急速かつ大量に買い集められた直後にMBOを提案された経緯がある。同社によると、「ダルトンらは、過大な増配やその保有株式をプレミアム付きで買い取ることを当社に要求していたこと等から、本大規模買付行為等についても、ダルトンらの自己利益の追求のみを目的としている可能性がある」と強調。さらに、MBOを実施した場合、対象会社は多額の債務を負担するため、MBOを提案する場合は、構造改革の必要性等の企業価値向上の具体的な目的を明らかにする必要がある。これに対し、あすか製薬HD側は、「ダルトンらはMBOの目的を全く明らかにしていない」と指摘し、「ダルトンらのMBO提案は、当社の企業価値向上ではなく、自己利益の追求のみを目的としている可能性がある」との見解を表明している。

◎「機動的かつ多額の投資を妨げ、中長期的な企業価値を毀損する恐れがある」

あすか製薬HDはダルトンらの提案に対し、「医薬品業界の性質上、常に研究開発への積極的な投資のための資金需要が相当程度ある上、持続的な企業価値向上のためには従来以上に新薬の研究開発及び新規事業をはじめとした大規模な投資を行いつつ、人材確保、アライアンスの拡充を図っていく必要がある」と主張し、ダルトンらが誘引する、プライベート・エクイティ・ファンドが主導するMBO等により、LBOローンに伴う巨額の有利子負債や融資契約上の制約を負うことは、企業価値向上の源泉である成長戦略における機動的かつ多額の投資を妨げ、中長期的な企業価値を毀損する恐れがあるとの見解を述べている。

◎情報不足（強圧性）「一般株主が不本意ながら株式を売却せざるを得なくなる懸念」

今回の「大規模買付行為等趣旨説明書」を受け同社は、情報の不足（強圧性）により「一般株主が不本意ながら当社株式を売却せざるを得なくなることに晒される懸念がある」として、ダルトンらに情報提供を要請。ダルトンらが大規模買付行為等に踏み切る場合は、取締役会から諮問を受けた「独立委員会」で検討し、その後、取締役会を経て「株主意思確認総会」で対抗措置の可否を問い、大規模買付行為等が撤回されない場合は対抗措置を発動する流れとなっている。