新薬8製品が承認へ アステラスの萎縮型AMDのGA進行抑制薬・アイザベイなど 薬事審第一部会が了承
公開日時 2025/09/01 04:50
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会は8月29日、アステラス製薬の「萎縮型加齢黄斑変性における地図状萎縮の進行抑制」を効能・効果とする補体因子C5阻害剤・アイザベイ硝子体内注射液(一般名:アバシンカプタド ペゴルナトリウム)など新薬8製品の承認の可否を審議し、承認することを了承した。条件付き承認となるアイザベイは、日本人患者の安全性を主要な評価項目として実施中の国内臨床試験の成績を2028年2月を期限に提出することが求められた。
審議され承認了承となった中には、ファイザーの「片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制」を効能・効果とする経口CGRP受容体拮抗薬・ナルティークOD錠(リメゲパント硫酸塩水和物)や大塚製薬の高コレステロール血症などに対するATPクエン酸リアーゼ阻害剤・ネクセトール錠(ベムペド酸)などが含まれる。
報告品目は5製品。アイリーアの2番目、3番目のバイオ後続品(BS)の承認が了承された。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ネクセトール錠180mg(ベムペド酸、大塚製薬):「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
肝臓中のクエン酸分解酵素であるATPクエン酸リアーゼに作用することでコレステロール合成経路を阻害する新規作用機序医薬品。用法・用量は「通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与する」。
高LDLコレステロール血症に対してはスタチンが第一選択となっている。ネクセトールはスタチンの後にスタチンと併用で使うことが想定されている。
海外では2025年6月現在、高コレステロール血症に係る効能・効果で欧米を含む39の国又は地域で承認されている。
▽ナルティークOD錠75mg(リメゲパント硫酸塩水和物、ファイザー):「片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は、小児開発の必要性から2年間の延長が認められ、10年。
経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬。用法・用量は適応で異なり、片頭痛発作の急性期治療では「通常、成人にはリメゲパントとして1回75mgを片頭痛発作時に経口投与する」、片頭痛発作の発症抑制では「通常、成人にはリメゲパントとして75mgを隔日経口投与する」となる。
国内では、抗CGRP抗体としてエムガルティ皮下注、アジョビ皮下注、アイモビーグ皮下注が「片頭痛発作の発症抑制」(予防療法)の適応で承認されている。ナルティークが承認されると、CGRPを標的とした初の経口薬となり、予防療法と急性期治療の両方の適応を持つことになる。
ナルティークは海外で2025年6月現在、「片頭痛の急性期治療」の効能・効果で欧米を含む52を超える国又は地域で、「片頭痛発作の発症抑制」に係る効能・効果では欧米を含む49を超える国又は地域で承認されている。海外製品名は、米国で「Nurtec ODT」、欧州で「Vydura」。
▽ワイキャンス外用液0.71%(カンタリジン、鳥居薬品):「伝染性軟属腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
局所用テルペノイド。対象疾患の伝染性軟属腫は、ポックスウイルス科の伝染性軟属腫ウイルスの感染によって小児に多く生じる疾患であり、一般に「水いぼ」と呼ばれている。ピンセットによる摘除などが行われる水いぼに対し、ワイキャンスが承認されれば、塗布剤による治療選択肢となる。
ワイキャンスの用法・用量は、「通常、成人及び2歳以上の小児に、3週間に1回、患部に適量を塗布する。塗布16~24時間後に、石鹸を用いて水で洗い流す」。
海外では米国で、2023年7月に成人及び2歳以上の小児患者を対象として伝染性軟属腫に係る効能・効果で承認を取得し、24年8月から「Ycanth」の製品名で販売されているという。
▽ビルベイ顆粒200µg、同顆粒600µg(オデビキシバット水和物、IPSEN):「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
経口回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤。対象疾患の進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、遺伝子変異が原因で、乳児期から慢性肝内胆汁うっ滞による肝脾腫や著明なそう痒感を呈して進行性の経過をとる疾患であり国の指定難病。
用法・用量は、「通常、オデビキシバットとして40μg/kgを1日1回朝食時に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、120μg/kgを1日1回に増量することができるが、1日最高用量として7200μgを超えないこと」。
海外では2025年5月現在、PFICに係る効能・効果で欧米を含む41の国又は地域で承認されている。
▽フジケノン粒状錠125(ケノデオキシコール酸、藤本製薬):「脳腱黄色腫症」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
対象疾患の脳腱黄色腫症(CTX)は、一次胆汁酸合成の必須酵素であるCYP27A1の活性が低下する遺伝性疾患で、血清中のコレスタノール濃度等が上昇することで、コレスタノールが様々な臓器に沈着して障害を引き起こす。国の指定難病。用法・用量は成人と小児で設定される。
なお、ケノデオキシコール酸は「チノカプセル」の製品名で「外殻石灰化を認めないコレステロール系胆石の溶解」を適応として1984年4月から販売されている。
フジケノン粒状錠は海外で承認されていないものの、CTXを効能・効果とする他のケノデオキシコール酸製剤が欧米で承認されている。
▽アイマービー点滴静注300mg、同点滴静注1200mg(ニポカリマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
FcRnを阻害するモノクローナル抗体。用法・用量は「通常、成人及び12歳以上の小児には、ニポカリマブ(遺伝子組換え)として、初回に30mg/kgを点滴静注し、以降は1回15mg/kgを2週間隔で点滴静注する」。
対象疾患の重症筋無力症(MG)は、自己抗体により引き起こされる自己免疫疾患であり、日本国内の患者数は約2万3000人と報告されているという。国の指定難病。国内では、全身型重症筋無力症(gMG)に対して、FcRnを標的とする抗体薬としてウィフガート点滴静注/ヒフデュラ配合皮下注、リスティーゴ皮下注が承認されている。
アイマービーは米国で2025年4月に承認されている。
▽アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL(アバシンカプタド ペゴルナトリウム、アステラス製薬):「萎縮型加齢黄斑変性における地図状萎縮の進行抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。条件付き承認。再審査期間は8年。
補体因子C5阻害剤。C5タンパク質を標的とすることによって網膜細胞の変性を引き起こす補体系の活性を低下させ、地図状萎縮(GA)の進行を遅らせると考えられている。承認されると、GAを伴う加齢黄斑変性(AMD)に対する日本でファーストインクラスの治療薬となる。GAはAMDの一病態であり、不可逆的な視力低下を引き起こす可能性がある。
用法・用量は、「アバシンカプタド ペゴルナトリウム2mg/0.1mL(リンカーを含むオリゴヌクレオチド部分として)を初回から12カ月までは1カ月に1回、硝子体内投与し、以降は2カ月に1回、硝子体内投与する」。承認条件として、「本疾患の患者を対象に実施中の国内臨床試験については、当該試験成績を速やかに提出するとともに医療現場に適切に情報提供すること」などが課された。
厚労省の担当官は部会後の記者説明会で、条件付き承認の内容などを説明。条件は「実施中の国内臨床試験の試験成績の速やかな提出」であり、その試験は「日本人患者の安全性を主要な評価項目とする試験」と説明した。試験成績の提出期限は2028年2月と設定する予定だとした。
部会審議では、GAが中心窩に至ると視力が落ちるというところで、同剤はGAの中心窩への進行を抑制するという観点から臨床的な意義はあると判断された。ただ、臨床試験において視力の明確な改善効果は認められていないため、この点を医療従事者や患者に情報提供することを前提に、承認して差し支えないとの結論に至った。また、同剤のリスク・ベネフィットについても、▽硝子体内投与という侵襲性のある治療法であること、▽通院に負担をかける治療法であること――とのリスクの観点と、臨床的意義(ベネフィット)を十分理解した上で使用する必要があるとの意見もあった。
海外では、米国で23年8月に、AMDに伴うGAの治療を効能・効果として承認されている。
▽ドルミカムシロップ2mg/mL(ミダゾラム、丸石製薬):「麻酔前投薬」を効能・効果とする新投与経路医薬品。特定用途医薬品。再審査期間は、特定用途医薬品(再審査期間は4年以上6年未満と規定)のため5年10か月とされたが、新投与経路医薬品(同6年)でもあるため、2カ月延長して6年となった。
ベンゾジアゼピン系薬剤。小児に対する麻酔前投薬を想定して経口投与のシロップ剤を開発したもの。用法・用量は、「通常、小児にはミダゾラムとして1回0.25~1.0mg/kg(最大用量20mg)を麻酔開始前に経口投与する」
海外では、同剤が承認されている国又は地域はない。ただ、ミダゾラム塩酸塩を有効成分とするシロップ剤が1998年に米国において小児における麻酔前投薬等に対して承認され、欧州(英国、ドイツ及びフランス)でも本薬を有効成分とする経口液剤が麻酔前投薬に係る効能で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽アフリベルセプトBS硝子体内注射液40mg/mL「NIT」、同BS硝子体内注射用キット40mg/mL「NIT」(アフリベルセプト(遺伝子組換え)[アフリベルセプト後続2]、富士製薬工業):「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫」を効能・効果とするバイオ後続品。
▽アフリベルセプトBS硝子体内注射液40mg/mL「SCD」、同BS硝子体内注射用キット40mg/mL「SCD」(アフリベルセプト(遺伝子組換え)[アフリベルセプト後続3]、SamChunDangPharm):「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫」を効能・効果とするバイオ後続品。
眼科用VEGF阻害剤。承認されるとアイリーアで2番目、3番目のバイオ後続品(BS)となる。承認取得済みのグローバルレギュラトリーパートナーズの1番目のBSは現在、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」の適応を持っていないが、いずれもこの適応が含まれている。
海外では2025年6月現在、富士製薬の製品が承認されている国又は地域はない。SamChunDangPharmの製品はカナダで承認されている。
▽①コセルゴ顆粒5mg、②同顆粒7.5mg、③同カプセル10mg、④同カプセル25mg(セルメチニブ硫酸塩、アレクシオンファーマ):「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」を効能・効果とする①②新用量・剤形追加に係る医薬品、③④新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(令和14年9月25日まで)。
MEK阻害剤。現在、空腹時に経口投与となっているが、今回、「空腹時」を削除する。顆粒剤は新剤形。
海外では2025年6月現在、同カプセル剤は米国及び欧州を含む41の国又は地域で承認され、このうち欧州では23年10月に、米国では24年1月にそれぞれ用法・用量から食事の規定が削除された。顆粒剤が承認されている国又は地域はない。
▽スピンラザ髄注28mg、同髄注50mg(ヌシネルセンナトリウム、バイオジェン・ジャパン):「脊髄性筋萎縮症」を効能・効果とする新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(令和9年7月2日まで)。
アンチセンス核酸医薬品。現在、12mg製剤があるが、高用量の剤形(28mgと50mg製剤)と用量を追加するもの。追加する用法・用量は、「通常、ヌシネルセンとして、初回及び初回投与2週間後に50mgを投与し、以降4カ月の間隔で28mgの投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること」。
海外では2025年6月現在、高用量を投与するための50/28mg製剤について承認されている国又は地域はない。
▽①セルセプトカプセル250mg、②同懸濁用散31.8%、③ミコフェノール酸モフェチルカプセル250mg「VTRS」(ミコフェノール酸モフェチル、①②中外製薬、③ヴィアトリス・ヘルスケア):「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
事前評価済公知申請品目であり、保険適用済み。
今回追加する難治性ネフローゼ症候群に対する用法・用量は、「通常、ミコフェノール酸モフェチルとして1回500~600mg/m2を1日2回12時間毎に食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日2000mgを上限とする」。