ミクス調査 8割が「患者価値向上は長期的売上に」 患者貢献と売上は対立でなく補完関係 外資系で強く
公開日時 2025/10/15 04:54

ミクス編集部は、製薬企業の営業系社員を対象に企業理念の浸透と行動に関するアンケート調査を実施し、6割の社員が所属会社の企業理念として、「患者志向(患者中心/患者貢献)」を想起していることが分かった。一方、製薬企業の掲げる患者貢献と営利活動の両立について聞いたところ、8割の社員が、「患者価値の向上は長期的な売上の向上につながる」と回答。7割強が「患者貢献に関する取り組みは企業の持続的成長の基盤になる」と期待感を示した。内資・外資別にみたところ、「患者貢献と売上は対立でなく補完関係だと捉えている」との回答が、内資系社員より外資系社員の方が倍近く強く感じていることも分かった。
調査は、中央大学ビジネススクールの真野俊樹教授(真野研究室メディケアプロジェクト)と共同で行ったもの。製薬企業に勤めるMRなど営業系社員と、マーケティング部、製品学術部、コールセンターなど主に本社で業務を行っている従業員にミクスOnlineを通じてアンケート調査(9月8日~13日、回答総数は101件、有効回答97件)を実施した。
◎「自分の職務が、間接的にでも患者貢献につながっている」81.4%
患者志向(患者中心/患者貢献)に対する従業員の認識を調査した。その結果、自身の活動と患者との接点については、「自分の職務が、間接的にでも患者貢献につながっていると感じる」との全体回答が81.4%で最も高かった。内訳(その他を除く)をみると、マーケティング部が88.9%で最も高く、次いでMR(チームリーダーを含む)が81.8%と続いた。
◎担当製品の戦略プランに“患者中心の医療” 製品学術部は75%、MRは69.7%
「自社製品を処方された患者の治療経過を定期的に医療者等から収集している」の回答は61.9%で、内訳は、MR(チームリーダーを含む)が93.9%で最も高く、営業管理職が78.9%と続いた。企業理念に掲げる「患者中心」で自身の活動で当てはまるものを聞いたところ、「担当製品の戦略プランの中に“患者中心の医療”という項目が含まれている」との回答は55.7%となった。内訳をみると、製品学術部が75.0%で最も高く、次いでMR(チームリーダーを含む)の69.7%、営業管理職が68.4%と続いた。
近年上市される革新的新薬の多くが、希少疾患や難治がんなどアンメットメディカルニーズの高い領域に集中し、患者個々に応じた治療方針が求められることも、「患者中心」を意識した活動を想起させる背景にあると思われた。この点で製品学術部が日々対応する医療現場からの臨床的な質問や問い合わせも、患者個々の病態や病期に応じたものが多いと想定され、今回の調査結果から、製品学術部内の「患者中心」に対する意識が他部門に比べて高まっているものと推察された。
◎「患者貢献」と「営利活動」の両立 8割が「長期的な売上につながる」
製薬企業が掲げる「患者貢献」と「営利活動」の両立についても回答を求めた。最も高かった回答は「患者価値の向上は長期的な売上の向上につながる」で80.4%。内訳は、営業管理職が89.5%でトップ。次いでMR(チームリーダーを含む)が81.8%、マーケティング部が81.5%で続いた。「患者貢献に関する取り組みは、企業の持続的成長の基盤になると思う」は77.3%。内訳は、製品学術部が87.5%でトップ。次いでMR(チームリーダーを含む)が84.8%、営業管理職が78.9%、マーケティング部が74.1%となり、各部署ともに患者貢献に対する期待を強めていることがうかがえた。
◎患者価値向上と短期的売上の両立 全体で16.5% 営業管理職26.3%
一方で、「患者価値の向上と短期的な売上の向上は両立できる」は16.5%と低率だった。内訳をみても、営業管理職は26.3%、マーケティング部は18.5%、MR(チームリーダーを含む)は18.2%。足元の数字に追われる営業系社員にとって、患者価値など企業理念への理解はあるものの、現実的な目標達成が自身の評価となるだけに、「手段」としての患者貢献や患者中心をつなぐ目標設定のロジック構築などが求められそうだ。
調査結果から興味深い結果も得られた。製薬企業が掲げる「患者貢献」と「営利活動」の両立について内資系・外資系の従業員別に回答を集計したところ、内資系社員の回答30.4%に対し、外資系社員は53.7%と高率になっていることが分かった。