【中医協費用対効果評価専門部会 10月15日 議事要旨 制度見直しに関する検討(その2)について】
公開日時 2025/10/16 04:52
中医協費用対効果評価専門部会が10月15日に開かれ、費用対効果評価制度の見直しに関する検討をテーマに議論した。本誌は、質疑における診療・支払各側の発言内容を議事要旨として公開する。
飯塚部会長:ただいまより費用対効果評価専門部会を開催します。本日は、「費用対効果評価制度の見直しに関する検討(その2)」を議題といたします。事務局より、資料が提出されておりますので、説明をお願いします。
(事務局説明略)
飯塚部会長:ただいまの説明に関して、ご質問などがありましたらお願いします。江澤委員お願いします。
江澤委員:はい、ありがとうございます。まず資料「費―1」38ページの論点の1つ目にある「追加的有用性が示されず費用増加となった分析対象集団における価格調整」に関してですが、資料「費―1」35ページ(費用対効果評価の結果及び価格調整係数について)でも指摘がありますように、評価を見直すべきと考えます。
その他の論点について、すべて方向性が示されておりますが、その方向性について、おおむね異論はございません。今後、予定されております、関係業界からのヒアリングなども踏まえて議論を深めてまいりたいと思います。以上でございます。
飯塚部会長:はい、ありがとうございます。他にいかがでしょうか? 森委員お願いします。
森委員:論点についていくつか意見をさせていただきます。まず資料「費―1」10ページ(比較対照技術について)の論点にあります。比較対照技術の選定についてですが、非常に大きな点であり、業界の意見が重要と思いますが、臨床的に幅広く用いられている中から治療効果が高いものを選定すべきと考えます。また、比較対照技術の選定が難しく、決まらない場合には、企業と国立保健医療科学院で十分に協議を行って、比較対照技術を選定していくべきと考えます。
次に、資料「費―1」17ページ目の介護費用の取り扱いについては、以前から申し上げていますが、事例の収集、学術的に確立していくための調査研究の継続が必要だと考えます。また、論点にもありますように、費用対効果評価における介護費用の取り扱いは、医療保険制度の基本的な考え方にかかわる問題であり、引き続き議論をしていくべきだというふうに考えます。
次に、資料「費―1」22ページ目(ICERの不確実性について・不確実性を踏まえた対応)についてですが、ICERは一定の不確実性があり、不確実性を最小とする取り組みとともに、ICERの区分で幅を持たせること、専門組織での総合評価を行うことが、引き続き必要だと考えます。
次に、資料「費―1」25ページ目(ICE Rの不確実性について・評価する価値)についてですが、これまで注射で使用されていた医薬品が経口で投与可能となることや、投与間隔が延長されることは、医療提供上も、患者にとってもメリットとなります。費用対効果評価として、どう考えるかは論点にあるように、諸外国の状況を調査し、検討を進めていくものと考えます。
次に資料「費―1」31ページ目(価格調整について・引き上げ要件)についてですが、引き上げ要件を明確にすることに異論はありません。前回の制度の見直しにおいて、価格引き上げの要件の一部緩和が行われましたが、実際に価格引き上げとなったものはありません。
価格引き上げとなったものがない要因は、薬剤の要因なのか、比較対照技術の選定方法なのか、そもそも要件設定の問題なのか、あるいは要件緩和の内容や範囲が不十分だったのかなど、幅広い視点で業界の意見も踏まえた検討が必要と考えます。
次に資料「費―1」33ページ目(価格調整について・配慮が必要な対象)ですが異論はありません。今回の論点の中に、諸外国での調査を踏まえて検討する項目がいくつかあります。調査は行うべきと考えますが、諸外国では、医療保険制度の仕組みや、費用対効果評価の活用や目的など考え方が異なります。調査後そのような背景も踏まえて検討していくべきと考えます。
資料「費―1」38ページ目についてですが、費用対効果評価制度が運用開始されてから6年が経過し、45品目の評価が終了しました。比較対照技術の選定、不確実性に対する対応、価格引き上げになった品目がないことなどが課題です。現状の課題がある中で価格調整範囲の拡大は、業界の意見も踏まえつつ、ドラッグ・ラグ/ロスの影響にも配慮した慎重な検討が必要と考えます。
また、前回も申し上げましたが、次のステージに向けて、専門の医師や薬剤師などの関係職種や医療経済に関する専門家など、第三者の意見なども踏まえ、客観的な検証も進めていくべきと考えます。私からは以上です。
飯塚部会長:はい、ありがとうございます。他にいかがでしょうか? 松本委員お願いします。
松本委員:はい、ありがとうございます。本日のテーマにつきましては、次期制度改革のコアになる部分ということですので、少し論点を飛び越える部分もあるかもしれませんが、ご一緒いただきたいと思います。
まず、資料「費―1」8ページ(既収載品目の指定について)の論点ですが、手続きの明確化に異論はありませんけれども、これまで一定の実績を積み重ねてきたこと、あるいは今後、診療ガイドラインに反映すると、費用対効果評価制度を積極的に活用する観点から、有用性加算の有無にかかわらず財政影響が大きいものに指定の範囲を広げることや、同じ疾患で治療の選択肢になり得る複数の技術について費用対効果を比較するといったことも検討すべきだというふうに考えます。
この点につきましては、診療ガイドラインや分析体制にも関連いたしますので、今後、実務的な対応の可能性につきましては、公的分析機関に確認することも必要だと思いますが、ぜひ指定品目の拡大を次期改革に向けた議論の俎上に載せていただきたいというふうに思います。
次に資料「費―1」10ページにあります。比較対照技術についてです。本質的にICERの仕組みは、必ずしも価格が低いものと比べることがダイレクトに不利になるものではなく、QOLの改善に見合った価格差かどうかがポイントだというふうに理解をしております。したがいまして、比較対照技術が決められないのであれば、相対的に安価なものと比べることが最も合理的だと思いますが、最終的には専門組織でご判断いただくことかと思います。
ただ、仮に安価なものと比較すること自体が問題だということであれば、繰り返しになりますが、治療の選択肢になり得る複数の技術と比較することも当然検討すべきだということは指摘させていただきます。
続きまして資料「費―1」17ページの介護費用を取り扱いについては、事務局案の整理で結構かというふうに考えております。
次に資料「費―1」22ページ、25ページに示されておりますICERの不確実性についてです。どのような尺度だったとしても、必ず限界があり、現状でも評価区分に幅を持たせていることや、総合的評価も行っていることを踏まえれば、業界から具体的な代替案が示されない限りは、事務局案の通り、現行の取り扱いを継続しつつ、諸外国の調査を進めることが現実的だというふうに考えます。
続きまして資料「費―1」31ページの価格引き上げ要件については、要件緩和ではなく、曖昧なものを明確化するという趣旨であれば、異論はございません。
また、資料「費-1」33ページの「価格調整について配慮が必要な対象」については、海外調査等も踏まえ、具体的な対応の可能性を議論すること事体については異論ございません。
最後に資料「費―1」38ページの追加的有用性が示されず、費用増加になった品目については、費用対効果評価の枠組みの中だけで考えた場合は、保険給付の必要性そのものに疑問も感じるところではございますが、保険償還の可否の判断には用いないという、この制度の前提を考えれば、例えば、レケンビの例に倣って、加算の範囲にとどまらない価格調整をすべきであり、少なくとも追加的有用性が認められて、ICERが高い場合より厳しい対応が不可欠だというふうに考えます。私からは、以上でございます。
飯塚部会長:はい、ありがとうございます。他にはいかがでしょうか? それでは高町委員お願いいたします。
高町委員:ありがとうございます。私からは一点質問させていただきます。追加的有用性が示されずに費用増加となった品目について、その比較対照技術の価格を基準にして、価格調整を行うということですか?この場合、比較対照技術とほぼ同じ価格になるということなのでしょうか?改めて教えてください。私から以上です。
飯塚部会長:はい、ありがとうございます。今ご質問いただきましたけれども、事務局いかがでしょうか?
事務局:事務局でございます。資料「費―1」38ページの論点につきましては、この追加的有用性が示されず、追加費用増加となった分析対象者における価格調整をどう考えるかということと、我が国と各国の医療制度の違いを踏まえつつ、そのあり方を見直すことについて、どう考えるかという論点を出しているところです。
そういった中で、例えば薬価でございますけれども、国ごとに制度が異なるといった現状がございまして、例えばドイツでは保険収載から9か月間は製造販売業者が希望する価格で販売することが可能ということで、その後に追加的有用性の評価が明らかになった時点で、価格調整を行うといったものがございます。
こういった制度の違いを踏まえ、本部会でのご議論などをいただきまして、追加的有用性が示されなかった品目の取り扱いについて検討してまいりたいと考えております。以上です。
飯塚部会長:はい、ありがとうございます。高町委員、いまのご説明でよろしいでしょうか。
高町委員:了解しました。ありがとうございます。
飯塚部会長: ありがとうございます。鳥潟委員お願いします。
鳥潟委員:ありがとうございます。質問ではないですけども、意見になります。「(7)価格調整について・配慮が必要な対象)」の論点のうち、最後の追加的有用性が示されず費用増加となった品目の取り扱いについてですけれども、専門家から指摘されている費用対効果評価の結果を十分に反映できていないという指摘は、当方もレケンビにおける対応の際に感じたところであり、現役世代の保険料負担への配慮や国民皆保険の持続可能性の観点から、費用対効果評価結果を十分に反映できるよう価格調整の在り方について見直していくべきだと考えております。以上です。
飯塚部会長:はい、ご意見ありがとうございます。他にご質問ご意見とございますか?専門委員からご意見などありましたら、お願いいたします。藤原専門委員お願いします。
藤原専門委員:はい、ありがとうございます。まずは業界が8月の意見陳述において提案した検証事項も含め、本日、個別の論点として取り上げていただいたことに感謝を申し上げます。個別の論点につきましては、業界ヒアリングの機会もいただいておりますので、業界代表より意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、全体的な話について、私からコメントをさせていただきたいと思います。
本日、いくつかの論点において、海外調査を行うということでございましたけれど、森委員からご発言ありましたけれども、諸外国の制度を参照する際には各国の社会保障制度の違い、例えば、税方式なのか、社会保険方式なのか、また、薬価制度や費用対効果評価の活用方法の違いなどについて、丁寧に議論する必要があると考えております。また、ご提示いただいた論点の中でも、価格調整範囲、追加的有用性の評価、並びにICERの不確実性に関する事項は、薬価制度との整合性、イノベーションの評価に深く関わる重要な論点であると認識しております。制度の大幅な見直しを検討するにあたっては、制度の信頼性と透明性を確保するためにも、第三者の専門家を交えた検証の機会を設けていただき、丁寧に議論することが必須であるというふうに考えております。私からは、以上でございます。
飯塚部会長:はい、ありがとうございます。他にございますか?
私から一点コメントがあります。資料「費―1」14ページの公的介護費用への影響についてということで、今回十分なデータがなかったので計算ができなかったという側面があったと理解しますけれども、医療と介護の連携というのは、今後、ますます重要になっていくということは確実であると思います。今後どういったデータがあれば計算できるのかというのを把握して、介護のライフ等のデータで、しっかりデータが把握できるよう、厚労省の全体で対応を考えていただきたいなというふうに思っております。私から以上です。
他にご質問等ないようでしたら本件にかかる質疑はこのあたりといたしたいと思います。今後、事務局において本日いただいたご意見も踏まえて、ご対応を頂きたいと思います。本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。それでは、本日の費用対効果評価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。