中医協総会が2月13日に開かれ、令和8年度診療報酬改定に関する答申書案について議論した。本誌は、各側委員の質疑の内容を議事要旨として公開する。
小塩会長:それでは議事に入らせていただきます。はじめに答申について議題とします。令和8年度診療報酬改定につきましては、本年1月14日に厚生労働大臣から諮問されました。本日は、これまでの中医協における議論の成果を踏まえ、答申書案およびこれに添付する付帯意見、診療報酬点数表等の改正案が提出されております。内容につきましては、これまでの議論を踏まえたものと思います。事務局より説明をお願いいたします。
(事務局説明 略)
小塩会長:はい、ありがとうございました。基本的にはこれまでの議論を踏まえたものになっていると思います。1号側委員、2号側委員を代表して、それぞれご発言等ございましたらお願いします。最初に松本委員お願い致します。
松本委員:はい、ありがとうございます。支払側を代表して松本より発言します。本日示されました答申案につきましては了承させていただきます。それでは総括的なコメントを述べさせていただきます。
昨年の春から時間をかけて診療側委員と議論を重ね、すべての項目を合意することができました。小塩会長をはじめ、公益委員の皆様方には総会や部会の議事を丁寧に進行して頂いたとともに、令和6年度改定の結果検証に加え、公平な視点で的確な指摘をいただき、心より感謝を申し上げます。
また、技術的な観点から貴重な意見をいただきました専門委員や各分科会の委員の皆さんをはじめ、今回の改定に関わったすべての関係者に熱く御礼申し上げます。そして、精緻なデータの提示や、さまざまな調整に日夜奔走いただいた厚生労働省事務局に心より敬意を表します。
まず、重点課題である賃上げや物価への対応については、プラス改定の財源は大半を充当することになるが、医療現場における業務の効率化や生産性の向上も不可欠である。賃上げ対応では、より幅広い職種がベースアップ評価料の対象となり、実態を正確に把握できるようになる。医療機関の経営者には手続きの簡素化や、法人単位のマネジメントを踏まえ、確実な賃上げにつなげていただきたい。
物価対応では、病院と診療所の経営状況や、病院の中でも機能による費用の違いを反映した、きめ細かい配分になった。物価上昇による経営の悪化を乗り越えて、地域で求められる役割をしっかり果たすことに期待する。
入院医療については、病院としての機能をより重視したことが最大の特徴である。高度急性期や、急性期の入院料について、救急搬送の受け入れや、手術の実績に応じた評価体系に見直すことや、急性期と包括期のケアミックスのあり方に一定の方向性が示されたことにより、急性期機能の集約化や、包括期機能の充実につながるものと認識している。
外来医療については、大病院とかかりつけ医機能を担う医療機関による役割分担や、救急外来への対応をより一層進め、患者に身近な地域の医療を強化すべきである。また、生活習慣病の管理については、データに基づく実績評価を導入することは、今後の試金石になるものと考える。在宅医療については、適正化と充実のセットで対応することにより、質を担保しつつ、限られた医療資源で、今後さらに増加する医療ニーズを過不足なく充足することが重要である。
歯科医療については一般的な歯科疾患の計画的かつ、継続的な管理を徹底しつつ、専門的な口腔機能の管理を充実することにより、ライフステージを通じて患者の状態に応じた適切な歯科、医療を実施していただきたい。また、デジタル化による業務の効率化や、歯科用金属の価格変動に影響されない材料の拡大にも期待する。
調剤については、患者のための薬局ビジョンの実現に向けた対応を図った。門前や敷地内等の立地に依存せず、真に患者本位のかかりつけ薬剤師機能を発揮すべきである。
医療保険制度の持続可能性と医療の質を確保する観点からは、薬剤の適正使用が重要である。後発医薬品だけでなく、バイオ後続品を積極的に使用することや、ポリファーマシー対策について、着実に成果を上げていただきたい。
医療DXについては、マイナ保険証の利用促進を中心とした評価から、電子処方箋や電子カルテに着目した新たな評価体系に見直すことになる。これまで以上に質が高く、効率的な医療が実現し、患者がメリットを実感できることに期待する。また、医療にアクセスしにくい患者が必要なときに適切な医療を受けられるよう、オンライン診療や遠隔診療を健全に普及させることも重要である。
賃上げや物価上昇への対応、入院、外来、在宅を通じた医療提供体制全般の最適化、医療DXやICT連携による効率化、AIを活用した医療従事者の負担軽減等、令和8年度改定の影響を丁寧に検証し、エビデンスに基づいて不断の見直しをすることが求められる。
とりわけ賃上げや物価上昇への対応に関し、大臣折衝において必要な足元の情報を正確に把握するため調査するとされている点にはしっかり取り組んでいくことが重要である。患者中心の医療を推進する観点からは、電子カルテの保存期間の延長など、今回議論できなかった方についても、次回改定に向けて議論を尽くしたい。
また、薬価制度、材料価格制度、費用対効果評価制度については、引き続き医療保険財政の持続可能性を考慮しつつ、イノベーションの推進と安定供給の確保に向けた対応を進めるべきである。私からは以上でございます。ありがとうございました。
小塩会長:ありがとうございました。それでは、続きまして2号側から江澤委員お願いします。
江澤委員:はい、診療側委員を代表して江澤より発言させて頂きます。ただいま提示されました答申案につきましては、これまでの議論の積み重ねを踏まえたものであり賛同いたします。
今回の改定は、昨今の急激な物価高騰、人件費上昇に診療報酬の改定が追いついておらず、医科、歯科、医療機関ならびに薬局等の経営状況が著しくひっ迫し、閉院や倒産が過去最多のペースになるなど、かつてない異常事態の中での対応でありました。
診療報酬は高齢化や医学の進歩、高度化に対応するための設備投資や医療現場を支える医療従事者の確保、さらには、あるべき医療提供体制の構築に対応するために有意義に活用されるものであり、そして何よりも、国民に質の高い医療を提供する極めて重要な役割を担っています。
このたびの改定においては、医療を取り巻く様々な課題がある中で、真摯な議論が行われ、本日の答申案にたどり着くことができたものと理解しております。今回の改定を糧として、より一層質の高い医療を提供してまいる所存でございます。
中医協の議論を充実させるためにご尽力いただきました各分科会の関係者の皆様、また国民皆保険制度を守るという観点から様々なご意見をいただきました支払側委員の皆様、さらには両側の意見の取りまとめにご尽力いただきました小塩会長をはじめ、公益委員の皆様、そして最後に膨大な資料作成や丁寧な合意形成に向けて日夜ご苦労いただきました事務局の皆様、すべての関係者の方々に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。私からは以上でございます。
小塩会長:ありがとうございました。それでは、この答申書および付帯意見を持って中医協から答申を行うこととしたいと思いますが、いかがでしょうか?
(各側合意)
小塩会長:ありがとうございます。それでは事務局におかれましては、答申書の製本のご準備をお願いいたします。本日は、上野厚生労働大臣がお見えですので、私より答申書をお渡ししたいと思います。
小塩会長から上野厚労相に答申書を手渡し
小塩会長:それでは、上野大臣より一言ご挨拶をお願いします。
上野厚労相:厚生労働大臣の上野賢一郎です。ただいま小塩会長から答申をいただきました。一言ご挨拶を申し上げたいと思います。小塩会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、令和8年度の診療報酬改定に向けまして、今年度だけでも約40回にわたりまして、中身の濃い、そして熱心な議論をいただきました。委員の皆様のお時間をたくさん頂戴いたしました。心から感謝そして敬意を表したいと思います。
今回の改定を取り巻く環境につきましては、物価や賃金が緩やかに上昇し続ける、そうした社会経済情勢の変化にも対応しつつ、同時に、人口減少、少子高齢化が進む中で、地域で必要な医療を確保し、質の高い医療を引き続き提供していくための取り組みも求められる。そうした例年にない難しい課題があったと認識をしております。
こうした中で、物価高騰への対応や、あるいは幅広い医療関係職種での賃上げを実現するための評価の見直し、地域で急性医療やかかりつけ機能を担う医療機関等の評価、多職種連携、
DXの評価、実態に応じた効率化・適正化など、時代の変化に対応した多岐にわたる重要な事項を答申に盛り込んでいただきました。
そういった観点から画期的な改定であると受け止めております。いただいた答申をもとに厚生労働省としましても、速やかに法令、あるいは通知の整備を行うなど、6月からの施行に向けまして準備を進めてまいりたいと考えます。
また、今回の改定による影響の検証や、残された課題の検討につきましても、付帯意見として示していただきました。これを真摯に受け止めて対応させていただきたいと考えます。改めまして、皆様方の長きにわたる真摯な議論に、厚生労働省を代表いたしまして、心から感謝を申し上げまして、ご挨拶とさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。
小塩会長:どうもありがとうございました。それでは、私の方からも一言申し上げます。本日、無事答申を終えることができました。これまで精力的に審議に参加してくださいました1号側委員、2号側委員、そして専門委員、それから各分科会の委員、そして公益委員の皆さん、さらには長大な資料の作成や会議の運営にご尽力くださった厚生労働省の事務局の方々、そして各委員のスタッフの皆さんに心よりお礼申し上げます。
今回の改定では、賃上げや物価上昇、それから医療機関等の経営環境の悪化への対応が重要な政策課題として位置付けられました。これらの対応につきましては、政府の方針として明確に打ち立てられました。さらには、各委員もそうした問題意識を共有されたことがありますので、中医協における議論も比較的スムーズに収束に向かったかと思っております。
その一方で、例えば急性期病院一般入院基本料の新設に代表されるように、少子高齢化の進行の中で、より効率的な医療供給体制の構築に向けて、新たな改革も答申の随所に盛り込まれたところでございます。ただ、答申の付帯意見にもありますように、今回の改定作業が期待通りの成果を得て上げているかどうかというのは、今後の検証作業に追うところが少なくありません。検証作業を丁寧に進め、しっかりとしたエビデンスに基づいて、次回以降の改定に向けて作業を進めてまいりたいと思いますので、各委員におかれましては引き続きご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します。
なお、会長として厚生労働省の皆さんにお願いがございます。言うまでもなく中医協にとりましては、国民皆保険を堅持し、安心できる医療供給体制を安定的にするということが最大の使命になっております。直近ですと、例えば消費税や給付き税額控除に合わせて、医療を含む社会保障全体のあり方について「国民会議」という場で様々な議論が行われるというふうに伺っております。中医協の議論に携わってきたものといたしましては、将来にわたって安定的に維持できる医療保険制度の維持が非常に重要だと思っていますので、政府全体として、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。私からの発言は以上です。どうもありがとうございました。
以上をもちまして、答申の議題は終了いたします。上野厚生労働大臣におかれましては、誠にありがとうございました。