【中医協薬価専門部会 12月12日 議事要旨 令和8年度薬価制度改革の骨子(たたき台)について】
公開日時 2025/12/15 04:51
中医協薬価専門部会が12月12日に開かれ、令和8年度薬価制度改革の骨子(たたき台)について議論した。本誌は、診療・支払各側委員の質疑の内容を議事要旨として公開する。
城山部会長:ただいまより第244回中央社会保険医療協議会薬価専門部会を開催いたします。今回は、令和8年度薬価制度改革の骨子たたき台について議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、事務局からご説明をお願いいたします。
(事務局説明 略)
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明についてご意見等ございましたらお願いします。江澤委員お願いします。
江澤委員:はい、ありがとうございます。最初に質問でございます。長期収載品のさらなる適正化に関する資料「薬―1」(令和8年度薬価制度改革の骨子(たたき台))6ページの「②」(引下げの下限、円滑実施措置)につきまして、基本的には廃止するものの、次期薬価制度改革に限り、安定供給に支障が生ずる場合のみ適用することとされておりますが、安定供給に支障が生じるかどうかは、誰がどのタイミングで判断するのかを教えていただければと思います。
続きまして資料「薬―1」7ページ(オーソライズド・ジェネリック(AG)・バイオ AG の取扱い)のAG、特にバイオAGの新規収載時の対応における薬価を先発品と同額とすることに関して、今後のAGの立ち位置、存在意義をどうするかなどの考え方によって大きく変わるものと思いますので、十分な検討やコンセンサスを経た上で検討すべきであることを申し上げたいと思います。
最後に資料「薬―1」8ページの薬価の下支え制度の充実として最低薬価や不採算品再算定の在り方につきましては、これまでも議論があった通りでございますが、不採算となる背景には、薬価だけでなく流通面の課題も含めて、さまざまな要素がありますことから、採算面だけでなく臨床現場のニーズも踏まえた上で、必要な範囲で検討するのがよいと考えております。
また、安定供給につきましても、薬価だけでは解決できない課題でありますので、国民が安心して治療が受けられるよう、国、製薬企業など関係者が一致協力して、早期解決を図っていただけますよう切にお願い申し上げます。私から以上でございます。
城山部会長:はい、ありがとうございました。一点目はご質問ということでしたので、事務局いかがでしょうか?
事務局:ありがとうございます。資料「薬―1」6ページの「②」に引下げの下限、円滑実施措置のものについて、今回は制度が決まってすぐということで激変緩和の措置をこのまま継続していこうかと思います。次々期につきましては基本的に、このルールを無くすというようなことで、恐らくルール上では経過措置の中に入れてお示しをさせていただこうかと思います。
安定供給に支障が生じる場合どのようにして判断するのかというご質問だったと思いますが、そのような場合は、実際に安定供給にかなり支障が生じる。それは会社として大きな影響がある、あるいは品目としてかなりシェアがあって安定供給の方に支障があるというような話があれば、恐らく関係会社の方が関係部局を通じて、こういう事情があるという話が来ると思いますので、それを受けて、こちらにお諮りをして、このルールのさらなる延長等をご検討していただければと考えております。
それがなければ基本的には我々の薬価調査の方で内容を確認いたしまして、大きな影響がないという場合でしたら、次々回以降はこのルールを削除したいというふうに考えております。以上でございます。
城山部会長:江澤委員いかがでしょうか?
江澤委員:ということは事務局または薬価専門部会で判断をするという理解でよろしいでしょうか?
事務局:はい、そうでございます。
江澤委員:はい結構でございます。ありがとうございます。
城山部会長:ありがとうございました。他いかがでしょうか。森委員お願いします。
森委員:はい、ありがとうございます。いくつかコメントさせていただきます。まず資料「薬―1」8ページ目「②」の不採算品再算定のところですけれども、安定供給に支障を来たしたときに代替困難と治療に影響を及ぼすもの等については配慮が必要であると私も考えております。
2点目は資料「薬―1」9ページ目のところですけども、販売包装単位の適正化のところですが、ここに「柔軟な対応を行いつつ」という言葉を入れていただき、ありがとうございました。次々期の薬価制度改革までの間に対応が必要な医薬品が出てきた時には柔軟な対応をお願いしたいと考えます。
最後に資料「薬―1」10ページ目の診療報酬改定がない年の薬価改定ですけれども、4大臣合意の当時と比べて医療・医薬品を取り巻く環境は非常に大きく変わっているというふうに思います。そうした中で、診療報酬改定がない年の薬価改定をどうするのか、これまで通り行うのか、行えるのか、慎重に検討すべきと考えます。以上です。
城山部会長:はい、ありがとうございました。ご意見ということで、お伺いしていただきます。他いかがでしょうか? 松本委員お願いします。
松本委員:はい、ありがとうございます。資料に示されております「たたき台」についてコメントいたします。まず資料「薬―1」4ページにございます新薬創出等加算の累積額控除については、従来から申し上げております通り、特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るという考え方は、業界とも認識は共有できているはずだと理解しております。
本来は、後発品の薬価収載と同時に控除すべきだと考えておりますが、まだ中医協として合意が得られていないと受け止めております。ぜひ、今後の課題として、改めて議論させていただきたいと思っております。
次に市場拡大再算定につきましては、国民皆保険の維持のための対応という趣旨を明確にするために名称を変更することは意味のあることだと考えております。価格調整の在り方につきましては、残念ながら引き続き検討するということですので、やむを得ませんが、今後とも国民皆保険の持続可能性を高める方向で見直しを検討すべきだと考えます。
続いて資料「薬―1」8ページからの薬価の下支え制度の充実についてでございますが、前々回の薬価専門部会で、優先順位は慎重に判断すべきだと指摘させていただき、その後、薬価調査の結果が示されましたので、それを受けまして具体的な意見を申し上げたいと思います。
まず、最低薬価についてですが、令和7年に一律3%引き上げたにもかかわらず、乖離率が全体平均を超える7.3%という結果について、先日の業界ヒアリングで確認したところ、総価取引が要因だという説明がございました。
そもそも、単品単価取引を進める流れにある中で、参考資料9ページ(不採算品再算定適用品目の適正な流通について)の太字にもありますとおり、最低薬価に引き上げられた趣旨に鑑み、適正な価格で流通することが強く求められるにもかかわらず、いまだに、こうした事務連絡を遵守することになく総価交渉がされていること自体が、まず理解ができないということでございます。
やはり、心配していた薬価差益の調整弁になってしまっているというのが正直な印象でございます。以前に比べれば、乖離率が小さくなっているという業界の説明もあり、調査の結果は、あくまで平均ですので品目によっては乖離率が小さい場合もあるかもしれませんが、薬価の3%引き上げをした直後に、その引き上げ率を超える値引きというのは、大変に重いことだというふうに認識すべきです。
前回の改定の際にも指摘しましたが、物価が上がれば自動的に最低薬価も上がるものではないということを改めて強く主張いたします。
次に不採算品再算定については、参考資料の12ページ(不採算品再算定の考え方)に対応の方向性として示されております、「特定の企業からの供給が途絶えたときに代替供給を確保することが困難な医薬品については、患者のためにも不採算品再算定の対象とする」ことに異論はございません。事務局において、この代替供給の確保が困難かどうかについて十分に精査することをお願いしたいと思います。
それから、参考資料10ページ(令和7年度薬価改定における不採算品再算定対象品目の実勢価格の乖離状況)を見てみますと、令和7年度改定で対象となった品目の乖離率が平均1.6%。これは調整幅2%の範囲内に収まっており、また分布としても全体平均の4.8%未満が98%ということで、ほとんどを占めております。一部にはそれなりの乖離が生じた品目もございます。
流通改善ガイドラインを遵守し、適正な価格で取引することを販売、購入者の両サイドに徹底していただきたいというふうに思います。
また、基礎的医薬品について先日の業界ヒアリングでは重要供給確保医薬品の「B群」も含めるべきとのご意見がございましたが、これも参考資料8ページ(供給確保医薬品・重要供給確保医薬品について)を見てみますと、カテゴリー変更による削除あるいは学会から取り下げによる削除等が示されておりますので、そうしたことが起こり得ることを踏まえますと、やはり、まずは「A群」に限定すべきであり、他の仕組みによる下支えの可能性も精査し、適用を判断する必要があると考えております。
最後に、診療報酬改定がない年の薬価改定についてですが、やはり4大臣合意を上書きする政府方針が示されない限り、薬価改定は毎年粛々と実施するものであり、薬価の下支えをするものであれば、当然適正化もセットで、すべてのルールを適用することが基本だということを改めて申し上げます。私からは以上です。
城山部会長:はい、ありがとうございました。いかがでしょうか? 鳥潟委員お願いします。
鳥潟委員:不採算品再算定についてですが、これまで特例的な対応を行っている一方、供給不安はまだ解消していないと認識しております。そうした中で、今回の薬価制度改革では供給改善に真に寄与する品目のみを対象とするべきであり、品目統合への影響も配慮するべきと考えております。
そのため、資料に記載されている要件に加えて、市場からの撤退や供給改善への寄与が難しいシェア率の品目まで下支えが必要なのか、その在り方について検討が必要ではないかと考えております。
また、業界ヒアリングでもお伺いいたしましたが、企業指標につきましては、個別企業の評価結果の公表を行ってこそ、その目的が果たされると思います。価格帯集約で、企業指標のさらなる活用を行うのであれば、個別企業の公表もセットでご検討いただければと考えております。以上です。
城山部会長:はい、ありがとうございました。永井委員お願いします。
永井委員:はい、ありがとうございます。これまでも発言してきたことになりますが、患者が必要とする医薬品・医療機器へのアクセスの確保の観点から、ドラッグ・ラグ/ロスの解消、創薬イノベーションの推進は重要と考えますので、国民負担の軽減とバランスを図りつつ、イノベーションについては適切に評価するとともに、安定供給の確保の観点から、物価賃金の上昇などへの影響を鑑みて、適切に対応し、公正な価格形成に向けて、流通改善ガイドラインの実効性の確保や、さらなる周知なども合わせて対応していくことが必要と考えております。以上です。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。他いかがでしょうか。1号側、2号側よろしいですか。専門委員からもご意見があれば伺えればと思います。藤原専門員お願いします。
藤原専門委員:発言の機会をいただき、ありがとうございます。まず初めに骨子たたき台全体における認識を述べさせていただきます。資料「薬―1」1ページに基本的考え方に骨太方針2025においては、国民負担の軽減と、創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価の実施を踏まえた上で、令和8年度薬価制度改革を行う旨が記載されております。また一昨日、業界代表からインフレ経済下における物価賃金上昇、およびドラッグ・ラグ/ロスとの課題がある中においては、創薬イノベーションを推進するメリハリのある薬価政策の必要性について述べさせていただいております。
しかしながら、今回の骨子たたき台で記載されている内容からは、そのメッセージを十分に読み取ることができません。
その上で、3点コメントさせていただきます。まず、資料「薬―1」4ページ目の市場拡大再算定特例の見直しについてです。制度の名称を「持続可能性価格調整」に変更することが提案されておりますけれども、本提案についても業界代表より再算定の本来の趣旨からは大きく変わるものであるため、名称変更について「反対」であることを意見表明させていただいているところでございます。
国民皆保険維持のための対応につきましては、関係するステークホルダーの皆様方と丁寧な議論を行う必要があるというふうに考えております。
続いて資料「薬―1」5ページ目の市場拡大再算定または持続可能性価格調整の類似品の取り扱いについてです。いわゆる「共連れ」につきましては業界代表より廃止を要望させていただいております。共連れにつきましては、冒頭申し上げました創薬イノベーションの推進に大きく関わる項目でありますことから、改めて廃止に向けた検討をお願いしたいと考えております。
最後に資料「薬―1」の参考資料12ページの不採算品再算定の対象品目についてです。「対応として考えられる方向性」に、極めて長い使用経験があり供給不足による医療現場への影響が大きいと考えられる薬剤など、と例を記載いただいております。けれども安定供給に支障を来たさないという観点からは、そうした薬剤に限定することなく、医療上の必要性が高く、代替供給を確保することが困難な医薬品については、適時確実に適用いただくよう、よろしくお願いを申し上げます。
あわせて企業としては、安定供給に向けた努力を引き続き続けてまいりたいと思います。私からは、以上でございます。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。他いかがでしょうか。奥田委員よろしくお願いします。
奥田委員:はい、ありがとうございます。私から2点意見を申し上げたいと思います。まず1点目は、資料「薬―1」4ページの市場拡大再算定の特例の名称変更についてです。今も専門員からも意見がありましたけれども、私も先日の業界ヒアリングの際に、次のようなコメントをいたします。
国民皆保険の維持のための対応という趣旨は理解しているのですけれども、販売額が大きく拡大しているということは、その医薬品が医療現場において価値が認められているという点もあるのではないかということで、そうした中で、今回の名称変更はうまく趣旨が示されているか定かではない印象を持ったというコメントをさせていただきました。
本日、さらに骨子案では英語の名称も示されたんですけれども、やはり、うまく趣旨が示されていないのではないかという印象が強まったように感じました。
それから2点目であります。資料「薬―1」9~10ページに記載の「(4)」イノベーションの適切な評価に関連して、従来から申し上げておりますけれども、国民皆保険の持続性の両立とのバランスを考慮することも必要であると同時に、やはりドラッグ・ラグ/ロス等が生じないよう、イノベーションの推進に対する適切な評価についても引き続き配慮していくことが重要だということを申し上げておきたいと思います。私から、以上です。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。他いかがでしょうか。よろしいでしょうか? 他に意見がないようでしたら本件に関する質疑はこのあたりとして、今後事務局においては、本日いくつか出ましたけれども、いただいたご意見も踏まえて答えをいただくようお願いをいたします。本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局長に連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。それでは、本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。