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中医協 不採算品再算定「供給改善に効果的に資する範囲で検討を」 平均乖離率超は除外へ

公開日時 2025/10/30 10:00
中医協薬価専門部会は10月29日、2026年度薬価改定に向けて、不採算品再算定をめぐり議論を行った。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「不採算品再算定の対象となっても供給状況が悪化している品目もある」と指摘。「臨床現場のニーズも踏まえた上で、供給改善に効果的に資する範囲で検討するのが良い」との見解を示した。支払側からも、不採算品再算定品目の個社、個別製品の供給量を問う声があがっており、こうした観点も今後の論点となりそうだ。平均乖離率超の品目については、不採算品再算定の対象から除外することに診療・支払各側が一致した。

不採算品再算定は23年度から3年連続で臨時・特例的に実施されている状況にある。診療側の江澤委員は、「不採算品再算定の対象となっても供給状況が悪化している品目もあり、その原因は、原材料費の高騰のみならず、他社製品の動向や、製造上のトラブルなど、医薬品の供給不安には様々な要素がある。採算面だけで供給不安が生じているわけではないということ」と指摘。「不採算品再算定の対象については、臨床現場のニーズも踏まえた上で、供給改善に効果的に資する範囲で検討するのが良いと考えている」と述べた。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「これまで何度も適用している中で、不採算品再算定を行った品目の供給量は実際に増加しているのか」と疑問を投げかけた。日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は23年度と24年度の供給量では医療用医薬品全体で6.7億(+0.4%)、24年度不採算品再算定品目は4.8億の増加(+2.0%)などのデータを示している。鳥潟委員は、「合計ではなく、企業別や品目別のように、もう少し詳細を確認した上で、そのあり方を議論していくべき。今後、再度の業界ヒアリングがあると思うので、詳細なデータが示されることを期待したい」と述べた。

◎平均乖離率超 診療側・江澤委員「対象とする必要性は全くない」

平均乖離率超の品目については、「流通の改善を図る取り組みを継続していくべきであり、再算定の対象とする必要については全くない」(診療側・江澤委員)、「下支えの仕組みが、薬価差益の調整弁になる懸念もある。平均乖離率を超える品目については、対象から除外するということは明確化すべき」(支払側・松本真人委員・健康保険組合連合会理事)と述べた。

不採算品再算定の適用には類似薬に係る全ての企業が要望を提出することが要件となっている。厚労省は撤退を検討する企業などが手上げしないなどの実態があると説明した。診療側の江澤委員は、「撤退予定の企業からの要望は不要とすることについて、異論ない。また、撤退するのであれば、不採算品採再算定についても適用する必要はないのではないかと思っている」と述べた。後発品一成分に対する供給者数が多い状況であるため、全社手上げのハードルも高くなることが指摘されているが、「企業の要望は一定以上のシェアを要件とすることは、検討する必要がある」との考えを示した。業界代表の藤原尚也専門委員(中外製薬執行役員渉外調査担当)は、「安定供給の中心を担う品目が、不採算品再算定を希望した場合には(全社手上げのルールを)適用しないなど、柔軟な対応をご検討いただきたい」と述べた。

◎基礎的医薬品 業界は対象拡大を要望 診療側・江澤委員「3年連続不採算再算定の影響検討を」

基礎的医薬品をめぐっては、対象範囲が論点となった。24年度、25年度に不採算品再算定を受けた品目や安定確保医薬品Aを新たに対象とすることを議題に上げた。「安定確保医薬品Aの追加など、必要と考えられるものを基礎的医薬品とすることに異論はない。安定確保医薬品Aのみならず、Bについても、検討の余地がある」(診療側・森委員)、「安定確保医薬品の見直し等を踏まえまして、対象品目を検討することに異論はない」(支払側・松本委員)など、見直しを認める声が出た。一方、診療側の江澤委員は、「23年度から25年度の薬価改定にかけて、3回連続で不採算品再算定の範囲を拡大しているところなので、その影響を踏まえた上で検討する必要があろうかと思う」と述べた。

業界代表の藤原専門委員は、「対象範囲の拡大をお願いしたい」と要望。具体的には、「収載後15年未満であっても不採算品再算定が適用された品目や基礎的医薬品の薬理作用類似薬として収載される品目、また、薬機法改正により、重要供給確保医薬品として位置づけられる安定確保医薬品カテゴリーBに該当する成分などについても対象としていただくよう、ご検討をお願い申し上げる」と述べた。

◎最低薬価 新剤型追加に慎重論 支払側・松本委員「物価上昇で自動的に上がらない」とクギ

最低薬価をめぐっては、製薬業界が新たな区分の設定を要望する剤形としてエキス剤(漢方製剤)、外用塗布剤をあげており、点眼点耳点鼻液について、点眼剤の最低薬価への組入れ・区分新設が要望されている状況にある。

ただ、診療側の江澤委員は、「現在は対象となっていない剤型について要望があることは理解したが、規制を勘案し、要請について詳細な検討が必要かと思っている」と述べた。支払側の松本委員も「剤型の追加も含めて、データに基づいて、慎重に判断すべき」と診療・支払各側から慎重論があがった。一方で、診療側の森委員は、「最低薬価は医薬品の安定供給確保のために設けられたものであり、剤型を問わず設定していく方向で対応をお願いできればと思う」と要望した。

最低薬価をめぐり、25年度薬価改定では、全剤形で一律約3%引き上げられた。支払側の松本委員は、「25年度の引き上げの際にも、物価上昇等に連動して自動的に引き上げるものではないと指摘させていただいたが、その認識は今も変わっていない」とクギを刺した。ただ、業界代表の藤原専門委員は、「物価上昇等の影響につきましては、すべての医薬品に多大なる影響を及ぼしている。国民の健康を支える医薬品を継続的に届けるためにも、ぜひ物価上昇分等を適切に薬価へ反映する仕組みの構築について、ご検討をお願いしたい」と要望した。



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