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中医協合同部会 条件期限付き再生医療等製品の算定方法見直し 有効性「推定」段階の補正加算に否定的

公開日時 2025/10/16 06:00
中医協は10月15日、合同部会を開き、2026年度薬価制度改革に向けて、条件期限付き再生医療等製品の診療報酬上の算定方法の見直しに向けた議論を開始した。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「これまでの事例の経験を踏まえると、通常の承認と同じということは、あり得ない」と述べるなど、条件期限付き再生医療等製品は薬事承認で有効性の確認が「推定」であることを踏まえた制度改革を求める声があがった。特に、“仮免”時点で有用性系加算をはじめとした補正加算による評価を行うことに否定的な意見があがった。一方で、本承認を受けた後に、改めて補正加算などで評価する必要性も指摘された。次回業界ヒアリングを行い、意見を踏まえて対応の取りまとめに向けた議論を進める方針。

◎2製品は本承認得られず薬価削除 診療側・江澤委員「“逃げたもの勝ち”では制度の存在意義問われる

条件期限付き再生医療等製品をめぐっては昨年、保険適用を認めてきたが、コラテジェン筋注用4mg(アンジェス)とハートシート(テルモ)の2製品が本承認を得られずに薬価基準、材料価格基準から削除された。これを議論した中医協総会で、26年度薬価制度改革に向けて再生医療等製品の保険適用のあり方を検討する必要性が指摘されていた。

合同部会に先立って行われた総会では、条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用の妥当性が論点にあげられた。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「ひとまず保険診療として評価した後、結局は十分な根拠が認められずに保険診療から除外される一方、それまでの利益は確保されるといった、いわゆる“逃げた者勝ち”といったことが繰り返されれば、この制度そのものの存在意義が問われることにもなりかねない」と指摘。今後保険適用について議論がなされる予定の「エレビジスの議論なども踏まえつつ、別途しっかりとご説明いただきたい」と、求めた。

◎診療側・江澤委員 補正加算「有効性の確認が推定である段階で、確定的な評価ができない」

この日に開いた費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会では、条件期限付き再生医療等製品をめぐり、収載時の薬価算定や収載後の価格調整、本承認後の取り扱いを議論の俎上にあげた。

現行制度では、条件期限付き再生医療等製品も、通常の承認と同様に薬価算定又は材料価格算定が行われてきた。保険収載された4製品はすべて原価計算方式で算定されており、補正加算は有用性系加算を取得した製品はなく、希少疾病用医薬品として指定されたものを評価する市場性加算(I)、先駆的医薬品として指定されたものを評価する先駆加算等により補正加算を取得した品目がある。

事務局は、「薬事承認における有効性の確認が推定であることを踏まえ」た議論を求めた。薬価、材料価格算定時の原価計算における一般管理・販売費、営業利益率、流通経費の係数や臨床試験成績の評価で判断される有用性系加算(画期性加算、有用性加算、改良加算の適用)などのあり方を議論した。

診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「保険適用された時点では臨床データは限定的で、有効性の確認も推定にとどまっていることや、これまでの事例の経験を踏まえると、通常の承認と同じということは、あり得ない」と指摘。有用性系加算以外の補正加算については、「希少疾病の治療法を開発するためには、インセンティブが必要なことも理解しているが、やはり有効性の確認が推定である段階で、確定的な評価ができないと考えている」と指摘した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「有効性の確認が推定であるということを踏まえて、価格を設定すべき。各種加算についても同様で、本承認前の仮免許であるということを踏まえて慎重に検討すべきだ」と指摘。「各種加算については、改めて承認された際に、適切な再評価を行うことも考えられる」とも述べた。

◎支払側・松本委員「少なくとも有用性加算がつくことはあり得ない」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「条件および期限付き承認の場合、有効性が推定ということが前提で、少なくとも有用性加算がつくことはあり得ない」と指摘。「本承認までデータ収集を続けるために、途中で製造販売、流通ができなくなるという事態は避ける必要があるかもしれないが、開発途上で有効性が不確実な段階で、利益をどこまで補償すべきかは原価の開示度との関係も踏まえて、議論の余地があるように思う」と述べた。

このほか、薬価収載・新規保険収載時の外国平均価格調整の適用については、診療側の江澤委員は、「市場での評価が形成されるのに十分な期間が経過しているとは言えない場合も多いかと思うので、適用のあり方は、慎重に検討する必要がある」との考えを示した。

◎市場拡大再算定や費用対効果評価 通常承認と同様に異論出ず

薬価収載、材料価格収載後の価格調整としての市場拡大再算定や費用対効果評価の適用については、通常の承認を受けた再生医療等製品と同様の取り扱いとすることに異論は出なかった。診療側の江澤委員は、「再生医療等製品は、通常とは異なり高額なコストがかかることは承知しているが、これまでもかなり高額な価格設定とされていることや、医療保険財政に大きな影響を与える可能性があることも踏まえると、異論はなく、むしろ費用対効果を適用する価格の範囲を拡大することも、検討の余地があるのではないか」と述べた。支払側の松本委員も、「市場拡大再算定と費用対効果評価、いずれも本承認と別の取り扱いをする必然性は特段ない。これまで通り通常ルールのもとで運用すべき」と述べた。

◎本承認時の補正加算検討は理解も「企業都合での申請取下げなどの対応検討を」

いわゆる本承認を受けた後に補正加算によって評価することについては、診療側の江澤委員が「初回承認時に明らかではなかった有効性が客観的に示された場合であれば、イノベーションの評価という意味で補正加算を検討することに異論はない」と述べるなど、理解を示す声があがった。ただ、支払側の松本委員は、「保険適用の段階で本承認と差をつけた部分について、改めて評価を検討することが適当だと考えるが、例えば、仮に小児適応を取得できなかったといった、当初と薬事の判断が異なる場合には、その部分の補正加算は控除するのが当然だ」と指摘した。

一方で、診療側の江澤委員は「コラテジェンのように、本承認を得るための再申請を行う前に企業の都合で申請を取り下げ、その結果、市販後調査の評価もなされないといった事態が生じた場合の扱いについても、公的医療保険の観点から、何らかの検討が必要ではないか」とクギを刺した。

業界代表の越後園子専門委員(第一三共渉外部渉外部長)は、「条件及び期限付き承認制度については、新しい治療の選択肢を患者さんに迅速に届けるという趣旨の制度であり、該当企業においては、本承認を目指し、有効性、安全性の確立に向けて、鋭意取り組んでいると理解している。次回、意見聴取の機会をいただいておりますので、本日頂戴しましたご意見ご指摘を業界内でしっかり共有する」と述べた。



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