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官民協議会WG議論の整理を大筋了承 特許期間中の薬価維持へ 費用対や再算定は両論”一定の合理性”も

公開日時 2025/10/29 04:52
厚労省の創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループは10月28日、2026年度薬価制度改革を視野に入れた「議論の整理」を大筋で了承した。整理案では、「革新的新薬について特許期間中は薬価を維持し、研究開発コストを回収しやすくして次のイノベーションへの再投資につなげるということを基本的考え方」と方針を示した。そのうえで、費用対効果評価や市場拡大再算定については、構成員である業界団体と有識者、関係省庁との間で意見がまとまらず、両論を併記した。製薬業界の意見に加え、「一定の合理性がある」との意見も明記した。厚労省は、この日の検討会で出た意見を踏まえた修正案を安中医薬産業振興・医療情報企画課長が近く中医協に報告する予定。

◎日本で比較的優位な分野・領域を見極め「官民で集中投資を」

議論の整理では、ドラッグ・ラグ/ロスや安定供給などの課題への対応に向けて、「製薬企業から見た日本市場の魅力度の向上を含め、成長産業・基幹産業として相応しい仕組みの整備が必要であり、官民協議会を通じて、中長期的視点に立った国家戦略を早期に策定し実現していくことが必要」とした。その際、「日本が比較優位を持つ分野や領域を見極め、経済安全保障の観点でも重要となる領域や高度な製造拠点の整備等も踏まえつつ、官民で集中投資をすること」も明記している。

◎薬価の“基本的考え方”示す 特許期間中薬価を維持で再投資につなげる

薬価についての“基本的考え方”を示した。「将来的にも成長が見込まれる市場であることや、医薬品上市後のリターン面の予見可能性及びイノベーションへの評価が重要」と指摘。「革新的新薬について特許期間中は薬価を維持し、研究開発コストを回収しやすくして次のイノベーションへの再投資につなげるということを基本的考え方としていくべき」とした。その上で、「後発品上市後は、後発品企業に安定供給等の役割を譲った上で、先発品は原則として市場から撤退することが、目指すべき産業構造」とした。

そのうえで、革新的な医薬品の上市時の薬価については、「世界に先駆けて日本に上市する医薬品に関し、原価計算方式において算定される医薬品については、原価の内訳の開示状況により薬価が影響を受けている」としたうえで、「イノベーションの評価や、収載後に明らかになった価値の評価も含め、再生医療等製品など多様な医薬品の価値を評価する手法の開発と適用を検討していくべき」などの個別意見があがったことを紹介した。

◎費用対効果評価、市場拡大再算定は両論併記 業界は費用対効果評価拡大の反対鮮明に

革新的医薬品の特許期間中の薬価としては、費用対効果評価や市場拡大再算定に言及したが、意見が取りまとまらず、両論併記となった。

費用対効果評価制度については、「客観的な検証を行うとともにその結果も踏まえた適切な評価手法を確立すべきであり、客観的な検証なく更なる活用や拡大をすべきではない」との業界の意見を明記。一方で、「一般論として、薬価に関し、経済性を考慮要素に含めることは科学的であり一定の合理性があると考えられる。また、費用対効果が高い医薬品の単価が低く維持されてしまうこと、費用対効果の低い医薬品の単価が高く維持されてしまうことは同様に課題。費用対効果評価が、経済価値の効率的な創出(機会損失の回避)に使われるよう、活用方策を検討すべき」との意見も示した。

事務局の医薬産業振興・ 医療情報企画課によると、この日も産業界側からは、「費用対効果評価制度は引下げツールとして使われており、ドラッグ・ラグ/ロスを悪化させる可能性がある。費用対効果評価制度を拡大すべきではない。客観的検証をきちんと行うべきだ」との声があがったという。

市場拡大再算定制度についても、「予見可能性の確保やイノベーションの適切な評価の観点から、有用な効能追加を行った場合の補正加算による引下げ率緩和や、特例拡大再算定の廃止、類似品(共連れルール)の適用除外、規模の経済が働かない再生医療等製品の適用除外、希少疾病や小児などの効能追加の対象除外などを検討すべき」との業界の意見を記載した。一方で、「前提条件の変化、当初予想よりもかなり早期に投資回収が進むという観点では、市場拡大再算定の考え方には一定の合理性があると考えられる。ただ、この際の類似品の取扱いについては、薬価の予見性確保の観点からなお検討の余地がある」との意見も明記した。

◎中間年改定「27年実施の枠組みを本年中に議論で予見可能性を」

診療報酬改定のない年の薬価改定、いわゆる中間年改定についても「インフレ等の経済動向への配慮や市販後エビデンスに基づく一定の引上げも考慮される仕組みへ見直すべき」、「診療報酬改定のない年の薬価改定は廃止すべき」との業界の意見を示した。そのうえで、「2027年の診療報酬改定のない年の薬価改定の枠組みについて、本年中に議論し予見可能性を高めるべき」との意見も記載した。

◎ジェネリックは安定供給行う企業が評価される政策を基本に AGや共同開発の見直しを

“長期収載品に依存するビジネスモデル”が指摘される中で脱却に向けて、「長期収載品の段階的な薬価引下げルール(G1/G2)や選定療養等の政策効果を分析し、更なる施策の必要性等を検討することが必要」とした。

ジェネリックについては、「品質が確保された製品を安定的に市場に供給している後発品企業が評価され、結果的に優位となるような政策を基本とすべき」と明記した。そのために、「後発品が市場で適正に競争できるよう、いわゆるオーソライズド・ジェネリック(AG)について、関連する薬価・薬事ルールに関する議論が必要」、「結果的に銘柄数の増加につながる後発品の安易な共同開発について、抑制する政策を検討すべき」と記載した。

このほか、バイオシミラーについても、「先行バイオ医薬品の選定療養やバイオAGに係るルールの整備についても検討していくことが必要」との意見を盛り込んだ。

◎米国の最恵国待遇で「ラグ/ロスが拡大しないよう、魅力度が劣らない市場に」

この日は米国の最恵国待遇(MFN)価格政策をめぐる意見が出た。MFNをめぐり、議論の整理案には「ドラッグ・ラグ/ロスが拡大しないよう、他国と比して魅力度が劣らない市場であることが必要である」と記載している。この日は、「日本が参照国になることで、ドラッグ・ラグ/ロスが進む可能性があることを念頭に置いたスピード感をもっと対応が必要だ」との意見が出たという。

官民協議会WGは、日本製薬工業協会(製薬協)や米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、行政から内閣府健康・医療戦略推進事務局参事官、厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長、経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課長、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課長、有識者が構成員で、3回にわたり議論を重ねてきた。

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