日薬・岩月会長 「経費圧縮しないと薬局やっていけない」 地域の医薬品の実態把握、品目絞り込みに意欲
公開日時 2025/11/06 04:51

日本薬剤師会の岩月進会長は11月5日、日本医薬品卸売業連合会(卸連)のセミナーで講演し、地域で流通している医薬品の実態を把握し、地域の薬剤師会や薬局間で情報共有する「地域医薬品集」の作成に意欲を示した。「地域にある医薬品の実態をつかみ、地域には薬効ごとに(よく使用されている)上位3~4種類あれば良いのではないか」と述べ、地域で使用する医薬品を絞り込む必要性を指摘した。この背景には、医療資源が限られているほか、人口がすでに減少している地域もあるとの現状認識があり、「物に関する経費を圧縮していかなければ薬局はやっていけない」とし、「無駄な在庫がなくなる」ことの経営メリットを強調した。
岩月会長は、「地域で流動している医薬品に関する情報を薬剤師会が主体的にグリップしないといけない。例えば地域の開業医は、他の開業医がどのような薬を出しているかわからない」とも述べた。医薬品卸に対しては、地域で使用される医薬品が絞り込まれることによって、「仕事が楽になるではないか」、「無駄な配送がなくなる」といったメリットがあるとの認識を示し、医薬品の絞り込みを一緒に行うことを呼び掛けた。
日薬は今年7月に、「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」をまとめている。このリストには、「地域医薬品集の作成」が盛り込まれており、収集する情報の範囲は地域のニーズや実現可能性に応じて検討するとした上で、▽地域の薬局が取り扱う医薬品の情報共有、▽可能であれば在庫情報も含めた情報共有――などを行う方向性が示されている。
◎厚労省産情課・安中課長 中抜け返品含む不適切返品 事例の蓄積を待って「注意喚起」も
同セミナーに登壇した厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安中健課長は、“中抜け返品”を含む不適切な返品に対する行政の対応について、「何らかの注意喚起をすることは、事例の蓄積を待って、十分に考え得る話だと思う」と述べた。同セミナーの質疑応答で、会場からの質問に答える形で所見を述べたもの。
卸連が構築中の、医薬品流通の品質向上を目的とした「中抜け等返品データベース(DB)」のトライアル版を今年8月から2カ月運用したところ、不適切な返品が70件にのぼり、このうち約半数が納品した医薬品の一部を使用し、残りを返品する“中抜け返品”だったことが確認された
(記事はこちら)。卸連は同DBの早期の全面運用を目指している。
安中課長は、「卸連の先駆的な取組みにより、実態把握に努めていただいているのは非常にありがたい。(中抜け返品は)エピソードでは聞くが、全体の数字が見えてくることはこれまでなかった」と卸連の取組みに謝意を示した。そして、実態が把握できれば対策を講じることも可能になるとし、「(同DB本格実施後の)データを見て、どういうことが現場に対して実効性のある取組みになるか、意見を聞きながら進めたい」と述べた。