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中医協総会 実調結果に各側が見解 診療側「経営悪化は深刻」 支払側「費用構造に差、メリハリ対応を」

公開日時 2025/12/04 04:52
中医協総会は12月3日、2024年度医療経済実態調査の結果に関する見解が診療・支払各側から示された。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、実調の結果から「物価上昇は継続しており、2025年度はさらに経営が悪化し、赤字の施設が増加する可能性が高いと考えている」と強調。「病院・診療所とともに経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と訴えた。これに対し支払側の松本真人委員(健保連理事)は、「病院と診療所、薬局では損益差額や費用構造に差があるだけではなく、流動比率、長期借入金、設備投資の状況も異なっていた」と実調の結果を分析。「医療機関機能の分化連携を通じた経営の健全化を念頭に、メリハリのある対応が不可欠」との見解を表明した。

厚労省が11月26日の中医協に報告した「24年度医療経済実態調査」では、一般病院の平均損益差額率はマイナス7.3%で、赤字割合は67.6%と前年度に続き約7割を占める。一方で開設者別の平均損益差額率は医療法人のマイナス1.0%から公立のマイナス18.5%までバラツキがあった。また、医業収入は増加したものの、近年に物価高や人件費高騰の影響から、給食用材料費、診療材料費・医療消耗器具備品費、人材委託費などの増加傾向が顕著になっている。このほか、一般診療所(医療法人)の損益率は平均値で2023年度の8.3%から24年度は4.8%に、中央値では 5.6%から2.7%に大幅に悪化していることも分かった。

◎診療側・江澤委員「病院はすでに瀕死の状態、診療所は逆風が吹けば経営が立ち行かない」

「病院はすでに瀕死の状態で、ある日突然倒産するということが全国で起きている。診療所も約4割が赤字で、規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば経営が立ち行かなくなる。すでに医療機関の倒産が過去最多のペースとなり、継承にも支障を来しており、閉院が大幅に増え、地域医療の崩壊を招きかねない」-。診療側の江澤委員は病院・診療所の経営実態について、こう訴え、「物価賃金が上昇する中でも、病院、診療所が存続できるよう緊急かつ十分な対応が求められる」と主張した。

◎診療側・森委員「更なる賃上げ、物価高に対応することは困難」

保険薬局の損益状況について診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「このままではさらなる賃上げ、物価高に対応することは困難のみならず、地域医療における医薬品供給に支障を来すことになる」と指摘。日本薬剤師会が行った調査でも、「一年前よりも経営が悪化した薬局が8割。一年後どうなるかを聞いたら9割の薬局でさらに厳しくなるという調査結果が出ている」と説明し、「何よりも薬局が経営を維持できること、賃上げ、物価高騰に対応できるようにお願いをしたい」と強調した。

◎支払側・松本委員「医療機関機能の分化連携を通じた経営健全化、メリハリ対応は不可欠」

支払側の松本委員は、実調結果の分析データを示しながら、「病院と診療所、薬局では損益差額や費用構造に差があるだけではなく、流動比率、長期借入金、設備投資の状況も異なっていた」と指摘。さらに、「病院においては、機能による医療利益率や病床規模による費用構造の違いが確認されている」と述べ、「26年度診療報酬改定では、こうした経営状況の差や補助金による病床削減による病床利用率の改善効果、医療機関機能の分化連携を通じた経営の健全化を念頭に、メリハリのある対応は不可欠」との見解を表明した。

この日の中医協総会で各側から医療経済実態調査に対する見解が示されたことを受け、小塩隆士会長は、「後日1号側委員、2号側委員から次期改定に対する意見を提出していただきたいと思う。各号の委員は準備をお願いしたい」と要請した。次期診療報酬改定をめぐる議論は、年末の26年度政府予算案の編成作業とも相まって、いよいよ佳境を向かえる。
 
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