中医協薬価専門部会が12月3日に開かれ、令和8年度薬価改定について議論を行った。本誌は、各側委員の質疑の内容を議事要旨として公開する。
(事務局説明 略)
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。ただいまの説明に関してご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。江澤委員お願いします。
江澤委員:それでは資料「薬―1」4ページ(保険外での使用が一定数見込まれる品目に対する市場拡大再算定)の保険外診療の拡大についてコメントいたします。確かに市場拡大再算定は、公的医療保険制度において市場が大幅に拡大した場合、適切に薬剤費を配分するという役割を担っていることからすれば、保険外で使用される品目について除外するということも一定の合理性があると考えております。
しかし、公的医療保険制度で扱う医薬品であれば、たとえそれが自由診療で使われる場合であっても、適正使用がなされるようしっかりとした対応を行っていただくことが大前提であります。企業の対応としては当然でありますが、国としても適正使用に向けた環境整備をいただく必要があると考えております。
事務局におかれましては、保険外での使用が一定数見込まれる品目をどのように考えており、どう決定するのか考えをお聞かせいただきたいと思います。こちらは質問でございます。
続きまして、資料「薬―2」について、今回示された対応の方向性案につきましては、概ねこれまでの議論を踏まえた内容になっていると受け止めておりますが、いくつかの点についてコメントさせていただきます。
資料「薬―2」8ページの「③標準的治療法に関する薬価改定時の加算の評価」についてです。これは薬価収載後にガイドラインで標準療法となった場合は、薬価改定時に評価するという内容であります。しかし、以前主張しましたとおり、標準的な治療と位置付けられれば当然市場も拡大するはずですので、その点も踏まえた評価方法となるよう、引き続きのご検討をお願いいたします。
続きまして、資料「薬―2」13ページの市場拡大再算定の制度の名称について、「国民負担軽減価格調整」(仮称)という案が示されておりますけれども、対外的に見ましても、公的医療保険制度を健全に持続するための価格調整の意味合いの方が馴染むと思っております。
次に資料「薬―2」15ページの長期収載品の薬価の更なる適正化についてです。今回、Z2 や G2、Cの廃止が提案されておりますが、こちらも以前申し上げたとおり、必要な医薬品が安定的に供給されることを大前提に進めるべきであります。そうした意味で、今回は非常に大きな見直しが行われますので、現行ルールの廃止によって実際にどのような影響が生じるのか、もう少し詳しく分かるような資料の提出を事務局にお願いしたいと思っております。
続いて資料「薬―2」18ページの AG、バイオAG の取扱いについてです。対応の方向性として、 AGやバイオAGの価格については、先発品や先行品と同額とすることが提案されております。この提案はAGやバイオAG ではなく、後発医薬品やバイオシミラーを促進させることを考慮したものと認識しておりますが、特許切れの医薬品が先発品や先行品と同価格であるということは、医療保険の持続性や患者さんのご負担も考えると簡単に納得できるものではないと考えます。先発品、先行品と同価格とすることの意義やメリット、デメリットなどを踏まえた上で、引き続きの検討が必要と考えております。私からは以上でございます。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。1点目のところでご質問がございましたので、事務局いかがでしょうか。
事務局:ご質問いただきました自由診療で、保険外で使われている品目を選定する方法でございますが、我々といたしましては、薬価調査の大体の数字で、秋の終わりぐらいに市場拡大再算定の対象となる品目を選定いたします。
最終的には薬価調査の結果でございますので、数字はその後でございますが、その時に企業側の方に対象となり得るとお伝えいたしますので、その時に企業側の方が自社のデータをお持ちだと思いますから、それに該当しないというようなことでしたら、それで理由をつけて資料を提出されるということになります。
それをもって我々の方でできる限り保険診療で使われている数量のデータを集めまして、その数字の確かさを確認して、それが確かだろうということになれば除外をするというようなことで、基本的には企業からの申請に基づいて、その数字を我々の方が精査をするという形で対象品目を選定していこうと考えております。
江澤委員:これまでも自由診療で必ずしも適切かどうか疑義があるような、自由診療での使用がなされているわけですけれども、ちなみにそういったものについてはタイムリーな把握は事務局で可能でしょうか。
事務局:薬剤管理官でございます。タイムリーにというのはやはり難しいのですが、NDBも含めてデータがありますので、それを後から取ってくるということになりますので、少し時間はかかりますが、我々としては確認できる方法で企業からの指標に対して不足するデータを我々も集めて検証するというようにしております。
江澤委員:適正使用も含めて、引き続き事務局においておかれましては、よろしくお願いしたいと思います。
城山部会長:よろしいでしょうか。他いかがでしょうか。森委員お願いします。
森委員:はい、ありがとうございます。お示しいただいた対応の方向性についていくつか意見を述べさせていただきたいと思います。まず、資料「薬―1」 4ページ目(保険外診療の拡大への対応)についてです。いま意見がありましたけれども、NDB のデータでの使用状況を把握することに異論がありません。
ただ、保険外でのことですけども、適正使用というのはやはり前提だというふうに思っています。その上でちょっと心配しているのが、保険外で使用されることによって、本来保険診療で使用する人への医薬品の供給が不足するようなことがあってはいけないというふうに思いますので、そこはしっかりと気をつけていただきたいというふうに考えております。
次に資料「薬―2」5ページ目(イノベーションの推進に向けた長期収載品の薬価の更なる適正化)についてです。原価計算方式における薬価の原価の開示度に関して、これは何回もここで議論されていますけども、まず業界の意見陳述の中でも、医薬品のサプライチェーンの複雑化等により、申請企業の努力だけではどうにもならないという意見があります。
引き続き業界団体における、まずは開示度向上に向けた取り組みというのは継続をしていただきたいというふうに思っています。その上で、同一企業内での移転価格の開示度がどうなっているのか、独立企業間価格の場合の開示度の状況等を踏まえた上で、議論を今後進めていくべきだというふうに考えております。
次に資料「薬―2」8ページ目の「③標準的治療法に関する薬価改定時の加算の評価」についてです。薬価収載後、国内の診療ガイドラインにおいて標準治療となるということは、リアルワールドでの評価がなされたものと考えます。薬価改定時に評価することに賛同いたします。
次に、資料「薬―2」13ページ目(市場拡大再算定)についてです。企業にとっては予見性が高まり、希少疾患や小児のさらなる開発促進につながることは重要で、希少疾患や小児の効能追加における市場拡大再算定については、使用実態が著しく変化した既収載品には該当しないということを明確することに賛成いたします。
次に資料「薬―2」15ページ目(イノベーションの推進に向けた長期収載品の薬価の更なる適正化)についてです。G1・G2ルール策定時と後発品使用に関する環境の変化や特許期間満了後は市場を後発品に明け渡していくという観点から異論はありませんが、安定供給への配慮とイノベーションの評価とのセットで行うことが必要であるというふうに考えております。
次に資料「薬―2」21ページ目の「②最低薬価」についてです。最低薬価の医薬品は、物価や人件費の高騰、配送コストなどの影響を大きく受けるため、不採算となりやすく、医療現場に逆ザヤとして影響が出ることが考えられます。最低薬価の引き上げは必要と考えます。
また、「③不採算品再算定」については対応案に異論はありませんが、不採算品再算定を受けた品目は確実に増産となることが必要だと考えます。
次に資料「薬―2」29ページ目(その他の課題(続き))についてです。医薬品の製造のみならず、卸、薬局、医療機関においても、物価高や流通コスト上昇などの影響を受けています。また、調整幅を設定した当時と比較して乖離率は大幅に縮小しています。このような状況に鑑みると、安定供給の確保のための調整幅の重要性は増しており、医薬品を取り巻く状況の変化を踏まえた検討が必要だと考えます。
また、包装販売単位についてです。包装販売単位の適正化についてですが、処方実態と合わない販売包装単位の高額医薬品は、医療現場で特に困っています。関係団体による対応状況を注視するだけではなく、販売包装単位をどのように適正化していくのか、次期薬価制度改革の議論では具体的な検討できるようにお願いいたします。
今後、医薬品の新規収載において、明らかに処方実態と合わず、販売包装単位が原因で残薬が発生する懸念があるものや、水剤等品質の点からボトル単位で投与すべきもの等については、方向性が出る前であっても、販売包装単位の薬価収載など柔軟な対応をお願いします。
この柔軟な対応については、今回の対応の中で明記をお願いしたいというふうに考えております。また、今回の対応の方向性に異論はありませんが、先発医薬品と後発医薬品の薬価の逆転についても発言させていただきます。
改定時薬価は市場実勢価に基づくため、これまでも先発医薬品と後発医薬品で薬価が逆転するものがありましたが、令和7年4月の薬価改定で最低薬価の引き上げ、不採算品再算定の幅広い対応が行われ、薬価の逆転現象が発生し、後発医薬品の使用促進や選定療養の長期収載品の関係など、医療現場では患者さんへの説明などを含め大きな混乱がありました。
先発医薬品の薬価を超えた後発品から価格の低い後発医薬品への切替えも増加し、安定供給にも影響が出ています。次回の薬価改定では、後発医薬品に関する企業指標の活用、長期収載品のさらなる適正化により、薬価が逆転する医薬品がさらに増加していく可能性もあります。
薬価の逆転は患者さんのみならず、薬局、医療機関での後発医薬品の使用率やカットオフ値の計算にも影響します。薬価が逆転しても、医療現場への混乱などが発生しないような制度が必要です。来年 4月の薬価改定に合わせた対応をお願いしたいというふうに考えています。私からは以上です。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。他いかがでしょうか。松本委員お願いします。
松本委員:はい、ありがとうございます。それではまず、資料「薬―1」の保険外での使用が一定数見込まれる品目の取り扱いについてですが、市場拡大再算定の特例が医療保険財政の持続可能性を確保するために導入された趣旨を踏まえますと、保険外の使用分を含めて特例再算定を適用することに一定の難しさがあることは理解しております。
ただ、薬価収載された医薬品は保険診療の中で使用することがそもそも前提であり、適応外使用の場合でもレセプト審査で認められるケースや保険外併用療養費制度による対応もあります。こうした枠組みの外で完全な自由診療として使用することは、患者の安全に対する懸念があり、さらに保険診療で使用する医薬品の安定供給に支障をきたす可能性も否定できません。
この点は他の委員からもご意見があった通りかと思っています。従いまして、資料「薬―1」4ページの対応の方向性に示されているとおり、製造販売業者による適正使用の推進は当然であり、効能追加等の有無にかかわらずNDB で販売額を把握し、保険診療での販売額が特例の基準に該当した場合には、速やかに再算定で薬価を引き下げるべきだというふうに考えます。
次に、資料「薬―2」に事務局から示されている対応の方向性については、今後業界ヒアリングも踏まえまして、最終的に判断をしたいと思いますが、本日は特に課題となっている項目に絞ってコメントいたします。
まず資料「薬―2」5ページの原価計算方式についてですが、開示度を高めるためにはあらゆる手を尽くし、それでも開示度が低い場合には別の切り口で医薬品の価値を評価することも徹底すべきだと考えております。
次に資料「薬―2」10ページの新薬創出等加算については、特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲る考え方で、後発品の薬価収載と同時に累積額は控除することが本来のあるべき姿であるということは改めて指摘させていただきます。
続きまして資料「薬―2」21ページ(薬価の下支え制度の充実)でございます。薬価の下支え制度ですが、このページには三つの仕組みが示されており、いずれも安定供給のために必要なことは理解しておりますが、そもそも市場取引の中で医薬品の価値に見合った実勢価格が形成されることが重要であり、財源に限りがあることを踏まえますと、優先順位は慎重に判断すべきだと改めて強調させていただきます。
最後に資料「薬―2」29ページの「(2)医薬品流通に関する課題」にあります調整幅についてですが、今回も議論が深まらず、引き続きの課題ということですが、これまでも申し上げてきているとおり、カテゴリー別や投与経路別、剤形別、高額薬剤かどうかといった切り口で調整幅を変える余地は十分にあると考えておりますので、事務局には早急な議論の準備をお願いしたいというふうに思います。私からは以上でございます。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。その他いかがでしょうか。永井委員お願いします。
永井委員:はい、ありがとうございます。国民負担の軽減と創薬イノベーションの両立に加えて、ドラッグ・ラグ/ロスの解消、医薬品の安定供給確保を図ることが重要であり、その観点から適切に見直すことが必要と考えております。
医薬品流通に関する課題である調整幅のあり方につきましては、安定的な医薬品の流通に必要な経費がどれほどなのか、イノベーションの適切な評価として、革新的な新薬の薬価の在り方についても適切な対応に向けて継続した検討が必要と考えております。以上です。
城山部会長:はい、ありがとうございます。それではオンラインで鳥潟委員お願いします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。まず資料「薬―2」の令和 8年度薬価改定につきまして、いくつか意見を述べさせていただきたいと思います。
オーソライズ・ジェネリック(AG)やバイオAGについて、先発品の薬価と同額とする方針で異論はありません。AGか否かを判断するために、薬価基準収載希望書に記載を求めることは必要なことだと思います。しかしながら、客観的な判断を可能とできるよう、今後も継続的に検討いただきたいと考えております。
なお、AG、バイオAGにつきましては、長期収載品と同様に扱っていくという方針で受け止めております。このため、長期収載品の選定療養制度や各種加算等の後発品使用状況の要件においても整理し直す必要があると考えております。
不採算品再算定について、該当類似薬のシェアが一定割合以上の場合に対象とする点につきまして、少数多品目構造を解消し、安定供給を確保する方針を後押しする観点から重要であると考えております。加えまして、前回の議論で他の委員の方々からもご指摘がありましたが、供給改善に寄与するもののみを対象とするべきであり、市場から撤退する予定の品目については対象外とする必要があるとともに、例えば数量シェアが極端に低い品目について、今後安定供給に寄与するほどの供給増が見込まれないと想定されるため、対象外とすることもあり得るのではないかと考えております。以上です。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。他いかがでしょうか。専門委員の方から何かございますか。藤原専門委員お願いします。
藤原専門員:発言の機会をいただきましてありがとうございます。次回、業界の意見聴取の機会をいただいておりますので、当日は業界代表より各論点に対する意見を述べさせていただきたいと思います。
本日は専門委員として3点コメントさせていただきたいと思います。まず、資料「薬―2」13ページの「①市場拡大再算定の特例の見直し」についてです。特例拡大再算定につきましては、業界としてはかねてより廃止を要望してきたところでございますけれども、今回、国民皆保険の維持のための対応という趣旨を明確化するため、制度の名称を「国民負担軽減価格調整」に変更することが提案をされております。
これは前提条件に大幅な変更があった際に薬価を再算定するという市場拡大再算定の本来の趣旨からは大きく変わるものであり、単に名称を変えるということではないというふうに考えております。
国民負担の軽減は薬価だけで行うものでもなく、その方法については十分に時間をかけて丁寧に議論を行う必要があると考えます。
次に、同じスライドの「③有用な効能追加に対する引き下げ率の緩和」についてです。前回の薬価専門部会でも申し上げましたけれども、収載時であれば補正加算の対象となるような有用性が高い効能を追加した場合には、追加した効能効果の価値を考慮し、再算定の引き下げ率を緩和いただきたいと考えております。
その際、改定時加算との違いを明確にするために、名称については薬価収載後の臨床的有用性の評価と変更することも検討に値するのではないかというふうに考えております。
最後に資料「薬―2」14ページの「⑥市場拡大再算定又は市場拡大再算定の特例の類似品の取り扱い」についてです。これまでの薬価専門部会、そして本日も委員の方々からご発言をいただいておりますけれども、長期収載品の薬価の適正化とイノベーションの強化はセットで行われる必要があると考えております。それによって初めて創薬イノベーションの推進と国民負担の軽減を両立する仕組みになるというふうに認識しております。
特に予見可能性が極めて低い「共連れ」ルールにつきましては、創薬イノベーションを推進する観点から、廃止に向けた検討を改めてお願いしたいと考えております。私からは以上でございます。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。それでは荒川専門員お願いします。
荒川専門員:発言の機会をいただいてありがとうございます。資料「薬―2」21ページの薬価の下支え制度の充実についての部分につきまして、安定供給の観点から、卸の立場で現状報告させていただきます。
低薬価品の安定供給ということで、これまで限定出荷品というのが安定供給でいろいろ問題になっておりましたけれども、この中でも特に20円未満の限定出荷数量が82.6%ということで、圧倒的に多い傾向にございます。
また、保険薬局における逆ザヤ品目について調べてみたところ、約20円未満の品目が57%と品目数で多く占めております。こういった低薬価帯の品目を取り扱うことにより、薬局または医療機関に損失が生じかねない構造になっています。こういったことを鑑みまして、低薬価品であっても流通不採算が生じることのないように、薬価の下支えをぜひお願いしたいと思います。特に20円未満の薬価引上げは喫緊の課題というふうに認識しております。
また、今年度の上半期の限定出荷、供給停止となっている製品の中には、少なからずもともとの安定確保医薬品、新しく決まりました重要供給確保医薬品が対象として含まれています。今回の医療法改正の趣旨に鑑みまして、重要供給確保医薬品の対象品目につきましても、供給不安が発生することのないように、薬価の下支えをぜひお願いしたいと思います。以上、医薬品を取り扱う現場の状況報告申し上げました。ありがとうございます。
城山部会長:他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。他に意見等もないようでしたら、本件にかかる質疑はこの辺りとして、今後事務局において本日いただいたご意見も踏まえて、ご対応いただくようにお願いをしたいと思います。
本日の議題は以上でございます。次回の日程につきましては、追って事務局よりご連絡させていただきますので、よろしくお願いします。なお、次回はすでにお話ありましたように、関係業界からの意見聴取を行う予定としておりますので、よろしくお願いします。それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。