【資料】2026年度予算編成 厚労・財務大臣折衝事項
公開日時 2025/12/25 04:50
【資料】大臣折衝事項(一部抜粋)
令和7年12月24日
厚生労働省
1.令和8年度社会保障関係費
令和8年度の社会保障関係費については、様々な制度改革・効率化努力を積み重ねることにより、実質的な伸びを高齢化による増加分に抑えた上で、2.の令和8年度診療報酬改定における今後の賃上げ、物価対応分など経済・物価動向等を踏まえた対応を加算することで、令和7年度社会保障関係費と比較し、+7600 億円程度の39 兆600 億円程度とする。
2.診療報酬・薬価等改定
令和8年度診療報酬改定は、当初予算段階から所要の歳出歳入を可能な限り織り込む運営への質的転換を図る観点に立ち、令和7年度補正予算における「医療・介護等支援パッケージ」による措置に引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)及び「「強い経済」を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)に基づき、施設類型ごとの費用構造や経営実態を踏まえて経営の改善や従事者の処遇改善につながる的確な対応を行う。あわせて、現役世代の保険料負担の抑制のため、後発医薬品への置換えの進展を踏まえた対応、適切な在宅医療の推進のための対応、調剤報酬の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化などを行う。
具体的には、以下のとおりとし、その際、令和6年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急的な対応その他の特例的な措置を図ることとする。
(1)診療報酬
+3.09%(令和8年度及び令和9年度の2年度平均。令和8年度+2.41%(国費2348億円程度(令和8年度予算額。以下同じ。))、令和9年度 +3.77%)
(注)令和8年6月施行
※1 うち、賃上げ分 +1.70%(令和8年度及び令和9年度の2年度平均。令和8年度 +1.23%、令和9年度 +2.18%)。
医療現場での生産性向上の取組と併せ、令和8年度及び令和9年度において、それぞれ+3.2%分のベースアップ実現を支援するための措置(看護補助者及び事務職員についてはそれぞれ5.7%)を講じ、施設類型ごとの職員の規模や構成に応じた配分となるよう措置する。
賃上げ分+1.70%のうち+0.28%については、医療機関等の賃上げ余力が足元で乏しくなっている中で、今回の改定から、令和6年度診療報酬改定においてベースアップ評価料の対象とされた職種に加えて、入院基本料等で措置することとされた職種の賃上げについても、後述する賃上げの実効性確保の取組と併せて賃上げ分として措置することとすることも踏まえ、医療機関等における賃上げ余力の回復・確保を図りつつ幅広い医療関係職種での賃上げを確実にすべく、賃上げ対応拡充時の特例的な対応として措置することとし、今後の関係調査等において実績等を検証し、所要の対応を図る。
※2 うち、物価対応分 +0.76%(令和8年度及び令和9年度の2年度平均。令和8年度 +0.55%、令和9年度 +0.97%)。
特に、令和8年度以降の物価上昇への対応としては、+0.62%(令和8年度 +0.41%、令和9年度 +0.82%)を充て、診療報酬に特別な項目を設定することにより対応することとし、それぞれの施設類型ごとの費用関係データに基づき、以下の配分とする。さらに、病院の中でも、その担う医療機能に応じた配分を行う。
病院 +0.49%
医科診療所 +0.10%
歯科診療所 +0.02%
保険薬局 +0.01%
また、我が国経済が新たな「成長型経済」に移行する段階を迎え、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持されるとの認識の下、今回の改定から本格的な物価対応を講じることとする中で、特に、高度機能医療を担う病院(大学病院を含む。)については、医療技術の高度化等の進展の影響を先行的に受けやすい一方で、汎用性が低く、価格競争原理の働きにくい医療機器等を調達する必要性から物価高の影響を受けやすいこと等を踏まえ、+0.14%を物価対応本格導入時の特例的な対応として措置することとする。今後の関係調査において実績等を検証し、所要の対応を図る。
※3 うち、食費・光熱水費分 +0.09%。
入院時の食費基準額の引上げ(40円/食)(患者負担については、原則40円/食、低所得者については所得区分等に応じて20円~30円/食)及び光熱水費基準額の引上げ(60円/日)(患者負担については、原則60円/日、指定難病患者等については据え置き)の措置を講じることとする。
※4 うち、令和6年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分 +0.44%。
配分に当たっては、令和7年度補正予算の効果を減じることのないよう、施設類型ごとのメリハリを維持することとする。
病院 +0.40%
医科診療所 +0.02%
歯科診療所 +0.01%
保険薬局 +0.01%
※5 うち、後発医薬品への置換えの進展を踏まえた処方や調剤に係る評価の適正化、実態を踏まえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化等による効率化 ▲0.15%
※6 うち、※1~5を除く改定分 +0.25%
各科改定率 医科 +0.28%
歯科 +0.31%
調剤 +0.08%
(2)薬価等
薬価 ▲0.86%(国費▲1,052億円程度)
材料価格▲0.01%(国費▲11億円程度)
合計 ▲0.87%(国費▲1,063億円程度)
(注)令和8年4月施行(ただし、材料価格は令和8年6月施行)
(3)診療報酬制度関連事項
① 令和9年度における更なる調整及び令和10 年度以降の経済・物価動向等への対応の検討
実際の経済・物価の動向が令和8年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動し、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合には、上記2.(1)※1~※3(特例的な対応を除く。)について、令和9年度予算編成において加減算を含め更なる必要な調整を行う。そのために必要な足元の情報を正確に把握するため、令和8年度の医療機関の経営状況等について調査を実施する。なお、令和10年度以降の診療報酬改定における実際の経済・物価の動向や経営状況等を踏まえた対応(上記2.(1)※1~※3(特例的な対応を除く。))のあり方についても、あわせて検討を深めることとする。
② 賃上げの実効性確保のための対応
今回の賃上げ措置は、幅広い医療関係職種において物価上昇を超える賃上げを実現するためのものであり、さらに、看護補助者と事務職員に対しては、他産業との人材獲得競争に直面していることも踏まえた上乗せ措置を講じるものである。こうした政策目的が確実に果たされるよう、令和6年度改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者)についても、令和6年度改定でベースアップ評価料の対象とされた職種(看護職員、リハビリテーションを担う職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(上記の入院基本料等で措置される職種を除く。))と同様に、実際に支給される給与(賞与を含む。)に係る賃上げ措置の実効性が確保される仕組みを構築する。これにより、賃上げ実績の迅速かつ詳細な把握を行うこととする。
③ 医師偏在対策のための対応
改正医療法に基づき、外来医師過多区域において無床診療所の新規開業者が都道府県知事からの要請に従わない場合には、診療報酬上の減算措置を講じることで、医師偏在対策の実効性を高めることとする。
加えて、医師多数区域での診療報酬上での更なるディスインセンティブ措置の在り方や、重点医師偏在対策支援区域における医師手当事業に関する診療報酬での財源確保の在り方については、令和10年度診療報酬改定において結論を得ることとする。
④ 更なる経営情報の見える化のための対応
今回の診療報酬改定から、医療法人の経営情報のデータベース(MCDB)等の活用が可能となっており、データ分析をより精緻化させ、保険料や税を負担する国民が納得できるよう、さらにエビデンスに基づく改定が実施されていく必要がある。例えば、診療所の費用項目には「その他の医業費用」の占める割合が高いが、その実態は把握できず、また、職種別の給与・人数については法人によるデータ提出が任意となっている。
令和10年度以降の診療報酬改定に向けては、「その他の医業費用」の内容も含め、医療機関の経営実態がより詳細に把握可能となるようなMCDB及び医療経済実態調査の報告様式の精緻化に向けた検討を行う。
MCDBにおける職種別の給与・人数の報告の義務化を含め、報告のあり方や内容について検討し、令和8年中に必要な見直しについて結論を得る。
さらに、医療法人以外の設置主体による経営情報との連携、データの分析・公表の在り方等について、必要な対応を検討する。
(4)薬価制度関連事項
① 令和8年度薬価制度改革及び令和9年度の薬価改定の実施
令和8年度薬価制度改革において、イノベーションの推進について、製薬企業の予見可能性を高める観点から、市場拡大再算定の類似品の薬価引下げ(いわゆる共連れ)を廃止し、薬価改定以外の機会も含め、自品の販売額による市場拡大再算定の対象とすることとするほか、要件の明確化を行う。また、医薬品の安定供給の確保の観点から、最低薬価について物価動向を踏まえた対応等を行う。
さらに、上記2.(3)①を踏まえ、令和9年度の薬価改定を着実に実施する。その際の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方については、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請についてバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討する。
② 費用対効果評価制度の更なる活用
医療保険制度の運営の中で費用対効果評価を推進する観点から、費用対効果評価制度の更なる活用のため、令和8年中に、同制度の客観的な検証も踏まえ、既存の比較対照技術と比べて追加的な有用性がなく、単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大を図る。引き続き、同制度における適切な評価手法の確立や実施体制の強化を進める中で、対象品目や価格調整の範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及など、同制度の発展に向けた更なる見直しについて具体的な検討を進め、令和9年度の薬価改定の中で一定の結論を出す。
3.介護報酬改定
「「強い経済」を実現する総合経済対策」において、「介護分野の職員の処遇改善については、(中略)他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度介護報酬改定において、必要な対応を行う」とされたことを踏まえて、令和9年度介護報酬改定を待たずに、期中改定を実施する。
具体的には、政府経済見通し等を踏まえた介護分野の職員の処遇改善、介護サービス事業者の生産性向上や協働化の促進等のため、以下の措置を講じる。なお、これらの措置による改定率は+2.03%(国費+518 億円(令和8年度予算額への影響額))となる。
・ 介護職員のみならず、介護従事者を対象に、幅広く月1.0 万円(3.3%)の賃上げを実現する措置を実施する。
・ 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に、月0.7万円(2.4%)の上乗せ措置を実施する。
※ 合計で、介護職員について最大月1.9 万円(6.3%)の賃上げ(定期昇給0.2 万円込み)が実現する措置。
・ 上記の措置を実施するため、今回から、処遇改善加算の対象について、介護職員のみから介護従事者に拡大するとともに、生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せの加算区分を設ける。また、これまで処遇改善加算の対象外だった、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等について、新たに処遇改善加算を設ける。
・ また、令和9年度介護報酬改定を待たずに、介護保険施設等における食費の基準費用額について、1日当たり100円引き上げる(低所得者については、所得区分に応じて、利用者負担を据え置き又は1日当たり30~60円引上げ)。
なお、令和9年度介護報酬改定においては、介護分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保を図る必要があるとの認識のもと、「介護事業経営実態調査」等において、介護サービス事業者の経営状況等について把握した上で、物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応を実施する。同時に、介護保険制度の持続可能性を確保するため、介護給付の効率化・適正化に取り組む必要がある。今般の有料老人ホームに関する制度改正の内容も踏まえつつ、サービスの提供形態に応じた評価の在り方について所要の措置を講じることを検討する。
4.障害福祉サービス等報酬改定(略)
5.社会保障制度改革の推進
社会保障改革の新たなステージにおいて、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指すとの方針に基づき、経済・物価動向等に適切に対応しつつ、医療・介護を中心とした社会保障制度改革を着実に実行する。
具体的には、令和8年度診療報酬改定が令和8・9年度に対応するものであることを踏まえ、令和8・9年度を通じて、歳出改革を中心に取り組み、その社会保険負担軽減効果を活用するほか、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けた取組による雇用者報酬の増加によって生じる社会保険負担軽減効果も活用することにより、令和9年度の社会保障負担率が令和7年度と比較して上昇しないよう取り組む。
また、今後も一定の物価上昇が継続すると想定される中での医療給付費の在り方と、現役世代の保険料負担抑制との整合性を図るための制度的対応についても検討を進める。
こうした方針を踏まえつつ、令和8年度においては、以下の項目に取り組む。さらに、「「強い経済」を実現する総合経済対策」脚注58 に盛り込まれた社会保障改革を含め、令和7年度中に具体的な骨子について合意し、令和8年度中に具体的な制度設計を行い、順次実施するべく、検討を進める。
(1)薬剤給付の見直し
① OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し
OTC医薬品の対応する症状に適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品のうち、他の被保険者の保険料負担により給付する必要性が低いと考えられるときには、患者の状況や負担能力に配慮しつつ、別途の保険外負担(特別の料金)を求める新たな仕組みを創設し、令和8年度中(令和9年3月)に実施する。まずは、77成分(約1100品目)を対象医薬品とし、薬剤費の4分の1に特別の料金を設定する。
今後、セルフメディケーションに関する国民の理解や、OTC医薬品に関する医師・薬剤師の理解を深めるための取組、医療品医薬品のスイッチOTC化に係る政府目標の達成に向けた取組などの環境整備を進めるとともに、将来、OTC医薬品の対応する症状の適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品の相当部分にまで対象範囲を拡大することを目指し、上記の施行状況等について厚生労働省において把握・分析を行った上で、令和9年度以降にその対象範囲を拡大していく。
あわせて、特別の料金の対象となる薬剤費の割合の引き上げについても検討する。
なお、実施にあたっては、こども、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方、低所得者、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方等に対する配慮を検討する。
② 食品類似薬の保険給付の見直し
医療保険給付の適正化の観点から、栄養保持を目的とした医薬品のうち、代替可能な食品が存在する医薬品について、経口による通常の食事から栄養補給可能な患者に対する使用は保険給付外とする。
なお、手術後の患者、経管により栄養補給を行っている患者などについては、引き続き保険給付の対象とする。
③ 長期収載品の選定療養の拡大
長期収載品については、令和6年10月より、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当が選定療養の対象となり、「特別の料金」として患者に負担が求められてきたが、後発医薬品の更なる使用促進の観点から、価格差の2分の1相当へと引き上げる。
④ 長期処方・リフィル処方箋の活用
現役世代を含めた通院負担の軽減の観点から、症状の安定している患者に係る一定の医薬品の投与について長期処方・リフィル処方箋を原則化することを視野に入れ、長期処方・リフィル処方箋に対応している旨の院内掲示を必須要件とする医療機関を、こうした患者が通院する医療機関が対象となるよう拡大する。あわせて長期処方・リフィル処方箋の活用を阻害している要因を精査し、処方箋様式などの運用を改善する。さらに、実効的なKPIの設定を行い、医師と患者の双方の理解の下で、安定した症状の下で定期的に通院している患者に対する長期処方・リフィル処方での対応が一層普及するよう、必要な対応
を図ることとする。
(2)金融所得の反映などの応能負担の徹底
現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しの観点から、年齢にかかわらず公平な応能負担を実現するための第一歩として、まずは後期高齢者医療制度の窓口負担割合や保険料等への金融所得の反映を実現するため、令和8年通常国会に金融所得に係る法定調書のオンライン提出義務化等のための法案を提出する。具体的には、税制における確定申告の有無により負担等が変わる不公平な取扱いを是正し、確定申告をしていない場合であっても、確定申告をした場合と同様に、上場株式の配当等の金融所得を反映する。このため、関係省庁と協力の上で、税制における金融所得に係る法定調書へのマイナンバー記載を徹底しつつ、法案成立後3年程度で保険者への法定調書のオンライン提出義務化が確実に履行できるよう、金融機関や自治体等の関係者の事務負担等に留意しながら調整を進めるとともに、事務の性格を踏まえ法定調書データベース運営法人の調整を進める。
(3)高額療養費制度の見直し
高齢化の進展や医療の高度化等を背景にした医療費の増大に直面する中、医療保険制度の持続性を高め、とりわけ重要なセーフティネット機能である高額療養費制度を将来にわたって堅持していく観点から、高額療養費制度の見直しを行う。
見直しの具体的な内容は、「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方」(令和7年12月16日 高額療養費制度の在り方に関する専門委員会)を踏まえ、別紙の通りとする。
(4)高齢者の窓口負担の見直し
高齢者の特徴を踏まえ、現役世代よりも低く設定されている高齢者医療の窓口負担割合については、近年の高齢者の受診行動や所得の状況等も踏まえつつ、世代間・世代内の公平性を確保する観点から、その在り方について、令和9年度予算編成過程において具体的な制度設計の検討を行い、結論を得る。その中で、高額療養費制度における外来特例の対象年齢のあり方や自己負担を3割とする対象者(「現役並み所得者」)の適切な判断基準のあり方などについても併せて検討を行う。
(5)介護保険制度改革
① 利用者負担の「一定以上所得」(2割負担)の判断基準の見直し
能力に応じた負担と、現役世代を含めた保険料負担の上昇を抑える観点から、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直しについて検討する必要がある。検討に当たっては、介護サービスは長期間利用されること等を踏まえつつ、高齢者の方々が必要なサービスを受けられるよう、高齢者の生活実態や生活への影響等に加えて、令和8年度に見込まれる医療保険制度における給付と負担の見直し、現在補足給付について行われている預貯金等の把握に係る事務の状況等を踏まえ、第10 期介護保険事業計画期間の開始(令和9年度~)の前までに、結論を得る。
② ケアマネジメントの利用者負担の導入
ケアマネジメントについては、他の介護サービスとは異なり、利用者負担を求めてこなかったが、ケアプラン作成を含めて利用者負担を求めている介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)等との均衡等の観点から、住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型を設けた上で、利用者負担を導入する。
③ 補足給付の見直し
補足給付について、能力に応じた負担の観点から、所得区分の設定の精緻化を行うとともに、区分間の利用者の負担限度額のバランスをとる措置を講じる。具体的には、令和8年8月から、年金収入等120万円超の所得区分の居住費の負担限度額を月0.3万円引き上げる。令和9年度中に、所得区分の設定を精緻化し、年金収入等100万円超120万円以下及び140万円超の所得区分について、負担限度額の見直しを行う。
④ 今後の介護保険制度改革
介護保険制度の持続可能性を確保するため、1号保険料負担、多床室の室料負担、軽度者への生活援助サービス等に関する給付、高額介護サービス費の在り方など、給付と負担の在り方の不断の見直しに向けた検討を行う。
(6)障害福祉サービスの質の確保(略)
6.改正子ども・子育て支援法に基づく実質的な社会保険負担軽減効果(略)
7.その他
(1)社会保障の充実
社会保障の充実については、公費2兆8000億円程度(消費税増収分のうち消費税率1%分税収相当)とされている累次の閣議決定等を踏まえ、前年度と同額の既存の措置や看護職員・介護職員の賃上げ等の経費を賄うため、公費2兆7987億円を措置する。
(2)医療
① 全国健康保険協会(「協会けんぽ」)に対する国庫補助に係る特例減額の控除額の時限的引上げ
協会けんぽにおいては、法制上「当分の間」とされている国庫補助率の設定(16.4%)が10 年以上に渡って継続していること等も背景に、足元では健全な財政運営が定着しており、準備金も法定準備金を大きく超過して積み上がっていることを踏まえ、医療保険料率の引き下げ(▲0.1%)と併せ、国庫補助の在り方について見直しを講ずる。
具体的には、国庫補助に対する特例減額の措置(※)が平成27 年度から行われているところ、剰余金(単年度収支差)がプラスとなった平成22 年度の翌年度である平成23 年度から平成26 年度までの間、現行の特例減額の措置が行われていたと仮定した場合の控除額(約9,148億円×16.4%=約1,500 億円)を令和8年度から令和10 年度までの3年間の特例減額の控除額に上乗せすることとする(各年度約500 億円)。
※ 前年度末における準備金の額から前々年度までの準備金の額等を除いた額(前年度において増加した準備金に相当する額)に、控除率16.4%を乗じた額を国庫補助額から控除する措置。
また、当該時限措置終了後の医療保険料率を含めた保険財政運営の在り方については、令和10 年度までの間において、国庫補助率の見直しと併せ、持続的な保険財政運営の観点から必要な検討を行い、結論を得ることとする。
さらに、今回の協会けんぽの医療保険料率の引下げと併せ、健康保険組合連合会が実施する交付金交付事業に対する財政支援を時限的に拡充することで、財政基盤の脆弱な健康保険組合の保険運営の下支えを行うとともに、高齢者医療運営円滑化等補助金の見直しを行う。具体的には、前期財政調整における報酬調整の導入に伴う特例的な支援とされている企業の賃上げ努力に配慮した拠出金負担軽減措置の終了も含め、令和9年度以降の在り方を検討することとする。
② 国民健康保険組合(「国保組合」)に係る見直し
国保組合に対する国庫補助については、負担能力に応じた負担を進め、保険者機能の発揮をより促す観点から、令和9年度より、一定の基準に該当する組合への例外的な補助率(12%、10%)の適用並びに補助率を区分する所得基準及び各国保組合の平均所得の算出方法の見直しを行うこととする。その上で、所得状況等の財政力に応じ、よりきめ細やかな支援を実現していく観点からの不断の見直しを図るべく、今般の見直しの影響等も踏まえ、引き続き、国保組合への財政支援の在り方について検討を進める。
(3)介護
① 介護現場の生産性向上
介護事業者が、介護職員の業務負担の軽減及び介護サービスの質の向上に資する生産性向上に一層取り組むことが重要である。このため、介護分野の「省力化投資促進プラン」を踏まえつつ、令和8年度介護報酬改定において処遇改善加算の上乗せ区分の要件とするケアプランデータ連携システムを含めた、介護テクノロジーの導入支援や、伴走支援などを通じて、介護現場の生産性向上を推進していく。
② 地域支援事業及び保険者機能強化推進交付金
地域支援事業及び保険者機能強化推進交付金については、その適正な執行を確保しつつ、今後の執行状況を十分に勘案した上で、必要に応じて所要の対応の検討を行う。その際、健康寿命の延伸等を背景とした要介護認定率の改善の傾向を確たるものとしていくため、第10期介護保険事業計画期間を見据え、保険者の管理の下、多様な主体が参画し、高齢者が多様なサービスから選択することができるよう、成果指向型の保険者機能強化に向けた支援や介護予防・日常生活支援総合事業の充実を図るための取組について、検討する。
③ 地域医療介護総合確保基金
地域医療介護総合確保基金(介護分)については、その適正な執行を確保しつつ、今後の執行状況を十分に勘案した上で、地域における介護人材・サービスが適切に確保されるよう、既存メニューの整理も含めた見直しを行いつつ、必要に応じて所要の対応の検討を行う。
(4)生活保護制度(略)