厚労省 新薬等8製品を承認 新有効成分は日本ベーリンガーの肺線維症治療薬・ジャスケイドなど2製品
公開日時 2026/05/19 04:51
厚生労働省は5月18日、新医薬品など8製品を承認した。新有効成分含有医薬品は、日本ベーリンガーインゲルハイムの肺線維症治療薬・ジャスケイド錠とモデルナ・ジャパンの次世代の新型コロナワクチン・エムネクスパイク筋注の2製品。また、今回の承認品目の中に、日本イーライリリーの肥満症治療薬・ゼップバウンド皮下注に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)など2つの適応拡大や、中外製薬のALK阻害剤・アレセンサのがん種横断的なALK融合遺伝子陽性固形がんへの適応拡大が含まれる。
承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類及び投与経路順に記載。
【新有効成分含有医薬品】
▽ジャスケイド錠9mg、同錠18mg(ネランドミラスト、日本ベーリンガーインゲルハイム):「特発性肺線維症、進行性肺線維症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類399。
経口のホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害剤。抗線維化作用および免疫調整作用をもち、特発性肺線維症(IPF)及び進行性肺線維症(PPF)の適応を取得した初の経口PDE4阻害薬。IPFでは10年以上ぶりの新薬の登場となる。
IPFは、指定難病である特発性間質性肺炎の病型の一つ。肺に進行性の線維化が生じる予後不良の特発性(原因を特定できない)の難治性疾患であり、未治療の場合の生存期間の中央値は約3年と報告されている。国内では、ニンテダニブ(オフェブ)とピルフェニドン(ピレスパなど)がIPFの適応を持っている。
PPFは、自己免疫性間質性肺疾患を含む間質性肺疾患(ILD)の臨床診断に関連しており、特に関節リウマチ、全身性硬化症、過敏性肺炎などの疾患によって引き起こされる。進行性の呼吸症状の悪化や肺機能の低下を来し、患者の全生存期間の中央値は約3.7年と報告されている。国内の最大患者数は4万8000人程度と推定されている。国内では、オフェブが名称は異なるが、同一病態の疾患である「進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)」の適応を持っている。
ジャスケイドのIPF、PPFに対する用法・用量は「通常、成人には1回18mgを1日2回経口投与する。なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg1日2回に減量することができる」。
海外においてジャスケイドは米国、中国、アラブ首長国連邦(UAE)で承認され、日本は世界で4番目の国となる。
▽エムネクスパイク筋注シリンジ12歳以上用(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のN-末端部位及び受容体結合部位をコードするmRNA、モデルナ・ジャパン):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類631。
mRNAワクチン。既存の同社のスパイクバックスがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質全長体をコードするのに対し、エムネクスパイクは受容体結合部位(RBD)及びN-末端部位(NTD)をコードするmRNAを有効成分とする。
スパイクバックス(12歳以上用)の用法・用量が「1回0.5mLを筋肉内に接種する」となっているのに対し、エムネクスパイクは「1回0.2mLを筋肉内に接種する」。
海外では、2026年2月時点で、米国及びEUを含む4つの国・地域において承認されており、米国では65歳以上又はCOVID-19の重症化リスク因子を一つ以上有する12~64歳の者、EUでは12歳以上の者を対象として承認されている。
【新有効成分含有医薬品以外(効能追加や用法追加等)】
▽ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス、同皮下注5mgアテオス、同皮下注7.5mgアテオス、同皮下注10mgアテオス、同皮下注12.5mgアテオス、同皮下注15mgアテオス(チルゼパチド、日本イーライリリー):
①「肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する。・BMIが35kg/m2以上」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余期間(令和12年9月25日まで)。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。ゼップバウンドの現在の適応(24年12月承認)は、「肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する。・BMIが35kg/m2以上」。今回、ただし書きの「2型糖尿病」の部分を、「耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)」に変更された。耐糖能異常は、2型糖尿病の前段階的な位置付けで、「境界型糖尿病」や「糖尿病予備群」と呼ばれる。
ゼップバウンドの24年12月承認取得時の審査報告書によると、メーカーによる申請時の効能・効果は、「肥満症。ただし、耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)、脂質異常症又は非アルコール性脂肪性肝疾患のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上」だった。
これに対しPMDAは、「本邦における医療環境等も踏まえると、本剤の効能又は効果で規定する健康障害は、薬物療法が必要な状態であることが明確であり、かつ臨床試験において改善が明らかに認められた健康障害とすることが適切と考える。IGT(耐糖能異常)及びNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)を高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病と同列において効能又は効果で規定する健康障害とまでは位置付けられないものと考える」と判断し、現在の効能・効果となった経緯がある。
今回、「現在の肥満症のただし書きについて、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、と記載しているが、これに耐糖能異常を追加する申請があった」(厚労省担当者)といい、これを承認することが4月24日の薬事審・医薬品第一部会で了承された。
肥満症の適応に関して用法・用量に変更はない。
海外では、肥満又は過体重に対する体重管理に係る効能・効果で、2023年11月に米国で、23年12月に欧州で承認され、26年2月現在、欧米を含む70以上の国又は地域で承認されている。また、欧州を含む50以上の国又は地域で肥満又は過体重の適応症において関連する健康障害として耐糖能異常が含まれている。
:②「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群。ただし、BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(令和12年9月25日まで)。
ゼップバウンドについて、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の効能追加も了承された。OSASに対する用法・用量は「通常、成人には、週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回15mgを皮下注射する。なお、忍容性が認められない場合には、週1回10~15mgの範囲で投与量を調整することができる」。
海外では、米国で第3相SURMOUNT-OSA試験の結果に基づき、2024年12月に同効能追加が承認されている。26年1月時点で、OSASに関する効能・効果で欧米を含む20 以上の国又は地域で承認されている。
国内では、ダイアモックス錠が「睡眠時無呼吸症候群」、モディオダール錠が「持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の適応を持っているが、「ガイドライン上、恐らく推奨度は高くないのではないかと認識している」(厚労省担当者)という。
▽ソーティクツ錠6mg(デュークラバシチニブ、ブリストル マイヤーズ スクイブ):「既存治療で効果不十分な下記疾患:乾癬性関節炎」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余期間(令和14年9月25日まで)。薬効分類3999。
経口TYK2阻害剤。ソーティクツは2022年9月に「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬および乾癬性紅皮症」を適応として承認されており、それに続くもの。用法・用量に変更はない。
国内で乾癬性関節炎(PsA)の適応を持つ医薬品には、メトトレキサートやPDE4阻害剤・オテズラ錠、JAK阻害剤・リンヴォック錠、生物製剤などがある。
▽アレセンサカプセル150mg(アレクチニブ塩酸塩、中外製薬):「ALK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は5年10カ月。薬効分類429。
ALK阻害剤。ALK融合遺伝子陽性固形がんに対する世界初のがん種横断での治療薬となる。既承認の「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応は、今回の固形がんの中に含まれる形になる。用法・用量は「通常、成人には1回300mgを1日2回経口投与する」。また、小児に対して体重に応じた投与量が設定されている。
▽ファセンラ皮下注30mgシリンジ、同皮下注30mgペン(ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「好酸球増多症候群」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類229。
抗IL-5受容体α抗体。好酸球増多症候群(HES)は、血中および組織中の好酸球数が高値を示す希少疾患群で、体内のあらゆる臓器に進行性かつ致死性の高い障害を引き起こす可能性がある。推定患者数は約2000人。
現在、ファセンラは気管支喘息および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の適応を持っており、それに続くもの。HESに対する用法・用量は「通常、成人及び12歳以上の小児には1回30mgを4週間隔で皮下に注射する」。
▽マブキャンパス点滴静注30mg(アレムツズマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「T細胞性前リンパ球性白血病」を効能・効果とする新効能医薬品。薬効分類429。
抗CD52抗体。事前評価済み公知申請品目であり、保険適用済み。用法・用量は既承認適応の「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病」と同じ。
海外では、欧米等6カ国(米国、英国、独国、仏国、加国、豪州)において、T細胞性前リンパ球性白血病に対して承認されていないものの、海外診療ガイドライン(NCCNガイドライン(v.1.2025)、BSHガイドライン(2021年版))において、T細胞性前リンパ球性白血病に対する治療選択肢の一つとして記載されている。
▽アレックスビー筋注用(RSウイルスPreF3抗原、グラクソ・スミスクライン):「RSウイルスによる感染症の予防」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(令和13年9月24日まで)。薬効分類631。
RSウイルスワクチン。2023年9月に60歳以上の者を対象に、また、24年11月に50~59歳のハイリスク者を対象に承認を取得しており、今回ハイリスク者の投与対象を18歳~59歳に広がった。
海外では、2026年1月時点で、60歳以上の成人又はRSV感染症が重症化するリスクが高い50歳以上の成人を対象とした適応については日本を含め、欧州、米国等の50以上の国又は地域で承認されており、18~49歳を対象とした適応については欧州及びエルサルバドルで承認されている。
なお、国内のアレックスビー以外のRSウイルスワクチンのうち、アブリスボは▽妊婦への能動免疫による新生児及び乳児、▽60歳以上の者―、エムレスビアは60歳以上の者が投与対象となっている。