ウゴービのMASHの効能追加など新薬10製品を審議へ 5月29日の第一部会で
公開日時 2026/05/18 04:50
厚生労働省は5月29日に薬事審議会・医薬品第一部会を開き、ノボ ノルディスク ファーマのウゴービ皮下注に肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の効能を追加することなど新薬10製品の承認の可否を審議する。日本でMASHの効能・効果を持つ薬剤はなく、今回承認された場合、ウゴービが本適応を持つ初の治療薬となる。このほかの審議品目には、バイオジェン・ジャパンの再発寛解型多発性硬化症を対象疾患とする新規経口フマル酸塩製剤・ブメリティカプセル(一般名:ジロキシメルフマラート)が含まれる。
報告品目は4品目。この中には全薬工業のリツキサン点滴静注について、頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群に対する成人の用量追加がある。現在は小児適応のみとなっている。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ウゴービ皮下注0.25mgSD、同皮下注0.5mgSD、同皮下注1.0mgSD、同皮下注1.7mgSD、同皮下注2.4mgSD、同皮下注0.25mgペン1.0MD、同皮下注0.5mgペン2.0MD、同皮下注1.0mgペン4.0MD、同皮下注1.7mgペン6.8M、同皮下注2.4mgペン9.6MD(セマグルチド(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスク ファーマ):「肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎。ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」を対象疾患とする新効能医薬品。
持続性GLP-1受容体作動薬。承認されると、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の適応を持つ国内初の医薬品となる。ウゴービにとっては肥満症に続く2つ目の適応となる。
対象疾患とするMASHは、肝臓に影響を及ぼす慢性的な進行性の代謝性疾患。過体重または肥満の人々のうち3人に1人が罹患しているとされる。MASHを有する人は一般人口と比べて肝がんを含む進行性肝疾患へのリスクが高まるという。
米国では第3相ESSENCE試験のパート1に基づき、25年8月にMASHの効能追加が迅速承認されている。
▽ブメリティカプセル(ジロキシメルフマラート、バイオジェン・ジャパン):「再発寛解型多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
新規経口フマル酸塩製剤。対象疾患とする多発性硬化症(MS)は臨床経過に基づき、急性増悪(再発)と寛解を繰り返す再発寛解型(RRMS)、RRMSの経過をたどった後に再発の有無にかかわらず身体的障害が進行する二次性進行型(SPMS)、発症時から再発を伴わずに身体的障害が進行する一次性進行型(PPMS)の3病型に分類される。MS患者の約85%はRRMSから発症する。
米国ではVumerityの商品名で2019年10月に承認されている。バイオジェンは経口フマル酸塩製剤としてテクフィデラ(フマル酸ジメチル)を販売しており、それに続く。
▽アバスチン点滴静注用100mg/4mL、同点滴静注用400mg/16mL(ベバシズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「神経線維腫症2型」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
抗VEGFヒト化モノクローナル抗体。今回の申請は、神経線維腫症2型(NF2)に対して同剤の有効性及び安全性を評価した医師主導の国内第2相臨床試験(BeatNF2試験)に基づく。承認されれば、同剤は世界初のNF2に対する治療薬となる。
国の指定難病であるNF2は、左右両側に聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)ができる常染色体優性の遺伝性疾患。聴神経鞘腫による症状が多く見られ、難聴・めまい・ふらつきなどのほか、脊髄神経鞘腫による手足のしびれ・知覚低下・脱力などがある。
腫瘍はほとんど良性腫瘍だが、症状が出現したら治療を検討する。特に聴神経鞘腫の治療では、聴神経鞘腫を摘出せずに経過を見ると、いずれ聴力はなくなり、腫瘍の増大で生命の危険が生じる。一方、手術による腫瘍摘出は、多くの場合に聴力はなくなり、顔面神経麻痺の合併リスクもある。腫瘍が小さいうちに手術すれば、顔面神経麻痺の回避や聴力温存の可能性が高まる。
▽①グロベニン-I10%静注5g/50mL、同10%静注10g/100mL、同10%静注20g/200mL、②献血グロベニン-I10%静注2.5g/25mL、同10%静注5g/50mL、同10%静注10g/100mL(①pH4処理酸性人免疫グロブリン、②ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン、武田薬品):「自己免疫性脳炎」を対象疾患とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。
グロベニン-I 10%静注は、海外血漿由来の静注用人免疫グロブリン製剤。献血グロベニン-I 10%静注(10%製剤)は、国内血漿由来の静注用人免疫グロブリン製剤。5%製剤で取得したデータを活用し、申請は10%製剤のみで実施した。
自己免疫性脳炎(AE)は自己免疫学的機序が関連し発症する脳炎・脳症。意識障害、けいれん、高次脳機能障害など急性・亜急性に現れ、日本ではNMDAR脳炎などが代表例。有効性の確立した治療法はなく、急性期はステロイドパルス療法/ステロイド投与、経静脈的免疫グロブリン療法、血漿交換などの免疫修飾療法が行われることが多い。維持療法も有効性は確立していない。
急性期の免疫修飾療法には比較的反応するが、後遺症が課題となる。記憶障害や精神症状の回復には数か月から数年を要し、NMDAR脳炎では急性期に10%が死亡するとの報告がある。多くの症例で、長期にわたるてんかんや記憶障害が日常生活の支障になっているとされる。
▽ロープレッサ点眼液0.02%(ネタルスジルメシル酸塩、参天製薬):「次の疾患で、他の緑内障治療薬が効果不十分又は使用できない場合:緑内障、高眼圧症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
Rhoキナーゼ阻害薬で、1日1回点眼で開発された。房水排出の主経路である線維柱帯を介した房水流出量を増加させることによって眼圧下降作用を示す。上強膜静脈圧を低下させる作用を有することも確認されているという。
緑内障は日本における眼疾患による視覚障害(視力低下や失明)原因の第1位。薬物療法では、FP受容体作動薬、EP2受容体作動薬、交感神経β受容体遮断薬、Rhoキナーゼ阻害薬などによる眼圧下降治療が行われ、単剤で効果不十分な場合、薬剤変更や併用治療が行われる。
▽マルシロン配合錠(デソゲストレル/エチニルエストラジオール、オルガノン):「月経困難症」を対象疾患とする新医療用配合剤。
合成黄体ホルモンのデソゲストレル150μgと、合成卵胞ホルモンのエチニルエストラジオール20μgの配合剤。世界ではMercilonの販売名で経口避妊薬として販売されているが、日本では、市場ニーズや月経困難症のアンメットニーズを踏まえ、月経困難症治療薬として開発した。
月経困難症は、主症状である月経期間中の下腹部痛をはじめとして、腹部膨満感、悪心、嘔吐、頭痛、めまいなどの症状を特徴とし、QOLや生産性に影響を及ぼす。
▽ウェイリズ錠400mg(リルザブルチニブ、サノフィ):「持続性及び慢性免疫性血小板減少症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
経口BTK阻害薬。多面的な免疫調節を介して免疫性血小板減少症(ITP)の病態に働きかけることを目指して開発された。BTKはB細胞、マクロファージ、自然免疫細胞などで発現し、様々な免疫介在性の病態形成過程や炎症経路において重要な役割を担っていると考えられている。承認されると、ITP治療で初のBTK阻害薬となる。
ITPは、後天性に血小板に対する自己抗体ができることで免疫的な機序によって血小板数が減少し、出血が起こりやすくなる疾患であり、日本においては、年間10万人あたり2.16人が新規に発症すると推計されているという。
▽①ジャクスタピッドカプセル小児用2mg、②同カプセル5mg、同カプセル10mg、同カプセル20mg(ロミタピドメシル酸塩、レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン):「ホモ接合体家族性高コレステロール血症」を対象疾患に小児用量を追加する①新用量医薬品、剤形追加に係る医薬品、②新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
ジャクスタピッドは2016年9月にホモ接合体家族性高コレステロール血症を効能・効果に、18歳以上を対象に承認された。経口薬物治療で効果不十分な場合に追加投与する位置付け。今回は小児用量を追加するもので、ジャクスタピッドカプセル小児用2mgは新剤形となる。
▽ソグルーヤ皮下注5mg、同皮下注10mg、同皮下注15mg(ソマプシタン(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスク ファーマ):「骨端線閉鎖を伴わないSGA性低身長症、骨端線閉鎖を伴わないヌーナン症候群における低身長」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
週1回投与の長時間作用型ヒト成長ホルモンアナログ製剤。ノボによると、今回の対象疾患の2つの低身長患児に対する治療の多くは、毎日の皮下注射を必要とするヒト成長ホルモン(hGH)製剤となっている。ソグルーヤは週1回投与のhGH製剤のため、1日1回投与製剤よりも注射回数を大幅に減らすことができる。
ソグルーヤは現在、5mg、10mg、15mgの各製剤で「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」で承認されている。5mg製剤と10mg製剤は「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」の適応も持つ。
▽①サデルガカプセル25mg、②同カプセル100mg(エリグルスタット酒石酸塩、サノフィ):「ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善」を対象疾患に小児用量を追加する①新用量医薬品、剤形追加に係る医薬品、②新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
グルコシルセラミド合成酵素阻害薬。2015年に国内初のゴーシェ病に対する経口治療薬として承認された。今回は小児用量を追加するもので、サデルガカプセル25mgは新剤形となる。
ゴーシェ病は、酵素の不足または欠損により、体内にグルコシルセラミドが蓄積することで起き、肝脾腫、貧血、出血傾向、進行性の骨疾患など重篤な全身性の症状を引き起こす。サデルガは蓄積物資の合成を阻害することで効果を発揮する。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群」を対象疾患に成人の用量を追加する新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
抗CD20モノクローナル抗体。頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群に対し、現在は小児を対象に承認されている。今回は成人の用量を追加するもの。
▽シムレクト静注用20mg、同小児用静注用10mg(バシリキシマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「下記の臓器移植後の急性拒絶反応の抑制。腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
抗CD25モノクローナル抗体。現在、20mg製剤、10mg小児用製剤ともに「腎移植後の急性拒絶反応の抑制」を効能・効果に承認されている。今回、臓器移植の対象を増やす。
▽ゼオマイン注用50単位、同注用100単位、同注用200単位(インコボツリヌストキシンA、帝人ファーマ):「痙性斜頸、眼瞼痙攣」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
A型ボツリヌス毒素製剤。末梢のコリン作動性神経終末に作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害することにより、随意筋の筋力を弱め、筋緊張状態を緩和する作用を示す。現在は上肢痙縮、下肢痙縮、慢性流涎を効能・効果で承認されている。
なお、今回追加する痙性斜頸及び眼瞼痙攣は、グラクソ・スミスクラインのA型ボツリヌス毒素製剤・ボトックスで承認されている。
▽ボトックス注用50単位、同注用100単位(A型ボツリヌス毒素、グラクソ・スミスクライン):「下肢痙縮」を対象疾患とする新用量医薬品。
A型ボツリヌス毒素製剤。現在も下肢痙縮で承認されている。今回の新用量について、厚労省担当官は「投与する単位を若干増量するというもの」だと説明している。