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健保法等改正案 参院厚労委で賛成多数で可決 29日の参院本会議での採決を経て成立へ

公開日時 2026/05/29 04:50
参院厚生労働委員会は5月28日、OTC類似薬の薬剤費の一部を保険給付外とする「一部保険外療養」創設などを盛り込んだ健康保険法等改正案を与野党の賛成多数で可決した。自民、維新、国民、参政が賛成。立憲、公明、共産、れいわが反対した。法案の採決にあたり19項目の附帯決議を採択した。立憲と公明が提出した修正案は反対多数で否決した。健保法等改正案は5月29日の参院本会議で採決され、成立の見通しとなった。

採決に先立って行われた質疑には高市早苗首相が出席。高市首相は、一部保険外療養の対象に医薬品以外の医療行為が含まれる可能性について指摘を受け、「規定の趣旨としては薬剤のみを対象としたものと解釈している」と説明した。白川容子議員(共産)への答弁。

高額療養費制度の見直しについて高市首相は、「制度の持続可能性を確保しつつ、長期療養者や低所得者に十分配慮したものとしている」と強調。「患者団体をはじめ、保険者や労使、医療関係者など多くの関係者と丁寧な議論を積み重ねた上で、長期療養者などに配慮しつつ重要なセーフティネットを将来に継承するためのものであり、弱者を切り捨てるものではない」と訴えた。天畠大輔議員(れいわ)への答弁。

一方、上野賢一郎厚労相は薬価改定のあり方について、「市場実勢価格を適時適切に反映して国民負担を抑制することが重要であると同時に、近年指摘をされている革新的な新薬の開発力の強化や、暮らしに不可欠な薬の安定供給の確保につながるものが必要である」と説明。その上で、27年度改定については、「25年末の大臣折衝事項にあるとおり、対象品目の範囲や適用されるルールの在り方について、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった観点について、バランスよく対応できるよう中医協等で丁寧に検討を進めていく」と述べた。田村まみ議員(国民)への答弁。

採決に際して行われた討論では、立憲の郡山りょう議員が反対の立場から「OTC類似薬の一部保険外療養については代替性を判断する観点が不明確であり、対象範囲がなし崩し的に広がる事や必要な受診が抑制される事への懸念が拭えない」と主張した。

附帯決議では、一部保険外療養について、「配慮が必要な者への措置は将来にわたって維持すること」とし、対象範囲に対して「薬剤以外の診療行為を含めるべきではないという指摘もあったこと等を踏まえ、十分に検討すること」などと盛り込んだ。

【健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議】

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 医療保険制度の見直しに当たっては、給付と負担の在り方の見直しに加えて、医療機能の維持や医療従事者の確保といった医療提供体制の在り方、医療の質の向上への対応を含め、医療全体をどのように維持し、国民皆保険制度を堅持していくかとの観点から、議論を行うこと。

二 出産の標準的な費用に係る給付体系の見直しに当たっては、妊産婦の経済的負担の軽減や妊産婦が納得感を持ってサービスを選択できる環境整備が重要であり、その前提となるサービス内容と費用の見える化、それに基づく標準化を確実に実施し、安全・安心な出産ができる環境整備に向け、周産期医療提供体制の確保に最大限努めること。また、当分の間、出産育児一時金の適用を受けることを可能とする経過措置については、できる限り多くの分娩施設が新たな給付体系を選択するよう促すとともに、妊産婦の選択に不利益・不公平が生じたり、保険者に過度な事務負担が生じたりすることのないようにしつつ、厳しい労働・経営環境に置かれた分娩施設の状況と意向を十分に踏まえること。さらに、新たな制度の下で地域の周産期医療体制を維持・確保できるよう、国から分娩施設への支援や丁寧な説明など、所要の措置を講ずること。

三 分娩施設の体制維持・確保、産科医の確保や地域偏在の解消など、周産期医療提供体制の整備は、国のインフラ整備に関わる問題であり、公費による支援を含む必要な対応策を検討すること。 

四 分娩費、出産時一時金等の金額の設定に当たっては、医療保険財政及び保険料負担への影響を十分に考慮するとともに、分娩施設を始めとする関係者の意見を十分に踏まえること。とりわけ、分娩経過が多様であることや、地域における分娩施設の経営実態を踏まえた標準的費用の設定、加算措置その他必要な措置を講ずること。また、物価動向や人件費その他の経済状況の変化に適切に対応する観点から、関係者の意見も踏まえつつ、不断に見直すこと。 

五 妊婦の希望に応じて安全・安心な出産ができる環境整備に向け、麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩や痛みの緩和を目的とした処置の提供体制確保のための方策を講ずること。

六 医療機関における業務効率化・勤務環境改善への責務明確化に当たっては、医療機関における業務効率化・勤務環境改善への取組推進に向けて適切に支援するとともに、現場の実態を幅広く把握・検証し、医療の安全性や質の担保、患者のプライバシー・個人情報の保護に留意し、幅広い医療機関において適切に業務効率化・勤務環境改善が推進され、現場労働者の負担軽減に資する取組となるよう留意すること。

七 一部保険外療養の施行に当たっては、薬剤の支給において、要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性の高いものであっても、適正な医療の提供を確保するために必要なものについては、将来にわたって保険給付の対象とするとともに、配慮が必要な者への措置は将来にわたって維持すること。さらに、国民の受診機会の確保、重症化の防止及び医療費への影響等を総合的に勘案し、患者に過度な負担を生じさせ、又は必要かつ適切な受診が抑制されることのないようにするとともに、制度導入後の影響について実態を把握・検証し、適時、ホームページ等で広く公表しつつ可逆的な見直しを含む必要に応じた見直しを行うこと。 

八 一部保険外療養の対象範囲については、薬剤以外の診療行為を含めるべきではないという指摘もあったこと等を踏まえ、十分に検討すること。

九 一部保険外療養の導入に当たっては、医療用医薬品の給付を受ける患者とOTC医薬品で対応している患者との公平性の確保の観点から、イトプリドの妊婦に対する使用上の注意等を精査、検討すべきとの指摘があったことを踏まえ、イトプリドを妊婦に使用する際に別途の負担を求めない方向で整理すること。

十 一部保険外療養の導入に当たっては、対象薬剤や要配慮者の範囲、患者負担割合を有効成分、効能効果、最大用量等を踏まえ精査、検討するとともに、患者・国民及び関係者に対して丁寧な説明を行い、その意見を十分に踏まえること。また、検討過程の透明性を確保する観点から、検討のための資料及びデータ、前提条件等について出来る限り詳細に関係審議会等に提出し、議論の内容を明らかにすること。

十一 高額療養費等の制度は、重い疾病等に直面した場合であっても、日本国憲法第十三条が保障する個人の尊厳及び同第二十五条が保障する生存権が著しく毀損されることのないよう、国民皆保険制度において国民の生命及び生活を守る上で欠くことのできない中核的な役割を果たしていることに鑑み、将来の見直しに際しても、高額療養費等の支給を受ける者が療養等に必要な費用の負担により生活に困窮することのないよう、高額療養費等の支給要件、支給額その他高額療養費等の支給に関する事項は、高額療養費等の支給を受ける者の「療養等に必要な費用の負担が家計に与える影響」及び「必要かつ適切な受診に与える影響」を考慮して定めることとし、長期療養者をはじめ療養等に必要な費用の負担が家計の負担能力に応じたものとなるよう配慮すること。また、その際には、高額療養費等の支給を受ける者の「給与等の収入の状況及び当該収入の変動状況」、「子等の扶養に係る支出、とりわけ教育費に係る支出等の状況」及び「療養等の状況等の生活の実態」など、可能な限り受給者の多様性を把握しこれを踏まえた検討を行うこと。さらに、高額療養費等の支給を受ける者の収入の状況等に応じ、きめ細かく、かつ、できる限り利便性に配慮した支給要件、支給方法等とすること。加えて、高額療養費等の支給要件、支給額その他高額療養費等の支給に関する事項を定めるに当たっては、引き続き、その手続に当たり、高額療養費等の支給額の算定に関する資料その他の必要な資料を提示して、高額療養費等の支給を受ける者、高額療養費等の支給を受ける者に対する医療に従事する者、高額療養費等に関して学識経験を有する者、保険者や保険料納付者である労使等を社会保障審議会に参画させ、その意見を聴くための措置を講ずること。

十二 高額療養費制度の支給要件等の見直しに当たっては、多数回該当や年間上限に該当しない患者であっても必要な医療へのアクセスが阻害されないように留意すること。また、制度の見直しによって、国民の健康状態の悪化や医療費の増大につながることのないよう、所得区分別、年齢別、疾病別など詳細な影響を継続的に検証し、必要に応じて速やかに見直しを行うこと。さらに、制度の一層の機能強化に向け、保険者間の情報連携などの方策について検討を進めること。個人事業主の長期の療養の保障に向け、被用者保険との格差是正に向けて検討を進めること。

十三 高額療養費制度において、現役世代の負担軽減に向け、保険者変更に関わる多数回該当の初期化、合算可能レセプトに係る金額要件や歴月単位判定、償還払いによる一時的負担など制度運用の改善に向けて継続的に検討を進めること。

十四 高額療養費制度は、患者の医療費負担を軽減する政策であるとともに、家計消費への影響を緩和する効果のある政策であり、自己負担引上げは、医療費を公的保険で支えるのか、患者負担や民間保険の比重を増やすのか等という問題であることを踏まえ、将来の見直しに際しては、医療保障の観点に基づき、財政・経済全体の中における高額療養費制度の在り方という視点も踏まえた議論を進めること。

十五 高額な医療費や、疾病・治療の影響による収入減少・就業困難によって生活困窮や経済的に不安な状況に陥ることで、治療の継続、家族を含めた生活の維持、子の養育等に大きく影響が出る事態に直面した患者やその家族を支援する観点から、相談支援窓口の整備及びアクセスの確保等に取り組むとともに、支援制度の十分な周知を図ること。
十六、後期高齢者医療制度における金融所得の勘案に当たっては、公平な負担及び支払い能力に応じた負担の実現という観点から、特続可能な医療保険制度の在り方を検討するとともに、把握されていない所得を正確に捕捉する方策についても検討すること。制度導入後の後期高齢者の受診などへの影響について実態を把握・検証し、必要な見直しを行うこと。また、同制度においては、現在、現役並み所得の被保険者の給付費が公費負担の対象とならないことも踏まえ、高齢者の窓口負担割合の検討の中で現役世代の保険料負担への配慮も含めた制度の在り方を検討し、所要の措置を講ずること。

十七 全国健康保険協会への国庫補助の在り方については、国庫補助が財政基盤の安定につながってきたことや、保険者機能の十分な発揮の観点、その財政運営の実態等も勘案しつつ検討するとともに、今回の改正による時限措置終了後における保険財政運営の在り方については、中長期的な視点で検討すること。その際、きめ細かく有効な疾病予防・健康づくりの推進を可能とする体制を確立するよう努めること。

十八 子育て世帯の保険料負担の更なる軽減について、軽減措置の更なる拡充を含めた検討を進めること。

十九 社会保障制度を将来にわたって持続可能なものにするため、近年の急激な社会・経済状況の変化に応じた、あるべき社会保障の理念とグランドデザインに基づく、社会保障と税が一体となった改革の実現に向けて検討を進めること。
 
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