自民党創薬力PT・橋本座長 「創薬政策の国家戦略化は達成」 社会保障費用の財政フレームに踏込む議論へ
公開日時 2026/07/27 04:52
自民党社会保障制度調査会「創薬力の強化育成等に関するプロジェクトチーム(PT)」の橋本岳座長(衆議院議員)は7月24日、第17回日本製薬医学会年次総会のシンポジウムにビデオ出演し、「創薬政策の国家戦略化は達成した。次のステップは実行に移すこと」と強調した。高市政権が閣議決定した骨太方針2026と日本成長戦略については、「国内市場の魅力度向上という概念を通じて薬価へのリンクも達成した」と評価し、社会保障費用の財政フレームに踏み込む議論をしたいと意欲を示した。一方で今後の課題に触れ、政権が変わるたびに会議体が設置され直すことをあげ、「政府全体を束ねる司令塔」の必要性にも言及した。
橋本座長は、近年は緩やかなドラッグ・ラグの減少傾向が認められるものの、2023年、24年と拡大していることに言及。「これは審査ラグではなく、日本の政策変更によって長らくドラッグ・ロスが生じていた医薬品の承認申請が行われたことに起因するものだ」と説明。結果的にドラッグ・ラグの解消につながるとして「これまでの議論の成果」と強調した。
◎薬価の仕組みを都合のよい財布代わりにするのは限界だ
今後取り組むべき課題について橋本座長は、「そろそろ社会保障費用の財政フレームに踏み込む議論をしたい。薬価の仕組みを都合のよい財布代わりにするのは限界だ」と指摘。今回の骨太方針2026については、日本の医薬品市場の魅力を高める観点から、革新的新薬のイノベーションのさらなる評価について検討を進める文言を明記したと説明。一方の日本成長戦略も、日本市場の魅力度向上に向けて特許品の市場規模について、特許品の世界の成長に比肩する成長を目指す方向を文章化したことで、「医薬品産業振興と薬価につながっていることが分かる」と述べ、「私個人の希望としては、もっと素直にかけと言いたい」と述べながらも評価した。
◎製薬産業へのメッセージ 「保険料を支払う価値が伝えきれていない面もある」
橋本座長は製薬産業へのメッセージとして、「患者さんは(クスリで)自分が助かった時にすごく感謝していると思うが、健康な人はあんまりそう思っていない。そこにギャップがある。いま保険料を下げろみたいな話が政策テーマになっているのは、もちろん負担が重すぎるという生活者の声みたいなものもあると思うが、同時に支払うための価値が何なのかということが伝えきれていないという面もあるのではないか」と強調。自民党PTのヒアリングで早稲田大学ビジネススクールの牧兼充准教授が発言した「必要な医薬品へのアクセスなき国民皆保険制度の維持は本末転倒」を引用しながら、「こうしたことを少し考えて今後の活動をして欲しい」と述べた。
◎牧兼充・早大准教授 薬価制度「グローバルなマーケットメカニズムを前提として再構築」

シンポジウムで牧兼充・早稲田大学ビジネススクール准教授は創薬エコシステムについて、「スタートアップと大企業の連合体への移行なしに日本の製薬産業が基幹産業・成長産業になることはない」と強調した。一方で創薬力向上のメカニズムについて牧准教授は、「生産性は開発品目数×成功確率×薬価(価値)÷(開発期間×コスト)で決まる」と説明し、大手企業だけでは限界があり、スタートアップによる多産多死の環境を通じて、エコシステムが成功確率を上げ、開発期間とコストを下げる効果を持つとの見解を披露した。一方で資金調達環境については、「フェーズ2以降の資金調達がVCだけでは賄えず、M&Aする企業も日本にほぼないため、そこで力尽きる構造がある」と指摘。また、日本ではスタートアップ立ち上げのタイミングが早すぎる問題があり、トランスレーショナルリサーチ段階での資金提供がないため、VCから資金を得るしか方法がなく、VCの10年以内回収制約により本来必要なエグジットタイミングまで持たない資金構造になっているとの分析結果を示した。その上で牧准教授は、政府資金と民間投資を組み合わせた「ブレンデッドキャピタル」を推奨した。
牧准教授は、健康医療安全保障としての創薬・先端医療について、「医薬品の製造能力だけでなく、エコシステムの存在自体が通商上の交渉のカードとなり得る」と強調。有事には、ワクチン、感染症薬、生物兵器、バイオセキュリティとして社会的に極めて重要な財である」と述べ、「地政学的リスクの極めて高い時代において、薬価問題を社会保障費のみで議論することには限界がある」と指摘。「グローバルなマーケットメカニズムを前提として再構築する必要がある」との見解を示した。
◎オシアナスバイオ・綱場CEO 「IPOだけでなく、M&Aも常に出口戦略として準備を」

オシアナスバイオの綱場一成代表取締役CEOは同シンポで、ドラッグ・ロスの主因に触れ、日本市場の魅力度低下に伴い、米EBP(新興バイオファーマ)の参入割合は27%に止まると指摘。その要因として、日本単独の開発費用が1社あたり100~200億円(希少疾患でも数十億円)、審査プロセスも3~5年と、「米国スタートアップにとってわざわざ資金と時間をかけて日本で開発する意味がまずない」と指摘した。また、日米研究開発資金の差として、総R&D費用は30倍、日米VC投資は20倍、AMED vs NIHの予算規模35倍で、「日本は資金力・優先度ともに後回しされる」とも分析した。
一方でアキュリスファーマにおいて2製品(スピジア点鼻液、Pitolisant)のドラッグ・ロス解消を実践したことを紹介。自身の経験からスタートアップはドラッグ・ロスを解消できるかの問いに「Yes」と回答。すでに起きているドラッグ・ロスでなく、将来のドラッグ・ロスを回避することを条件とし、開発コストをめいっぱい抑えるか、海外VCからの大規模資金調達を進めることが必要とした。また、IPOだけでなく、M&Aも常に出口戦略として準備しておくことに加えて、グローバルクラスの人材を確保し、海外企業との交渉を推進する考えも強調した。