「院内・クローズ」からオープンコミュニケーションスタイルへ進化する MC3.0総括編その3

公開日時 2017/02/28 00:00
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マルチチャネル3.0研究所
主宰 佐藤 正晃

 

佐藤 正晃 氏
マルチチャネル3.0
研究所 主宰

 

この連載の中で何度か言及した通り、医師の環境変化は同時に製薬企業のプロモーション活動の変化につながらなければいけないのは自然な流れであると言える。外来から医局への帰り道、学会の懇親会の間など、これまでのMRからのコミュニケーションの場所は限定的であった、かつMRと医師の一対一の関係であるクローズな環境でのディテール活動であったと思う。しかしながら、医師の働く環境はスマートフォンの普及や政府が主導する地域包括ケアシステム推進に伴い、在宅医療や中山間地区での専門医の枯渇を防ぐための医療ICTを活用した連携など、医療従事者自身の働き方そのものが大きく変化してきている。

 

 

ICTをベースにした医療と
ヘルスケアの融合

 

2018年4月の診療報酬改定に向け、中央社会保険医療協議会(中医協)総会でもICTを医療で活用する議論が活発に繰り広げられている。この背景には、少ない医療資源の有効活用というキーメッセージがあると私は感じている。すでに首相官邸も診療報酬で医療ICTを評価する方針を明言しており、その議論の場が年明けから中医協に移ってきたというのがいまの状況だ。

 

大雪積る北国などでは患者を医師が自ら足を運んで在宅医療で対応することは簡単ではない。ただでさえ大都市と違って医療資源自体が枯渇しており、物理的に医師や看護師を直接派遣する事は容易ではない。無論医療の本質としては、患者の体調を直接見る必要性は誰もが理解できるだろう。

 

一方で、血圧や脈拍や体温などのデータが家庭で容易に入手できるならば、ICTの遠隔システム連携で対応できるという事は容易に想像がつく。家庭にあるヘルスケア機器(体温計 体重計 血圧計)だけに止まらず、冷蔵庫や電子レンジ等と連動する事で、食事と血圧の関連などを組み合わせ、人々の健康管理をクラウド上にあるAIシステムが指導含め対応する事は可能な時代である。そしてその情報は医療機関とつながることで、家庭に存在している健康情報と医療機関にある医療情報が組み合わされることにより疾患予防そしてリハビリに活用することが出来る。それがICTをベースにした医療とヘルスケアの融合の実現である。

 

 

スマートフォン活用が
引き起こすイノベーション

 

2016年度に保険収載した「Join」は医師同士がスマートフォンで患者の診断を行うソフトである。導入促進の背景についてアルムの坂野社長は、「特に中山間地区では専門医の確保が急務で、実際に確保されても激務の医師がほとんどです。Joinの良いところは治療に貢献できるのは当然ですが、医療従事者の勤務時間の改善にも役立つのです」――と話す。

 

電子カルテやPACSの大手企業は、特定の医療機関の中で使われるシステムを意識して展開してきているが、アルム社のソリューションは必ずしも医療機関の中だけでの利用を想定していない。外出したとしてもスマートフォンを利用して診療支援を行うことが出来る。まさにスマートフォン革命である。

 

 

AnyOne AnyTime
AnyWhere

 

製薬企業がこれまで取ってきたプロモーション活動の大部分は「院内、クローズ」な環境を想定したプロモーション活動であったと思う。しかしながら、どの調査を見ても医師の情報源は、インターネット網の活用はかなりの比率を占めてきている。

 

「院外、オープン」な環境でも情報提供をするためには医療ICTの活用は必須である。勿論メールでの情報提供や、Web講演会、メルマガ、エムスリーやケアネットのディテールソリューション等は既に活用は進んでいると思う。しかしながら、それらのeマーケティングツールはOneWayで利用されている事がほとんどである。インタラクティブな医師とのコミュニケーションの本質は実際の診療支援に限りなく近く、そして、Push型である必要はない。

 

薬剤の最適使用や患者のアドヒアランス向上に製薬会社としていかに貢献できるかがポイントとなると思う。最近ではデジタルヘルスベンチャーがこれまでの医師へのディテール活動のフォローではない形でのソリューションを提供している。ウェルビーが提供する「Welbyマイカルテ」は、糖尿病や生活習慣病の患者さんの自己管理をサポートするクラウドサービスとして、血糖値・血圧・体重などの測定値や、食事や運動の記録を簡単することが出来る。その情報を患者同意の上医療機関に提供することで患者と医師の連携による治療の質の向上、そして家族へのその情報を提供する事で本人の継続利用促進の活動を行っている。

 

これまで家庭で測定されたバイタルデータに関しては、医療データという面で信頼性が高くないとされてきたが、昨今の家庭用医療機器の性能は著しく上がってきている。医療とヘルスケアをつなぐソリューションは、既存プレイヤーではなくて、デジタルヘルスベンチャーのようなこれまでの医療機関に対するお作法をある意味壊すイノベーティブなベンチャー企業の中から生まれると思っている。

 

 

在宅医療向けに製薬は
どのように活動すべきか

 

2016年4月に在宅医療専門のクリニックの開業が認められるようになり、全国で新規開業が進んでいる。

 

みどり訪問クリニック院長の姜琪鎬氏は「在宅医療という特性上、外にいてもクリニック内部に居る時と同じ環境で仕事できるような環境づくりは非常に重要だ。そのためICTツールを活用した情報共有基盤の構築は、現代の在宅医療では不可欠となる。実際、当クリニックではクラウド型電子カルテをベースに、Google、Dropbox、Evernoteでのスケジュール、文書管理を行い、即時性の高い情報共有にはチャットワークを利用しています」と話す。

 

また、同氏は製薬企業への期待値として「薬の適正使用を啓蒙することは大切ですが、その情報を医師だけでなく看護師や介護スタッフに共有してもらう活動を製薬企業に今以上に行ってほしいと考えています」という。

 

これまでの医師限定のディテール活動から、多職種に対するサポートを期待するコメントがあった。例えばスマートフォンのアプリを使って看護師や介護士に情報を発信する。動画情報を通して適正使用のメッセージを残すなど様々なディテール活動支援が可能になる。これからのMRは、スマートフォン・iPad・PC・無線Wi-Fiを装備したサイバー営業マンになるべきだ。

 

 

デジタルヘルス×製薬企業で何が起こるのか

 

ここ数年にわたって医療ITの変革に対応してきた医療従事者は、それらを使いこなす土壌が備わっている。例えば、電子カルテの仕様は数社あるが、外勤先で異なる電子カルテをつかう必要がある。医師とのタッチポイントの強化は各社とも真剣に取り組む必要がある。実際の製薬企業の組織改革にも着手がすすんでいる。MSLの組織強化で医師が望む専門性の高く、中立性のある薬剤情報の提示を推進する企業や地域包括ケアに対応したエリアマーケティングが求められる。実際に、KAM(キーアカウントマネージャー)の組織化など、ここ1、2年で製薬企業も変化してきている。そして医療ICTの推進と同時並行で前述したデジタルヘルス企業と製薬企業の接点が増えてきた。

 

これまではアプリで患者を治療する?医師は忙しくてスマートフォンなど見ない?Web講演会なんか興味ない?――などと言ってきたが製薬企業自体が、ベンチャーコンテストの主催者側につく時代である。私自身ベンチャーコンテストで審査委員をする機会があるが一般企業の参加者として製薬企業の参加者が多数見受けられる。

 

2017年3月3日、秋葉原UDXにてMC3.0研究所主催によるセミナー「デジタルヘルス時代に向かう製薬ビジネス」を開催する。医療機関の先進的IT活用事例、デジタルヘルスベンチャー、話題のAI創薬等業界話題のメンバーが一堂に会するセミナーを実施する。デジタルヘルス×製薬企業で何が起こるのだろうか?

 


マルチチャネル3.0研究所とは:(MC3.0研究所)
「地域医療における製薬会社の役割の定義と活動スタイルを定義することを目的にして、製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめとする医療関係者へのタッチポイント増大に向けたMRを中心とするマルチチャネル活用の検討と実践を行う研究機関」である。設立2015年4月主宰 佐藤正晃(一般社団法人医療産業イノベーション機構 主任研究員)

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