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財政審建議 26年度診療報酬改定「高度急性期・急性期病院を重点化」 診療所、調剤報酬は適正化を

公開日時 2025/12/03 05:44
財務省の財政制度等審議会(十倉雅和会長・住友化学相談役)は12月2日、「2026年度予算の編成等に関する建議」を取りまとめ、片山さつき財務相に手渡した。26年度診療報酬改定については、「高度急性期・急性期を中心とする病院分と、診療所分や調剤報酬のメリハリ付けを図る」ことが必要と主張した。病院経営の深刻さも指摘される中で、回復期・慢性期の病院が黒字であることも指摘。今改定から活用が可能になった医療機関の経営データなどを踏まえて医療機関の経営状況などを見える化し、「医療機関の機能・種類に応じ、それぞれの経営状況・収益費用構造を勘案したきめ細やかな配分が不可欠」としている。

◎診療報酬のメリハリと医療保険制度改革の両面からの実効性を

26年度診療報酬改定をめぐっては、「経済・物価動向等へのきめ細やかな対応とあわせて、現役世代の保険料負担の抑制に向けては、診療報酬改定において、高度急性期・急性期を中心とする病院分と、診療所分や調剤報酬のメリハリ付けを図るとともに、医療保険制度改革において、薬剤の自己負担の見直しや応能負担の徹底を着実に進める必要がある。これらの両面から取り組むことで、その実効性を高めていくことが重要」と強調した。「メリハリある診療報酬の配分を実現することは、財政当局や保険者にとって極めて重要なミッション」と強調した。

◎「単に物価賃金の上昇に対応する全体改定率を求めることがあってはならない」

経済・物価動向への対応が焦点となる中で、「経営の改善や従事者の処遇改善につながる的確な対応が図られるべき」と指摘。そのうえで、「単に物価・賃金の上昇に対応する全体改定率を求めるなどということがあってはならない」とクギを刺した。医療機関の経営データに基づき、医療機関ごとの費⽤構造や医療機能に応じたきめ細やかな対応の必要性を指摘した。

日本医師会が赤字経営の診療所が増加していることについて改めて反論。診療所の利益率や利益剰余金は全体として高水準であることに加え、「多業種との相対比較において開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っている」として、「診療所の診療報酬を全体として適正化しつつ、地域医療に果たす役割も踏まえて、高度急性期・急性期を中心とする病院やかかりつけ医機能を十全に果たす医療機関の評価に重点化すべき」と主張した。

一方で、病院についても機能や種類で経営状況が異なることを指摘。「急性期の病院は経常利益率が低い。一方、回復期・慢性期の病院は黒字であり、診療所は病院に比べて経常利益率が高い。また、急性期機能が高い病院ほど、医業費用のうち材料費の占める割合が高い傾向にある」として、経営状況に応じた改定の必要性に言及した。

◎処方箋料の水準「処方料(院内処方)の水準と同程度とすべき」 一般名処方加算廃止を

具体的な点数としては、処方料・処方箋料や後発医薬品使用体制加算の見直しを提言した。医薬分業や後発品の使用促進について、「制度導入当初の目的は一定程度達成された」との見方を表明。「処方箋料(院外処方)の水準は、処方料(院内処方)の水準と同程度とすべき」と主張した。また、後発品の使用促進が進んでいることから、「一般名処方加算は廃止し、後発医薬品に係る体制加算は減算措置へと転換する必要がある」と主張。。「更なる後発医薬品の促進については、先発品との価格差を活用した選定療養化の拡大により図ることとすべき」と提案した。

◎「かかりつけ医機能の報酬上の評価」の再構築を 

「26年度診療報酬改定では、患者本位のかかりつけ医機能の実現のために必要な制度の姿を見据えながら、報酬体系を再構築すべき」と主張した。「まずは、かかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所への初診料・再診料の減算措置を導入すべき」として、1号機能を有さない医療機関についての厳しい対応を求めた。また、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料を例に挙げ、「ゼロベースで見直しを図るべき」とした。

◎リフィル処方箋の拡充へ「実効的なKPI早期に設定を」

医療の効率化の必要性も言及。「医療の質・アウトカムを重視しつつ、人員配置の適正化、病床数の削減、入院機能の高密度化、外来機能の機能分化・連携・集約化、地域医療連携推進法人の活用、リフィル処方箋の拡充など、医療提供の効率化のためのあらゆる方策を実行すべき」とした。

特にリフィル処方箋の拡充については強く主張。「リフィル処方は、患者の通院負担の軽減や利便性の向上、医療機関の経営効率化及び医療費の適正化という“三方良し”を実現し得る」として、「国民各層への周知徹底と医療関係者の理解促進を通じて、“リフィル処方が当たり前”となる社会の実現が期待される」などとした。「患者の必要に応じた受診機会の確保に留意しつつ、リフィル処方の推進に資する実効的なKPI を早期に設定し、その利用促進に向けた必要な政策対応を検討・実行すべき」としている。

◎調剤基本料1の適正化 後発品調剤体制加算、地域支援体制加算の見直しを

調剤報酬については、「調剤薬局が増加を続け、調剤技術料が一貫して顕著に伸びている中、調剤報酬についても適正化の方向で検討すべき」と主張した。特に調剤基本料1に問題意識を表明。「現在でも、受付回数次第では集中率が高い場合にも高い点数(調剤基本料1)が算定されることとなっており、更なる適正化の余地がある」と指摘。「今後は、処方箋受付回数の多寡にかかわらず、処方箋の集中率が高い薬局は、調剤基本料1の適用対象から除外する方向性を徹底すべき」と主張した。

後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算を「抜本的に見直すべき」と提案した。後発医薬品調剤体制加算については廃止の必要性に言及。地域支援体制加算については、「調剤基本料1の薬局への優遇を廃しつつ、地域フォーミュラリへの参画や、OTC 薬に係る普及啓発、リフィル処方の促進などを評価対象に加え、地域の医療資源の有効活用や薬剤安定供給の拠点としての機能を重点的に評価できる加算に再編すべき」としている。

◎診療報酬は2年に1回が原則「将来の物価上昇率も見据えて検討する必要ある」

診療報酬改定をめぐっては、物価高騰が続くなかで、奇数年であっても、単年度の賃金・物価上昇分の確実な上乗せを要望する声が日本医師会などからあがっているが、「診療報酬改定は原則として今後2年間の診療報酬を定めるものであるため、足もとの物価上昇率のみならず、将来の物価上昇率も見据えて検討する必要がある」としている。

診療報酬の引上げは、「医療機関の収入増につながる一方で、国民負担の増加に直結する」と強調。診療報酬の改定率については、1%引上げた場合には約5000億円の医療費の増加(公費約1800億円、保険料約2500億円、患者負担等約700億円)となる。高齢化や医療の高度化により、「仮に改定率がゼロであっても26年度の医療費は増加して、その分現役世代の保険料負担を含めた国民負担の増大につながる」と指摘。「26年度予算要求においては、医療費ベースで1兆円相当(改定率換算で2%相当の伸び)が既に織り込まれている」としている。

改定率は賃金・物価動向を踏まえて設定されるが、物価については、「生鮮食品を除く総合指数で見ると25年後半から上昇率が鈍化し26年度は2%前後で推移する見通し」であることも言及。賃金については、「指標によってバラツキが見られている」としている。

◎OTC類似薬含む外来薬剤 薬剤の自己負担見直し「早急に結論を」

医薬品関連では、薬剤自己負担の見直しについて提言した。OTCについては、薬局・ドラッグストアで購入する場合と医療機関で処方を受ける場合の自己負担額に差があるとして、「公平性の観点からも課題がある」と指摘。「諸外国の例(医薬品の処方制限、有用性に応じた自己負担割合の設定、定額自己負担)も参考に、必要な医療の保障とのバランスを確保しつつ、OTC 類似薬を含む薬剤の自己負担の在り方を見直すべき」と主張した。

日本でも以前、別途薬剤費の自己負担を求める“薬剤一部負担金”が導入されていたことに触れ、「今後とも、高額薬剤の保険収載が進むことが見込まれる。そのため、特に、日常的な疾病管理の中で処方される薬剤などリスクの高くない医薬品については、別途の自己負担を求めることを改めて議論すべき」と指摘した。健保法の附則で、「将来にわたり自己負担割合が3割を超えない」とする旨が明記されているが、「(この関係も含めて)OTC 類似薬を含む薬剤自己負担の在り方について、国民的な議論を喚起することが必要」とした。そのうえで、薬剤自己負担の見直しについては、「OTC 類似薬を対象とした限定的な見直しにとどまらず、外来薬剤に関して広く対象として、一定額の自己負担を追加的に求めることも含め、幅広い選択肢について真摯に検討を進め、早急に結論を得るべき」としている。

高額薬剤が増加することが予想される中で、「費用対効果評価制度等の一層の活用を含めた薬価制度上の最大限の対応が必要。保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大、民間保険の活用について検討を進めるべき」とも言及している。
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