厚労省が薬価制度改革の骨子提示 製薬業界に産業構造転換迫る 業界内に戸惑いも

公開日時 2017/11/24 03:53
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厚生労働省が11月22日の中医協薬価専門部会に、薬価制度抜本改革の骨子案(本誌既報、関連記事)を提示したことで、製薬業界との調整が本格化する。同日示された骨子案は、新薬創出加算制度の名称を改め、その対象範囲を制限するほか、長期収載医薬品やオーソライズド・ジェネリック(AG)の「薬価高止まり」を是正する見直しルールを盛り込み、製薬業界への産業構造転換を迫った。特筆すべきは製薬企業の高コスト体質にメスを入れたところ。製薬業界は次回11月29日の薬価専門部会で意見陳述するが、昨年12月に4大臣合意した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に刻み込まれた趣旨の重さへの戸惑いも見え隠れする。一方で長期収載品の社外移管やMRを含む営業リソースの見直し、さらにはMRのKPI設定を抜本的に見直すなど、社内改革に弾みがつくとの声も聞かれだした。

ひとつの医薬品のライフサイクルは、新薬の上市に始まり、数年間の市場浸透期間を経て特許切れを迎え、長期収載品と後発品がとともに市場を争い、最後のステージとなる基礎的医薬品を迎える。今回の薬価制度抜本改革の骨子は、このすべてのステージにメスを入れた。新薬の価値評価は、アンメット・メディカルニーズという言葉があるように、新薬開発は患者本位であるべきで、新薬を処方する医師や薬剤師が求めるニーズに価値を与えるべきである。経済優先主義は成り立たない。一方、長期間の使用で情報の蓄積された医薬品は、そのマーケットに委ねるべきであり、必要以上の経済原理や処方を歪める経済行動は、限りある保険制度の枠内である以上、慎むべきである。そんなメッセージを骨子案は発している。

「長期収載品の薬価についての新たな仕組みは、我々業界にとっては非常に大きな変革。先発企業のみならず後発企業もかなりの影響を受ける」-。中医協専門委員の上出厚志氏(アステラス製薬執行役員)は、同日の中医協薬価専門部会でこう危機感をあらわにした。

厚労省が薬価専門部会に提示した資料には、次の文言が刻まれている。「長期収載品が事実上の情報提供の役割を担っており、これが後発品よりコストのかかる主たる原因である」、「本見直しは、長期収載品に依存しないビジネスモデルへの転換を求めるものであり、かつ新薬開発には多くの期間が必要だ」-。


◎新薬創出加算の試行導入―特許期間後の薬価はマーケットに委ねる


新薬創出等加算が試行的に導入された当時、製薬業界は特許期間中の薬価の維持と同時に、特許期間後の薬価については、その市場に委ねることを約束していた。しかし、これとは裏腹に、当時の医薬品マーケットは降圧薬やPPIなど、ブロックバスターと呼ばれる年商1000億円超の大型製品が数多く誕生し、製薬企業の経営を支えた。各社はMRなど営業部隊を増強し、全国10万件の診療所と8500件の病院に、いつでも情報提供できる体制を整えた。それから数年を経過し、これらブロックバスターが特許切れを迎える。ちょうど同じ時期に政府は後発品の使用促進を重要施策に掲げ、診療報酬やと調剤報酬を通じて、医師や薬剤師に後発品への切り替えを喚起する。米国では保険制度の違いこそあれ、先発品の特許が切れると瞬く間に後発品に置き換わる。遠い日本では、「そんなことはあり得ない」と高を括っていたが、政府が数量シェア80%を打ち出すことで、あり得ないはずの後発品の市場浸透がスピード感を増し、ついには先発品の牙城を崩壊するに至る。その過程において何も変わらなかったのが、医薬品のマーケティングであり、SOV(シェア・オブ・ボイス)型のMRによる市場アプローチの手法だ。

◎「高止まり」はなぜ起こったか

「薬価の高止まり」が今回の改革の標的にされている。なぜ、高止まりが起こったのか。長期収載品が製薬企業各社の収益の柱になっていたことは否めない。各社の次世代新薬が、マス市場中心のブロックバスターから、ニッチ市場中心のスペシャリティーに移る中で、唯一取り残されたのが、旧来型のマーケティングであり、市場へのアプローチだったのではないだろうか。新薬創出加算の試行導入当時に約束した、特許期間後はマーケットに委ねるはずの長期収載品の薬価の高止まりが経済行動によって形成されたのであれば、そこに、いずれメスが入ることは予測できたはずだ。今回の薬価制度抜本改革の骨子案は製薬業界に対し、こうした経済活動を含む構造転換を促している。

すでに武田薬品、塩野義製薬、アステラス製薬、中外製薬など、大手企業は長期収載品の社外移管や売却などを進めている。この動きは、今後さらに加速することが想定される。後発品の市場浸透が進んだ製品については、市場からの撤退も認めた。この日の中医協で、保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は企業名こそ明かさなかったものの、企業側から撤退の要望があることも明らかにした。

企業構造が変化する中で、MRの働き方にもメスが入る。財務省の財政制度等審議会は、MRの待ち時間の長さなどを指摘したが、大量のMRを投入し、キーメッセージをコールする、いわばシェアオブボイス(SOV)でシェアを獲得してきた生活習慣病などの市場は、今回の改革で姿を消すことになる。革新的新薬に対応する情報提供能力や、地域包括ケアシステムに合致したコーディネーターとしての役割を発揮するなど、MRのKPI自体も見直す必要がある。

◎革新的新薬の創出―フェアな環境を整えることで投資意欲を高める

一方で、革新的新薬創出については、品目を絞り込み、企業要件を厳格化したものの、「革新的新薬創出等促進制度」を制度化するなど評価する。承認審査の観点からも、条件付き早期承認制度が導入されるなど、研究開発の合理化を後押しするなど、創薬環境を整える。いわば、フェアな環境を整えることで、製薬企業の投資意欲を高める。企業のリソースも、新薬開発を促進できるよう、国内の研究開発投資へとリソースを振り分けることも必要になるだろう。企業間の合併や提携なども進む可能性が高い。産業の構造改革がスピードを上げて進むことになる。

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