中医協 費用対効果評価で支払い意思額調査実施せず 抗がん剤・難病の基準値が焦点に

公開日時 2018/06/14 03:51
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中医協費用対効果評価・薬価・保険医療材料の合同専門部会は6月13日、国民が健康な状態で1年間生存するために新たな医薬品・医療機器にいくらまで支払う意思があるかたずねる “支払い意思額調査”を現時点では実施しないことを決めた。調査結果は2019年度以降に見込む制度化に際し、基準値として反映する方針だったが、日本医師会をはじめ、実施に慎重な声があがっていた。試行的導入では、増分費用効果比(ICER)の500万と1000万を基準値に用いており、この日の合同部会でも「正当化できる基準」であることが確認された。ただ、欧州では抗がん剤や難病などは別の基準を定めているケースや、基準値に幅を持たせているケースもある。こうした可能性を踏まえ、価格調整の議論とあわせて議論が進むことになりそうだ。

費用対効果評価の試行的導入では、健康な状態で1年間延命させるために、比較対照品目に比べ1年間で500万円以上医療費が増加する場合は、ICERの値に基づいて薬価の引下げを検討。さらに1000万円以上コストが増加する場合には、一定幅薬価を引き下げる。一方で、1年間に増加する医療費が500万円を下回る場合には、費用対効果が良いことから価格を維持することになる。比較対照品目より効果が高く、トータルの医療費が削減される品目については、削減される医療費の範囲内で薬価を引き上げることも検討する。

中医協で基準値を改めて検討する必要性が指摘される中で、医療経済学などの専門家から組織される研究班は、「現時点で国として基準値の設定を目的とした新たな調査を実施する必要性は低い」との結論をまとめた。支払意思額調査は「ひとつの参考情報になり得る」が、質問方法や提示額、獲得できる質調整生存年(QALY)など調査方法により結果が影響を受けると指摘。そのため、支払意思額だけでなく、現在の医療システム全体での生産性を踏まえた“機会費用”や現在償還されている医療技術の水準、国民の所得・生産性、諸外国の基準などを総合的に勘案して決定するのが妥当とした。

これに対し、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、「我々は従来から支払意思額調査の実施には反対してきた。我々の主張に沿う」と述べた。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も、「費用対効果評価の制度化においての支払い意思額調査は行わないことは十分理解した」と述べた。ただ、「将来的な調査研究として、アカデミアの分野で積極的な取り組みをお願いしたい」との見解も表明。アカデミアが行うことでバイアスが軽減されることに加え、調査手法やデザインなどの研究が進むことに期待感を示した。

◎支払側・幸野委員「価格調整と一体の議論を」 

基準値についても議論が及んだ。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、欧米諸国で価格調整に用いず保険適用での推奨などに活用されている実態から、「諸外国を参考にしているようで日本独自のやり方ではないか」と指摘。医療機器が医薬品と同額である点や、重篤な疾患の基準値の在り方などを問題提起した。さらには、価格調整の議論と一体となる必要性を指摘。「基準値を先に決めて価格調整の在り方を決めていくというのは違ったやり方だ。いまの価格調整の在り方をどうするかも含めて検討を進めていく必要がある」と述べた。

研究班の委員も務めた福田敬参考人(国立保健医療科学院)も英国やオランダ、スウェーデンでは抗がん剤・難病などについて別の基準を設けていることを紹介。疾患の重篤性に応じた基準値の在り方などは、「価格調整する我が国でも検討する余地はあるという意見が研究班でもあった」と述べた。

専門委員の上出厚志委員(アステラス製薬株式会社執行役員医療政策部長)も、「生存期間が延長する一方でQOLの大きな改善が得られない場合が多く、1QALYあたりの費用が大きくなってしまう傾向がある」と述べ、理解を求めた。

◎抗がん剤・キイトルーダとイブランスなど4品目で再分析 価格調整には用いず


厚労省はこの日の部会に、新規収載品4品目が費用対効果評価の試行的導入の対象品目であることも報告した。対象品目は、抗悪性腫瘍治療薬・キイトルーダ(MSD)、イブランス(ファイザー)と、医療機器のAbsorb GT1スキャフォールドシステム(アボットバスキュラージャパン)、インスピリス RESILIA大動脈弁(エドワーズライフサイエンス)。いずれも再分析中で、引き続き再分析を実施し、費用対効果評価専門組織で総合的評価(アプレイザル)を行い、評価結果を報告するとしている。ただし、結果は価格調整に活用せず、制度化に向けた検討に活用する方針。すでに既収載品13品目が対象となっている。
 

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