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中医協 特区内の遠隔服薬指導で「暫定的」に薬剤服用歴管理指導料算定可能 福岡市で運用開始

公開日時 2018/07/19 03:52

中医協総会は7月18日、特区内でタブレット端末などを活用した遠隔服薬指導について「暫定的に薬剤服用歴管理指導料を算定できる」ことを了承した。ただ、診療・支払委員からは、特区以外での遠隔服薬指導に慎重な意見や、厳格な運用を求める声が相次ぎ、あくまで限定的な運用にとどめることも確認した。特区以外の遠隔服薬指導については、対面などを義務付けた医薬品医療機器等法(薬機法)改正の議論を踏まえて18年度中に結論を得る。その必要性について関係者間でコンセンサスが得られれば、調剤報酬上の位置づけに議論が発展することも想定される。同省は近く疑義解釈を出す方針。

この日の中医協は、特区内での遠隔服薬指導をテーマに議論を行った。18年4月実施の診療報酬改定をめぐる議論では、離島・へき地など物理的な距離が離れている患者に対してタブレット端末など医療ICTを活用した遠隔診療が議論となった。診療・支払の双方から日常診療での活用を視野に保険点数を導入に対してコンセンサスを得た段階から、「オンライン診療」と名称を変えた経緯がある。今回の中医協総会は、あくまで特区内での離島・へき地での利用に限る「暫定的」な措置を議論する位置づけであったため、厚労省はオンライン服薬指導という名称の使用を避けた。

◎患者に薬剤が届いた後の服薬指導も要件に

遠隔服薬指導の対象範囲は、特区内で離島・へき地に居住する者で、遠隔診療が行われており、対面での服薬指導ができない場合に限るとされている。この日厚労省は、「対面診療の原則の下で、継続して診療を受けている患者が対象」ことも明確化した。

そのうえで、暫定的に薬剤服用歴管理指導料を算定するにあたり、服薬状況の聴取や記録・管理など対面での要件を満たすことにくわえ、▽患者の手元に薬剤が届いた後も改めて必要な情報を確認する、▽厚労省の定める、情報通信を用いた診療に関する指針を参考に情報セキュリティ対策を講じる、▽お薬手帳の活用を前提とする―ことを要件として求める考えを示した。一方で、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は算定要件を満たさないとした。

「オンライン診療のみならず、遠隔服薬指導についても離島・へき地の利便性と都市部の同様の議論はかなり違う。改めて明確に分けるべきだ」(診療側・松本吉郎委員・日本医師会常任理事)、「特区での限定的なシーンにおいて、特区での特殊性に鑑みて暫定的、かつ対面と同様の服薬指導の条件を認めたうえであれば、異論はない」(支払側・吉森俊和委員・全国健康保険協会理事)-。この日の中医協では、条件付きで了承する意見が相次いだ。診療側の安部好弘委員は、特区以外での保険診療が可能になったとの誤った認識が浸透することに懸念を示し、厚労省側に対応を求める一幕もあった。オンライン診療の算定については、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で定められた施設基準を満たすことなどが要件とされており、この日もガイドライン(指針)の策定を求める声もあがった。


◎特区以外の遠隔服薬指導 厚科審・制度部会で検討 慎重論多く

遠隔服薬指導をめぐっては、政府の規制改革推進会議で「オンラインでの服薬指導の一定条件下での実現」として2018年度中に検討・結論を得ることとされている。現在、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で、19年度中に対面診療の原則が定められている医薬品医療機器等法(薬機法)改正も視野に検討が進められている。

遠隔診療については診療報酬上の位置づけが明確でないなど、運用面についての指摘はあったものの法改正の必要はなかった。一方で遠隔服薬指導は薬機法で原則として禁止されており、法改正が必須であるため、遠隔診療とは議論の方向性が異なるとの指摘もある。制度部会で厚労省は、へき地などの在宅医療の必要な患者に対して対面での服薬指導の補完的な位置づけでの活用を提案している(本誌既報、関連記事)。オンラインでの服薬指導の特区以外での導入について慎重論も多い。検討結果を踏まえて運用面についても、ガイドラインより上位概念である、法改正や省令改正なども選択肢に議論が進むとみられている。

ただ、この議論の先に、将来的な調剤報酬上の位置づけに議論が発展する可能性も秘める。この日支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、暫定的に導入された遠隔服薬指導の点数が対面と同等であることを疑問視する声をあげており、こうした観点も視野に議論が進む可能性が高い。

◎福岡市でも遠隔服薬指導が始動 患者家族に安心感も

特区での遠隔服薬指導はすでに動き始めている。この日、きらり薬局名島店(福岡市、Hyuga Pharmacy)で、算定要件を満たすと想定される東区志賀島に居住する在宅患者への服薬指導が行われた(関連記事はこちら、写真は福岡市提供)。

福岡市によると、患者や患者の長女は、「今後も遠隔服薬指導を利用したい」と語ったという。食堂を経営する患者の長女は、「これまで薬の配達は自宅へ帰った後で、薬の話が聞けなかった。これからは、オンラインで自分が店にいる仕事の間に一緒に話が聞けるので安心だ」などと語ったという。一方で、「高齢者でスマホなどを操作するのが難しい人もいるだろう。家族の補助が必要」とも語った。

福岡市の高島宗一郎市長は、「交通不便地などにお住まいの在宅療養患者やそのご家族の皆さまの負担が軽減されるとともに、今後、人生100年時代を見据え、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくりに大きく貢献するものと期待している」とコメント。福岡市薬剤師会の田中泰三会長も、「訪問後の服薬状況・副作用症状など経時的に患者さんのフォローを行うことなど、補完する意味で大変有効であると期待している」と期待を寄せた。

7月5日にアイン薬局稲沢店(愛知県稲沢市)で1例目の遠隔服薬指導を行ったアインホールディングスは本誌に対し、患者宅への処方薬配達の確認を民間宅配業者の追跡番号で行っていたことなどを説明。調剤報酬の算定に向けて、中医協での議論に沿った形となるよう、手順書などを見直す考えを示した(関連記事)。
 

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