前厚労省武田医政局長 地域フォーミュラリ導入で薬物治療大転換 MRの役割変更は必至

公開日時 2018/08/06 03:52
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前厚生労働省医政局長の武田俊彦氏は8月4日、東京大学で開かれたシンポジウムで講演し、地域フォーミュラリの策定で、薬剤師が職能を発揮し、最適な薬物治療を実現することに期待感を示した。同一処方でも院外調剤と院内調剤で格差があるとの指摘を発端に起きた調剤バッシングは、医薬分業そのものの価値を問われる状況に発展している。こうしたなかで、薬剤師が地域フォーミュラリ策定に乗り出すことで、「ほかの地域に比べて地域フォーミュラリで薬剤費を削減でき、さらに効果として治療効果も上がるということが説明できれば、完全に答えを出していけるのではないか」との考えを示した。MRの役割についても言及し、自社の売上高でなく、地域への貢献を重視した形へとシフトすることを求めた。

◎酒田市病院機構 10月の運用開始目指す 静岡、東京都品川区にも動き

フォーミュラリとは、最も有効性・安全性が確立し、なおかつ経済的な医薬品の推奨リストのこと。政府の策定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に、「生活習慣病治療薬の費用面も含めた適正な処方の在り方の検討」と明記されている。これまで大学病院など院内での策定が進んでいたが、地域へとこの動きは広まりつつある。地域フォーミュラリをめぐっては、協会けんぽ静岡支部が今秋の策定を見据える(関連記事)ほか、地域医療連携推進法人・酒田市病院機構(山形県)も10月の作成を目指している。東京都品川区でも昭和大学病院やNTT東日本関東病院が策定するフォーミュラリが地域へと波及し始めており、全国的にも広がる機運が高まっている。

◎作業効率化に動く医療現場

武田前局長は、地域医療連携推進法人に乗り出すなど地域がネットワーク型へと向かうなかで、「地域医療連携推進法人のように様々な経営主体が突っ込んだ連携をせざるを得なくなる。その中の医薬分業は単なる分業ではない」と述べ、医薬分業も変革のときを迎えているとの認識を示した。

2040年を見据えれば、高齢化に伴う医療費の増大と、深刻な生産年齢人口の減少が襲う。これは、医療・介護も例外ではなく、医師・薬剤師をはじめとした医療従事者のマンパワー不足は深刻になる。業務の負担軽減、簡略化も求められるなかで、「疑義照会をどれくらいやっているかがかつては医薬分業の大きなテーマだったが、医療機関の側から見てもどう対応するかは大きなテーマになってきている」と指摘した。

すでに各地域では処方後の後発品への変更や副作用対応など、事前に取り決めを決める“プロトコルに基づく薬物治療管理(PBPM)”などの取り組みが進められていることを紹介した。これには、ITを活用したネットワークでの情報共有が必須との見方も示した。武田前局長は、「処方箋一件一件で対応するのはきりがない。ITツールによる情報共有、定期的なカンファレンス、そしてプロトコルの策定がカギ」とし、こうした動きが地域フォーミュラリ策定の動きにつながるとの見方を示した。

さらに、地域フォーミュラリの策定による医療費削減効果に言及。「これから国の財政危機の中で、質と効率の提供を得るために院内だけのフォーミュラリでは効果がない。地域でフォーミュラリを活用することが必要になる」との考えを表明。すでに、フォーミュラリの運用に取り組む各医療機関ではその医療費削減効果は数値化されており、こうした取り組みが地域へと広がることで力を発揮することに期待感を示した。

フォーミュラリ策定で採用薬を決める際には、他剤との比較をするためにはMRからの情報だけでなく、審査報告書を熟知することが必要だとの考えを示した。武田前局長は、「全国30万人の薬剤師のうち、何人が審査報告書を読んでいるのか。薬局薬剤師がそういう議論をするということで初めてそういう世界に入っていくきっかけになるのではないか」と指摘。薬剤師がフォーミュラリ策定の議論に参加することで、「薬剤師がこういう職業だったのかと気付いてほしい。病院との関係づくりをし、医師、患者のためになるのかということを実感してほしい」とエールを送った。


◎策定のインセンティブは「アウトカムベースでの後払いも検討を」


フォーミュラリ策定による診療報酬上のインセンティブについては、「これまで診療報酬の点数で誘導をかけた政策は成功したものと失敗したものがある。基本的には、マイクロマネージメントを行うことは慎むべきだと考えている」と述べた。そのうえで、米国のメディケアを引き合いに、「地域フォーミュラリの導入で一定以上の医療費削減された場合に後払いとして上乗せするような仕組み。診療報酬上はないがこういうことをむしろ考えていった方が、効果はあるかもしれない」との考えを表明。現在の診療報酬体系についても、「アウトカムというよりも治療行為そのものに重点が置かれ過ぎている。治療にシフトしすぎた財源配分を変えていかないといけない」と指摘した。

◎MRは「公平な立場でフォーミュラリ策定に参画を」


こうしたなかで、MRの役割についても変革を求め、「自社のためとなってしまうが、公平な立場で、地域ごとのフォーミュラリづくりに貢献していただけないか」と会場に呼びかけた。地域での“サイエンティフィック”な議論への貢献を求めた。医師の情報源としてインターネットの比重が高まる中で、「役目が終わった、とたそがれるのではなくて次の役割は何なのかということで積極的に取りに行ってほしい」と強調した。また、MRの評価軸についても、「自社の売り上げが伸びた伸びないで判断するのではなく、地域にどう貢献するかで会社として評価してほしい」と言及した。


◎理不尽な値引き要求を牽制 共同購入、PBMへの流れも


フォーミュラリをはじめとした動きは、共同購入や将来的には医薬品の交渉を代行するPBMなどへと発展する可能性も秘めており、医薬品流通にも大きく影響する可能性がある。武田前局長は、「単なる量的な購入パワーで理不尽な値引き要求をすることについては医療提供体制を壊しかねないということで是正指導を行っていく。薬局の中には何ら取引自体は変わらないにもかかわらず、チェーンに入ったということだけで大手薬局並みの値下げを要求している例がある。これにコンサルティングが加入していることもある。厳に戒めるように強い態度でお願いしたい」と牽制する一幕もあった。
 

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