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国がんなど研究グループ 横断的がんゲノム解析で新規発がん機構を解明

公開日時 2020/04/10 04:50
国立がん研究センターなどの研究グループは4月9日、同一がん遺伝子内に複数個の変異が生じる現象が比較的に高い頻度で存在し、変異同士が相乗的にがん化を促進するという新たな発がんメカニズムを解明したと発表した。研究グループでは、これまで単独では意義が不明となっていた変異について、一部変異が生じる理由が説明可能となると指摘。加えて、複数変異は分子標的薬の治療反応性を予測するバイオマーカーにもなり得ることから、がんゲノム診療にも役立つと期待を寄せている。研究結果は英国時間の4月8日、科学誌「Nature」に掲載された。

研究は、最大規模の症例数となる6万例(150がん種以上)を超えるがんゲノムデータについて、スーパーコンピューターを用いた遺伝子解析によって実施。まずは、米国のがんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas (TCGA))などに登録されている 1万1043 症例の未治療のがんゲノムシーケンスデータを解析した。がん遺伝子ごとに複数変異が生じている頻度について解析した結果、PIK3CA遺伝子やEGFR遺伝子に変異を持つ症例の10 %が、同一の遺伝子内に複数の変異を有することが判明するなど、同一がん遺伝子内における複数変異は、様々ながん遺伝子に共通して認められる一般的な現象であることが分かった。

このため研究グループでは、複数変異が起こりやすい14 種類のがん遺伝子を同定。最も複数変異の多いがん遺伝子であるPIK3CA遺伝子について、アメリカ癌学会シーケンスプロジェクトGenomics Evidence Neoplasia Information Exchange(GENIE)に含まれる臨床シーケンスデータなど約4万例のシーケンスデータの解析を行った結果、単独で変異が高頻度の部位(E542・E545・H1047)では、複数変異は生じにくいのに対し、単独で変異が低頻度の部位では、複数変異が生じやすいことが判明した。アミノ酸変化についても、複数変異では、単独ではまれなアミノ酸が選択されていたことが分かった。研究グループによるとこの傾向は、他のがん遺伝子においても同様で、研究グループでは、「複数変異の時には単独変異とは変異パターンが異なり、単独ではまれな変異部位やアミノ酸が選択されていた」と結論付けた。

そのうえでPIK3CA遺伝子の複数変異を導入した細胞株を作成し、野生型や単独変異を導入した細胞株と比較する実験を行ったところ、PIK3CA遺伝子の複数変異を導入した細胞株は、細胞増殖が亢進。これらの細胞株をマウスに皮下移植した実験では、複数変異を導入した細胞株由来の腫瘍で、腫瘍サイズが大きくなった。このため研究グループでは、「単独では機能的に弱い変異が複数生じることで、相乗効果によって強いがん化促進作用を持つことが示唆された」としている。

また、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)というがん細胞株プロジェクトデータに含まれる遺伝子欠損スクリーニングデータを解析すると、PIK3CA遺伝子に複数変異を持つ細胞株は、その遺伝子に非常に強い依存度を示したほか、遺伝子の下流シグナルが増強し、強いがん化促進作用を示した。さらにCCLEに含まれる抗がん剤スクリーニングデータの解析では、PIK3CA 遺伝子の複数変異を持つ細胞株は、分子標的薬・PI3K阻害剤に高い感受性を示していた。複数変異が分子標的薬の治療反応性を予測するバイオマーカーとなる可能性を示唆しているという。

研究グループでは、一連の研究成果について、がん遺伝子パネル検査の重要性を示唆する結果になったと強調。これまで意義不明となっていた変異について、生じる理由が一部説明可能となり、がんゲノム医療に有用となると指摘している。今後は、分子標的薬の反応性を予測するマーカーとしての意義をさらに検証していくとしている。



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