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名古屋市立大など研究グループ 乳がん患者の再発不安低減アプリを開発

公開日時 2022/11/04 04:50
名古屋市⽴⼤学⼤学院や国⽴がん研究センターなどの共同研究グループは11月3日、治療中の乳がん患者が抱く再発への心的ストレスを軽減するスマホアプリを開発したと発表した。研究グループは、「スマホアプリを使うことで、通院等の負担を⼤きく軽減できるうえ、場所や時間を選ばずに苦痛を和らげるための医療を受けることができる可能性が示された」と強調した。(画像提供:京都大学・名古屋市立大学)

◎スマートフォン用の認知⾏動療法アプリを開発


開発したのは、スマートフォン用の認知⾏動療法アプリで、▽問題解決療法による「解決アプリ」と▽⾏動活性化療法の「元気アプリ」の2つ。解決アプリでは、患者自身がアプリのキャラクターと会話しながら必要事項を入力することで、問題解決療法を実践できる。例えば、「1人でいるときにがんのことを考えると頭から離れなくなってしまう」などの不安に対し、「休日にがんを考えない時間を2時間つくる」という目標を設定。そのために、散歩をする、カフェに行くなど、具体的で達成可能な目標に細分化して、患者自身の気分の変化を振り返ることができる。また元気アプリでは、花のにおいを嗅ぐ、スイーツを食べるなど、患者自身がやってみたい行動をスマホに記入し、実行した結果を振り返ることで、行動の重要性を学ぶ。

実際に行った臨床試験では、術後1年以上再発のない20~49歳の⼥性乳がん患者447人を対象に、アプリを使⽤する群と使⽤しない群に無作為に割り付け、8 週間後に再発に対する心的ストレスが和らぐかどうかを検討した。評価は、再発について考える時間や心配の頻度など、4つの質問で構成されるアンケートで行った。1つの質問につき、1~6点で不安感を回答できるようになっており、スコアが高くなるほど再発に対する心的ストレスが高いことが示される。

その結果、アプリを使用しない群の14.54(95%信頼区間14.17-14.92)に対し、アプリを使用した群では、13.15(95%信頼区間12.75-13.55)となった。研究グループでは、「アプリを使用した群のスコアは、4週から有意に改善し、24週まで効果の継続を確認した。うつ病に対する抗うつ薬と同程度の効果を得た」としている。

◎「ヘルスケア領域の医療サービスの1つとして社会実装できれば」 名古屋市大・明智教授

乳がん患者の約6割が心理的なケアや治療を必要としているというなか、臨床試験に参加した患者からは、「アプリを進めるなかで、再発不安を考えても仕方ないと思うようになった」、「テンションが下がっているときにアプリで行動を開始できた」などの感想が寄せられた。

名古屋市立大学大学院精神・認知・行動医学の明智龍男教授は、「ヘルスケア領域の医療サービスの1つとして社会実装できればと考えているが、理想的には、やはり保険償還して、多くの方に保険診療の中で使っていただきたい」とコメント。企業とタッグを組んで、早ければ3年以内に社会実装したいとの考えを示した。

さらに、認知行動療法アプリは、不眠やうつなど心理的要因が強い主観症状に効果が発揮できる可能性があると指摘。痛みやうつ、倦怠感のほか、不眠や禁煙などの領域にも展開したいと意気込んでおり、すでにいくつかの領域で臨床試験を始めていることを明らかにした。


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