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国立大学病院長会議・大鳥会長 26年度診療報酬改定「11.0%引上げ」を要望 補正予算で財政支援要請へ

公開日時 2025/10/06 04:52
国立大学病院長会議の大鳥精司会長(千葉大学医学部附属病院長)は10月3日の記者会見で、全国の国立大学病院44施設の経営改善には2026年度診療報酬改定で「11.0%の点数引上げ」が必要と強調した。近く厚労省など関係官庁に正式要請する。会見では、25年4月~6月(第1四半期)の現金収支実績を踏まえた25年度の収支見込の推計値を示し、42施設合計の損益見込がマイナス400億円超が見込まれると訴えた。大鳥会長は、「大学病院が機能不全に陥れば、医師の派遣等で支えられている地域の医療機関の存続も危ぶまれ、地域医療の提供体制の維持にとっても死活問題になる」と指摘。診療報酬点数の引上げに加えて、緊急対応として補正予算による財政支援を政府に要請する考えを示した。

この日の会見には、25年度第1四半期実績を踏まえた現金収支等の見込みを示した。それによると、現金収支マイナスの病院は24年度実績の25病院から8病院増えて33病院となり、病院合計(42施設)の現金収支見込は24年度よりマイナス126億円増加し、マイナス330億円になると試算。「24年度の現金収支と損益収支差から、25年度の損益見込はマイナス400億を超える可能性がある」と報告した。支出増加の要因は、引き続き高額な医薬品や診療材料の使用量増および価格高騰による医療費の増加、さらにエネルギー価格や物価・人件費の高騰など。

◎大鳥会長「医学部生や医師教育もできない。日本から新薬を開発することもできない」

大鳥会長は国立大学病院の経営改善には、26年度診療報酬改定で11.0%の引上げが不可欠と強調。改定率の内訳として、①2024年までの経営悪化分3.6%、②25年度の不足分(人件費等)1.8%、③26・27年度の賃上げ、物価高騰、医師の働き方改革、非償還材料等約5.3%、④新規技術等0.3%―とした。

大鳥会長は、「医学部生や医師の教育もできない、また日本から新薬を開発することもできない」と指摘。さらに。「大学病院の経営基盤強化は地域の医療提供体制の維持にとっても死活になる」と危機感を露わにした。一方で、「大学病院の赤字脱却には、厚労省による診療報酬等の充実が不可欠だが、大学病院の本来の機能を維持・強化する上では、大学病院を所管する文科省から教育研究の財政支援をお願いしたい」と強調。「もう来年まで待てない」と訴え、「自民党の新総裁が誕生し、新首相が指名された後には、補正予算を組むのに1か月程度かかると思うが、是非、補正予算での対応をお願いしたい」と強調した。

◎出席病院長からは、日常診療への影響訴える声が 壊れた医療機器の更新できず

会見に出席した大阪大学医学部附属病院の野々村祝夫院長(副会長)は、「本当に、診療報酬の大幅な引き上げをお願いする。国立大学病院はどこも苦労している。また、一般診療だけではなく、教育、研究を推進するためにも大学病院が機能しなければならない。そのための財政的な支援を是非お願いしたい」と訴えた。

名古屋大学医学部附属病院の丸山彰一院長は、「外来の検査機器が壊れて、それが更新できず検査も間に合っていない。患者さんにも予定した検査ができずに帰って頂いたという事例も起こっている。命に別状があるようなことではないが、そういった不都合がすでに起こっている」と理解を求めた。

京都大学医学部附属病院の髙折晃史院長は、「京大病院には約250億円の医療機器などの資材がある。10年で償還するとして年間25億円で機器を更新するのが通常だが、ここ数年は年間3億円を要ししているのを昨年は2億円、今年に関しては凍結して更新をやめている。余力がないと理解して欲しい」と窮状を訴えた。
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