キッセイ薬品が５月10日に発表した2011年３月期（10年度）連結決算によると、10年５月に新発売した国内初のＥＰＯ製剤のバイオシミラー「エポエチンアルファＢＳ注ＪＣＲ」の売上げが12億5100万円だった。同社は同剤の売上目標を24億5000万円と設定していたため、目標の５割にとどまったことになる。

同社は、エポエチンアルファＢＳの売上げが目標に届かなかった主な要因として、▽プロモーション活動を限定的にとどめた▽先発企業が市場死守に注力した▽バイオシミラーの品質について、市場の理解が浸透しなかった－ことを挙げた。

一方で、同社は、エポエチンアルファＢＳの11年度売上計画を36億8000万円とし、前期比で３倍増を目標に掲げた。この目標達成に向けて同社は、同剤のみを担当する「透析領域プロジェクトマネージャー」１人と、その傘下にエキスパートＭＲ７人を配置し、巻き返しを図る考えだ。同社広報部は、「販売後、半年以上経過して、市販後調査のデータも揃いつつある。こうしたデータをツールとして、エポエチンアルファが品質面で安心していただけることを訴えたい」としている。

このほか、主力製品の10年度売上は、排尿障害改善薬「ユリーフ」が97億2300万円（11.7％増）、糖尿病治療薬「グルファスト」が51億6000万円（5.1％増）、口腔乾燥症改善剤「サラジェン」が９億9000万円（19.6％増）と好調に推移した。連結業績では増収を確保するも、販売管理費などが圧迫し、各利益ベースでは減益決算となった。

◎新中期計画を発表　ユリーフブランドでトップシェア目指す

同社はこの日、11年４月から14年３月まで３か年の新中期経営計画「CORE３」を発表した。国内市場での売上拡大（収益構造の変革）、アライアンスによるグローバル市場への進出・拡大、新薬創出と開発の加速――が柱。このうち国内市場では、主力のユリーフを「トップシェア製品に育成する」とした。この主旨は、コ・マーケティングしている第一三共のユリーフ売上を含めた市場シェアで、排尿障害改善薬市場でトップブランドのハルナールを追い抜くというもの。キッセイと第一三共によるユリーフブランドの市場シェアは現在約30％で第２位だが、13年度末までに40％まで引き上げてトップとなる計画だ。

そのほか国内市場では▽ミチグリニドファミリー（グルファストと、ミチグリニドとボグリボースとの合剤「グルベス配合錠」）を食後高血糖改善薬のスタンダードドラッグに育成▽エポエチンアルファＢＳの市場シェア拡大▽ヘルスケア事業の拡大――に取り組む。

なお、最終年度（13年度）の数値目標は売上高684億円（10年度実績比＝以下同、６％増）、営業利益82億円（27％増）、研究開発費126億円――と設定した。


【連結業績（前年同期比）11年度通期予想（前年同期比）】
売上高643億9300万円（3.6％増）646億円（0.3％増）
営業利益64億6300万円（1.8％減）65億円（0.6％増）
経常利益69億3600万円（3.9％減）72億円（3.8％増）
純利益40億400万円（8.4％減）46億円（14.9％増）

【10年度売上高（09年度実績）11年度通期予想、億円】
ユリーフ97.23（87.06）110.60
グルファスト51.60（49.11）51.00
グルベス-（-）5.40
サラジェン9.90（8.28）11.50
エポエチンアルファＢＳ注ＪＣＲ12.51（-）36.80
ベザトール74.59（84.95）68.90
ウテメリン46.27（48.76）44.00
キサンボン16.97（20.30）15.30
リザベン点眼液26.65（23.84）21.40
リザベン19.11（19.09）18.30
ドメナン3.12（3.49）2.80
カバサール25.68（30.92）23.10
フラグミン8.37（12.61）6.50
リズモンＴＧ点眼液8.74（10.50）7.40
ゾラデックス1.8ｍｇデポ8.05（7.31）8.00
フルスタン6.47（6.17）6.30