IQVIAジャパン MRによる「AIエージェント甲子園」開催 業務への実装や組織力向上を視野に展開
公開日時 2026/06/10 04:52

生成AI活用を点から線、線から面へとつなげていく―。IQVIAジャパンが、AIエージェントの業務実装や生産性向上を視野に意欲的な取り組みを進めている。今春にはCSO事業を担うMRが参加する「AIエージェント甲子園大会」を開催。現場MRの参加型イベントという“点”にとどまらず、作ったAIエージェントを実際の業務で運用したり、他事業部へ展開したりと“線”につなげる。将来的にはMR自身の新たなキャリア創出を含めた組織全体のスキル向上という“面”にまで拡大させていく狙いだ。コンサルティングやテクノロジーなどの部門も巻き込んで、IQVIAジャパンならではの強みを生かした挑戦に迫った。
IQVIAジャパンは、3~5月にMR参加型イベント「AIエージェント甲子園大会」を開催した。24~25年に行った「プロンプト甲子園大会」をさらにスケールアップさせた催しで、CSO事業を担うCSMS事業本部から87人が参加。18チームに分かれて、実際の業務課題の解決につながるAIエージェント作成に取り組んだ。審査にもAIエージェントを活用し、課題定義の明確さや業務インパクト、現場再現性・展開力などを軸に評価した。

最優秀チームには、エリア分析における戦略・戦術の質の向上を課題として取り組んだ4人(天野幹雄さん、堀越隼人さん、服部安孝さん、森祐二朗さん)が選ばれた。
医薬品市場の定量データとMR活動の定性データを統合的に分析し、より有効な“次の一手”を提示するAIエージェントを作成した。活用することで、データ分析にかかる時間を95%削減しつつ、競合製品や対象エリア・施設なども加味した打ち手を豊富に生み出すことを目指して設計された。AIによる審査では、「現場での意思決定スピード向上に寄与する設計になっている」「特定の個人スキルに依存せず再現可能であり、他のエリアやMRへの横展開が現実的」などと高評価を得た。
◎作成したAIエージェントは業務で活用 他の事業部にも展開して検証・改善
イベントの肝はさらにこの先の仕掛けにある。参加18チームが作成したAIエージェントは参加者それぞれが業務で活用。検証の中でさらにブラッシュアップを重ねて、精度を高めていく計画だ。すでに実際の業務で活用を進めている最優秀チームのメンバーは、「効率化はもちろんのこと、企業文化や感情的な障壁といった側面もプロンプトに加味させることでより実効性が高いプランが出せるようになった」、「MRそれぞれのバイアスがかかった偏った解決策ではなく、AIによって全体を俯瞰した方向性を示すことができて納得感につながった」などと手応えを口にした。
さらに今秋以降は活用をMRだけに限らず、コンサルタントやテクノロジー、データマネジメントなどほかの事業部にも展開しながら、利用者からのフィードバックや改良を重ねることで「使えるAIエージェント」にしていくことを目指す。
◎MRの新たなキャリア創出にもつなげる 横展開で組織全体の底上げ見据える
また、参加したMR自身に対してもさらなる成長の機会が用意されている。イベントを通じて成果発表や社内表彰の場があるだけでなく、生成AIライセンスやデータのアクセス権を広げるなど、さらなるスキル向上を支援。将来的にはMRの経験を活かしたプロンプトエンジニアなどの新たなキャリア創出にもつなげていく狙いだ。同時に彼らが同僚やプロジェクトメンバーに横展開していくことで組織全体の底上げまで見据えている。
◎松本CSMS事業本部長 テクノロジー×現場力でAI時代のMR像描く

「価値を生み出すテクノロジーを持った存在と現場のオペレーションを知り尽くした存在が掛け合わされることで、IQVIAならではの強みにつながる」―。エージェントAI甲子園大会の仕掛け人であるIQVIAジャパンの松本大輔CSMS事業本部長はこう強調する。描くのは、MR一人ひとりが培ってきた“経験知”を生かしたAI時代ならではのキャリア像だ。
IQVIAのMRだけでなく、コンサルやテックの部門も巻き込んだイベントは、前回の「プロンプト甲子園大会」に続き、社内外で注目を集める。その理由の一つが、MRの現場視点を取り入れたAIエージェントの実効性の高さだ。加えて、MR個人にとっても、イベントの成果として評価され、他部門の視点からも鍛えられることで、参加者自身のモチベーションにつながり、社内へのポジティブな波及効果も期待される。松本氏も「イベント単発で終わってしまっては意味がない。実際のビジネスに貢献していくことはもちろん、組織全体に生成AI活用を浸透させ、MRの新たなキャリアにつなげていくことを主眼にしている」と強調する。
エージェント甲子園大会から社内への浸透、業務への実装といった一連の取り組みの根底には、「MRの強みの再定義」という狙いがある。普段から医療機関をはじめとして地域に深くかかわるMRにとって、そこで培われた経験知や課題解決のオペレーション力は大きな財産だ。これらを強みとして生かすことで、MRは従来求められる役割にとどまらず、「医療機関や地域が抱える課題や困りごとを解決し、医療の前進の一翼を担うことができる」との期待につながるというわけだ。松本氏は「社会に転がっているのは正解のない問題ばかり。答えのない課題に立ち向かうためには、正しく問いを立てていくことが必要であり、AIを使う上でも重要な視点になる」と強調した。