米ファイザー 研究開発部門3000人規模のリストラ計画 リピトール売上減で
公開日時 2011/02/08 04:00
米ファイザーは約3000人の人員削減を含む、研究開発部門の大規模なリストラ計画を断行する方針を固めた。今年末に特許切れを迎える高脂血症治療薬・リピトール(一般名・アトルバスタチンカルシウム)の大幅な売上減を見込んだ経費削減策の一環と見られる。今後は開発パイプラインの大幅な絞り込みも行われる見込みだ。
計画ではまず研究開発費について2012年の当初計画値だった80~85億ドルを65-70億ドルに削減。これに伴い、同社が有するヨーロッパ最大規模のR&Dセンターであるイギリス南部のサンドウィッチ研究開発センターを今後1年半から2年以内に閉鎖する。現在サンドウィッチ研究開発センターには2400人の従業員がいるが、このうち数百人を除き、解雇される。
また、約4500人を擁するアメリカのコネチカット州のグロトン研究開発センターでも約4分の1の人員について、解雇あるいはマサチューセッツ州ケンブリッジのリサーチセンターへの配置転換となる。
イギリスのサンドウィッチ研究開発センターは、勃起不全(ED)治療薬・バイアグラ(一般名・シルフィナデル)や高血圧治療薬・ノルバスク(一般名・アムロジピン)、緑内障治療薬のプロスタグランジンF2α誘導体・キサラタン(一般名・ラタノプロスト)、抗真菌薬・ジフルカン(一般名・フルコナゾール)を生み出した拠点としても知られている。
そのため同研究開発センターの閉鎖については現地でも大きな衝撃を持って受け止められており、オックスフォード大学神経科学講座教授のColin Blakemore氏は「まさに衝撃的なウェイクアップコールのようなもの。我々にとって最も重要な産業の1つがイギリスの科学の将来性に何ら信用を置いていない証である」とコメント。また、イギリス政界にもこのニュースは飛び火し、デービット・キャメロン首相が「極めて悪いニュース」とコメントするほどで、ビジネス・イノベーション・職業技能担当のヴィンス・ケイブル大臣も「今回の決定に非所に失望している」と語り、完全閉鎖以外の選択肢を模索し、ファイザーと接触していることを明らかにした。
◎GSK 流出研究者の獲得に意欲
イギリスを本拠地とするグラクソ・スミスクライン(GSK)は、今回のファイザーの決定により流出する研究者の獲得に興味を示している。同社のAndrew Witty最高経営責任者は「我々はそこ(サンドウィッチ研究開発センター)にいる有能な人材はもちろんのこと、閉鎖によって吐き出される卓越したアイデアにも非常に関心を持っている」と言及。ただ、「研究開発センターの施設そのものには興味はない」と語り、施設の買収の可能性は否定しいる。