米トランプ大統領は12月19日（現地時間・日本時間12月20日）、アムジェン、ブリストル マイヤーズ スクイブなどグローバルメガファーマ9社の医療用医薬品の薬価を最恵国待遇価格（MFN 価格）まで引き下げることで各社と合意したと発表した。9社の医薬品は米国の全ての州のメディケイドプログラムに最恵国待遇価格が適応される。トランプ大統領は「数十億ドルの節約」になると強調した。このほか9社合計で1500億ドルの対米投資を表明したことを明らかにした。国家安全保障（戦略有効医薬品成分備蓄・SAPIR）の観点からは、BMSがアピキサバン錠剤6.5トン、GSKは喘息患者用の一般的な救急用吸入器の有効成分アルブテロール98.8kgを、それぞれ寄付する方針も報告した。

◎大統領が直接書簡を送付した17社中、これまでに14社が協定締結　

MFN価格まで薬価引き下げに合意した製薬企業は、アムジェン、ブリストル マイヤーズ スクイブ、ベーリンガーインゲルハイム、ジェネンテック、ギリアド サイエンシズ、GSK、メルク、ノバルティス、サノフィの９社。トランプ大統領が7月31日付で書簡を送付した製薬企業17社のうち、これまでに14社が合意（９社以外で合意した企業は、ファイザー、アストラゼネカ、イーライリリー、ノボ、EMD Serono）した。また、今回の合意により、2型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、喘息、慢性閉塞性肺疾患（COPD）、B型肝炎およびC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス（HIV）、特定の悪性腫瘍など、高額な慢性疾患治療薬の価格が引き下げることになる。

◎2型糖尿病治療薬Jentaduetoは525ドルから55ドル、ゾフルーザは168ドルから50ドル

9社は、「TrumpRx.gov」の直接購入プラットフォームを通じ、大幅な割引価格での提供が義務付けられる。例えば、アムジェン社の家族性高コレステロール血症治療薬レパーサの価格は573ドルから239ドルに、ブリストル・マイヤーズ スクイブのHIV治療薬Reyatazの価格は1449ドルから217ドルに、ベーリンガーインゲルハイムの2型糖尿病治療薬Jentadueto（リナグリプチン／メトホルミン）の価格は525ドルから55ドルに、ジェネンテックのインフルエンザ治療薬ゾフルーザの価格は168ドルから50ドルに、それぞれ引き下げられる。

◎ジャヌビアは330ドルから100ドル、プラビックスは756ドルから16ドル

ギリアド・サイエンシズはC型肝炎治療薬エプクルーサの価格を2万4920ドルから2425ドルに引き下げる。また、GSKは吸入器製品群の価格を引き下げるとしており、アドエア・ディスカス500/50は265ドルから89ドルに値下げする。さらにメルクは糖尿病治療薬ジャヌビアの価格を330ドルから100ドルに引き下げる予定。ノバルティスは多発性硬化症治療薬メーゼントの価格を9987ドルから1137ドルに引き下げ、サノフィは、血液凝固阻止剤プラビックスの価格を756ドルから16ドルに引き下げるほか、インスリン製品を1か月分35ドルで販売する予定だ。

このほか複数の企業が主要製品の有効成分を戦略的有効成分備蓄（SAPIR）に寄贈することを合意した。トランプ政権によると、GSKは喘息患者用の救急用吸入器の有効成分であるアルブテロール98.8kgを寄付する。また、ブリストル・マイヤーズ スクイブは、米国で数百万人が服用している血液凝固抑制剤エリキュースの有効成分であるアピキサバンの錠剤6.5トンを、さらにメルク社は、長時間作用型のカルバペネム系（βラクタム系）抗菌薬エルタペネム3.5トンを寄付するとした。

◎ノバルティス　ヴァサント・ナラシンハンCEO「米国政府との長期的なパートナーシップを継続」

ノバルティスのヴァサント・ナラシンハンCEOは、「この契約は、米国の患者さんのために画期的な治療薬の開発と製造を推進するという、米国政府との長期的なパートナーシップを継続するものだ」と強調。「我々はイノベーションが適切に評価され、私たちの医薬品が最も必要としている患者さんに届くよう、世界各国の政府と協力することに尽力している」とコメントした。

◎サノフィ　ポール・ハドソンCEO「政権との建設的な協力で画期的な成果をもたらす」

サノフィのポール・ハドソン最高経営責任者（CEO）は、「政権と建設的に協力することで、我々は米国民の医薬品価格を引き下げ、将来に向けて画期的な成果をもたらすというアメリカの重要な役割を強化する計画を進めている」と強調。「米国の医薬品産業におけるこれらの抜本的な変化は、先進国がイノベーションの価値を認識し、未来に向けて大胆に投資する極めて緊急かつ重要な必要性を一層強めている。サノフィは新的な医薬品が正当な評価を受け、患者さんに確実に届くよう、世界各国政府と連携するという使命を固く守っていく」と述べた。

◎GSK　エマ・ウォルムズリーCEO「米国民が呼吸器系薬剤ポートフォリオにアクセスできる」

GSKのエマ・ウォルムズリーCEOは、「この日の発表は、責任ある価格設定への継続的な取り組みを含め、世界中で医薬品へのアクセス拡大と価格設定の改善に取り組んできたGSKの確固たる実績に基づくものだ」と指摘。「今回の契約を通じて、GSKは患者さんが既存の呼吸器系薬剤ポートフォリオにアクセスできることを保証するとともに、次世代のイノベーションを米国の患者さんに届けていく」と述べた。

◎BMS　クリストファー・バーナー会長CEO「最も弱い立場の人々が医薬品にアクセスできる」

BMSのクリストファー・バーナー取締役会長兼CEOは、「我々は何百万人もの米国民の生活を向上させるために直接行動を起こし、国で最も弱い立場にある人々がこの重要な医薬品に無償でアクセスできるようにする」と明言。「今回の合意はBMSがこれまで取り組んできた、価格の手頃さの向上、透明性の向上、そして人生を変えるような医薬品の発見と開発の歴史を持つ米国への投資継続の取り組みに基づくものだ」とコメントした。