厚労省の中医協・総会は11月18日、新薬19製品（26品目）を薬価収載することを決めた。同省は26日に収載予定。この中には、国内３番手となるインターフェロンを必要とせずにジェノタイプ１型C型肝炎治療を行うアッヴィ合同会社のヴィキラックス配合錠が含まれる。補正加算はなかったが、薬価は１錠２万6801.20円で、１日薬価は５万3602.40円と算定された。予測販売額は２年後に608億円。

ヴィキラックスと競合２剤について治療に要する薬剤費を計算すると、ヴィキラックスは12週投与のため約450万円となる。ギリアド・サイエンシズのハーボニー配合錠は１日薬価が８万171.30円で12週投与のため約673万円。ブリストル・マイヤーズのダクルインザとスンベプラの併用療法は、１日薬価がダクルインザが9186.00円、スンベプラが6561．40円で計１万5747.40円となり、24週投与のため約264万円となる。治療に要する薬剤費では、ヴィキラックスは３剤の中間に位置する。

また、ピーク時の予測販売額が300億円以上となっている製品はヴィキラックスのほか、▽抗うつ薬イフェクサー（ファイザー、９年後320億円）▽週１回DPP-4阻害薬マリゼブ（MSD、10年後372億円）▽DPP-4阻害薬とメトホルミン製剤の配合剤エクメット（ノバルティス、10年後325億円）▽24週に１回投与する前立腺がん・閉経後乳がん治療薬リュープリンPRO（武田薬品、10年後301億円）――の計５製品あった。

収載が決まった製品は以下のとおり（カッコ内は成分名と収載希望会社名）。

▽イフェクサーSRカプセル37.5mg、同SRカプセル75mg（ベンラファキシン塩酸塩、ファイザー）
薬効分類：117　精神神経用剤（内用薬）
効能・効果：「うつ病、うつ状態」
薬価：37.5mg１カプセル160.80円
75mg１カプセル270.70円（１日薬価：270.70円）
市場予測（ピーク時９年後）：投与患者数63万人、販売金額320億円
加算なし

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬（SNRI）。類薬には、デュロキセチン塩酸塩（一般名、製品名：サインバルタ）とミルナシプラン塩酸塩（同トレドミン）があり、同剤は国内３番手。

▽トラクリア小児用分散錠32mg（ボセンタン水和物、アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン）
薬効分類：219　その他の循環器官用薬（内用薬）
効能・効果：「肺動脈性高血圧症」
薬価：32mg１錠4577.00円（１日薬価：１万3444.90円）　
市場予測（ピーク時７年後）：投与患者数1.0千人、販売金額25億円
小児加算（A=５％）：加算理由「小児を対象に国内臨床試験が実施され、小児に係る用法・用量が明示的に含まれていること、比較薬は小児加算を受けていないことから加算要件に該当。加算率は小児患者における同剤の安全性及び有効性のデータが限られていること等から５％が妥当」

希少疾病用医薬品。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。エンドセリン受容体拮抗薬で、血管収縮作用を有するペプチドホルモンであるエンドセリンの受容体を阻害して、肺血管拡張作用などを示す。今回の効能・効果で小児適応を持つのは同剤が初。

▽ピートルチュアブル錠250mg、同チュアブル錠500mg（スクロオキシ水酸化鉄、キッセイ薬品）
薬効分類：219　その他の循環器官用薬（内用薬）
効能・効果：「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」
薬価：250mg１錠214.20円
500mg１錠314.30円（１日薬価：1285.20円）
市場予測（ピーク時９年後）：投与患者数4.5万人、販売金額120億円
加算なし

リン吸着薬で、消化管内で食事由来のリン酸と同剤に含まれる鉄との結合作用によって難溶性の沈澱を形成することで、リンの吸収を抑制する。高カルシウム血症や重篤な胃腸障害など安全性上の懸念が少ないことが特徴。

▽ムルプレタ錠３mg（ルストロンボパグ、塩野義製薬）
薬効分類：339　その他の血液・体液用薬（内用薬）
効能・効果：「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」
薬価：３mg１錠１万6107.60円（１日薬価：１万6107.60円）
市場予測（ピーク時５年後）：投与患者数5.7千人、販売金額11億円
加算なし

経口投与可能な低分子のトロンボポエチン受容体作動薬。同受容体に作用することで、造血幹細胞・巨核球系前駆細胞から血小板を産生する巨核球への増殖・分化を促進し、その結果として血小板数を増加させる。

▽マリゼブ錠12.5mg、同錠25mg（オマリグリプチン、MSD）
薬効分類：396　糖尿病用剤（内用薬）
効能・効果：「２型糖尿病」
薬価：12.5mg１錠559.20円
25mg１錠1045.10円（１日薬価：149.30円）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数87万人、販売金額372億円
加算なし

週１回投与のDPP-4阻害薬で、トレラグリプチン（一般名、製品名：ザファテック錠）に次ぐ２番手となる。DPP-4阻害薬としては９成分目。

▽エクメット配合錠LD、同配合錠HD（ビルダグリプチン／メトホルミン塩酸塩、ノバルティスファーマ）
薬効分類：396　糖尿病用剤（内用薬）
効能・効果：「２型糖尿病（ただし、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る）」
薬価：LD１錠87.70円（１日薬価：175.40円）
HD１錠87.70円
（参考）LDに対応する先発品単剤２剤（エクア錠50mg、メトグルコ錠250mg）の合計１日薬価は195.80円
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数63万人、販売金額325億円
加算なし

DPP-４阻害薬とビグアナイド（BG）系薬による国内初の合剤。有効成分の含有量は、DPP-4阻害薬ビルダグリプチンが「LD」「HD」とも50mg、BG系薬メトホルミンが「LD」に250mg、「HD」に500mg。

▽カプレルサ錠100mg（バンデタニブ、アストラゼネカ）
薬効分類：429　その他の腫瘍用薬（内用薬）
効能・効果：「根治切除不能な甲状腺髄様がん」
薬価：100mg１錠7836.40円（１日薬価：１万6911.00円）
市場予測（ピーク時２年後）：投与患者数53人、販売金額１億円
加算なし

全例調査を行う。VEGFR2、EGFR、RETなど複数のキナーゼを阻害することで、腫瘍血管新生や腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

▽ミティキュアダニ舌下錠3300JAU、同ダニ舌下錠10000JAU（－、鳥居薬品）
効能・効果：「ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法」
薬効分類：449　その他のアレルギー用薬（内用薬）
薬価：3300JAU１錠66.40円
10000JAU１錠201.20円（１日薬価：201.20円）
市場予測（ピーク時７年後）：投与患者数14万人、販売金額50億円
加算なし

ヤケヒョウヒダニ及びコナヒョウヒダニからそれぞれ抽出・調製した抽出エキスを等しい抗原活性比で含有。同社は皮下注製剤を持っているが、アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が発現する可能性があること、注射による疼痛を伴うことなどから、舌下投与の製剤を開発した。

▽ヴィキラックス配合錠（オムビタスビル水和物／パリタプレビル水和物／リトナビル、アッヴィ合同会社）
薬効分類：625　抗ウイルス剤（内用薬）
効能・効果：「セログループ１（ジェノタイプ１）のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」
薬価：１錠２万6801.20円（１日薬価：５万3602.40円）
市場予測（ピーク時２年後）：投与患者数1.4万人、販売金額608億円
加算なし

含有しているオムビタスビル及びパリタプレビルは、C型肝炎ウイルスの複製に関わるNS5A及びNS3/4Aプロテアーゼをそれぞれ阻害することでウイルスの増殖を抑える。これら２成分が新有効成分。リトナビルはパリタプレビルの代謝酵素を阻害して暴露量を高める働きをする。１日１回２錠を経口投与し、12週間続ける。ジェノタイプ１のＣ型肝炎に対してインターフェロンを必要としない経口薬による薬物療法として、▽ダクルインザ錠60mgとスンベプラカプセル100mgの併用▽ハーボニー配合錠――に次ぐ国内３番手の薬剤。

▽イーケプラ点滴静注500mg（一般名：レベチラセタム、ユーシービージャパン）
薬効分類：113　抗てんかん剤（注射薬）
効能・効果：「一時的に経口投与ができない患者における、てんかん患者の部分発作（二次性全般化発作を含む）の治療に対するレベチラセタム経口製剤の代替療法」
薬価：500mg５mL１瓶1978円（１日薬価：3956円）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数3.1万人、販売金額5.5億円
加算なし

単剤療法で使えるようにする。単剤療法は未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。また、この新効能に伴い、点滴静脈製剤の用法・用量に関して、「静脈内投与する」という記載を「点滴静脈内投与する」に改めた。

▽ライゾデグ配合注ペンフィル、同配合注フレックスタッチ（インスリンデグルデク（遺伝子組換え）／インスリンアスパルト（遺伝子組換え）、ノボ ノルディスク ファーマ）
薬効分類：249　その他のホルモン剤（抗ホルモン剤含む）（注射薬）
効能・効果：「インスリン療法が適応となる糖尿病」
薬価：300単位１筒1551円（１日薬価：202円）
300単位１キット2322円
市場予測（ピーク時３年後）：投与患者数14万人、販売金額74億円
加算なし

持効型のデグルデクにより基礎分泌を補充して空腹時血糖値を低下させる一方、超速効型のアスパルトにより追加分泌を補充し、食後の血糖値を低下させる。１日１回または１日２回皮下注射する。

▽リュープリンPRO注射用キット22.5mg（リュープロレリン酢酸塩、武田薬品）
薬効分類：249　その他のホルモン剤（抗ホルモン剤含む）（注射薬）
効能・効果：「前立腺がん、閉経前乳がん」
薬価：22.5mg１筒10万5039円
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数14万人、販売金額301億円
加算なし

24週に１回投与する製剤。なお、既承認のリュープロレリン含有製剤は４週毎、12週毎に投与する。

▽コパキソン皮下注20mgシリンジ（グラチラマー酢酸塩、武田薬品）
薬効分類：399　他に分類されない代謝性医薬品（注射薬）
効能・効果：「多発性硬化症の再発予防」
薬価：20mg１mL１筒5617円（１日薬価：5617円）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数2.1千人、販売金額43億円
加算なし

希少疾病用医薬品。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。抗原提示細胞の表面に存在する主要組織適合遺伝子複合体分子に結合し、抗原特異的なT細胞の活性化を阻害するなどして多発性硬化症（以下、MS）に対する作用を示す。世界でMSの第一選択薬。

▽ヨンデリス点滴静注用0.25mg、同点滴静注用１mg（トラベクテジン、大鵬薬品）
薬効分類：429　その他の腫瘍用薬（注射薬）
効能・効果：「悪性軟部腫瘍」
薬価：0.25mg１瓶４万9307円
１mg１瓶19万7698円（原価計算方式で算定）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数420人、販売金額11億円

希少疾病用医薬品。全例調査を行う。ホヤの一種から単離された化合物。DNAに結合することでヌクレオチド除去修復機構を阻害し、細胞死及び細胞周期停止を誘発することなどにより腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

▽オクトレオスキャン静注用セット（ペンテトレオチド塩化インジウム（111In)、富士フイルムRIファーマ）
薬効分類：430　放射性医薬品（注射薬）
効能・効果：「神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ」
薬価：１セット11万5464円（原価計算方式で算定）
市場予測（ピーク時３年後）：投与患者数5.0千人、販売金額5.8億円

未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。神経内分泌腫瘍（NET）に過剰発現しているソマトスタチン受容体に結合し、NET病巣を画像化する。海外では標準的診断法。

▽アレルゲンスクラッチエキス陽性対照液「トリイ」ヒスタミン二塩酸塩（ヒスタミン二塩酸塩、日本たばこ産業）
薬効分類：729　その他の診断用薬（体外診断用医薬品を除く）（注射薬）
効能・効果：「診断　アレルゲンによる皮膚反応の陽性対照」
薬価：２mL１瓶7966円
市場予測（ピーク時８年後）：投与患者数6.2万人、販売金額0.14億円
加算なし

未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。アレルゲンにより産生され、皮膚を赤くするヒスタミンを含有しており、患者の皮膚に滴下することで、アレルゲンテストと同様に赤くなるかどうかを見る。もともと医師が独自に調製し用いていた。

▽スピオルトレスピマット28吸入（チオトロピウム臭化物水和物／オロダテロール塩酸塩、日本ベーリンガーインゲルハイム）
薬効分類：225　気管支拡張剤（外用薬）
効能・効果：「慢性閉塞性肺疾患（慢性気管支炎、肺気腫）の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解（長時間作用性吸入抗コリン薬及び長時間作用性吸入β2刺激薬の併用が必要な場合）」
薬価：28吸入１キット 4256.90円（１日薬価：304.10円）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数32万人、販売金額217億円
加算なし

チオトロピウムは長時間作用性抗コリン薬（LAMA）、オロダテロールは長時間作用性β2刺激薬（LABA）。同剤は、▽ウルティブロ吸入カプセル▽アノーロエリプタ７吸入用等――に次ぐ国内３番手のLAMA／LABA配合剤。同剤は通常、１回２吸入を１日１回吸入投与する。

▽ゼビアックスローション２％（オゼノキサシン、マルホ）
薬効分類：263　化膿性疾患用剤（外用薬）
効能・効果：「表在性皮膚感染症、ざ瘡（化膿性炎症を伴うもの）」
薬価：２％１ｇ　82.20円（１日薬価164.40円）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数86万人、販売金額16億円
加算なし

▽ロコアテープ（エスフルルビプロフェン／ハッカ油、大正製薬）
薬効分類：264　鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤（外用薬）
効能・効果：「変形性関節症における鎮痛・消炎」
薬価：10cm×14cm１枚　45.90円（１日薬価45.90円）
市場予測（ピーク時10年後）：投与患者数89万人、販売金額37億円
加算なし

エスフルルビプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬（NSAID）であるフルルビプロフェンの活性本体。ハッカ油はエスフルルビプロフェンの溶解補助剤で有効性を期待して配合したものではないが、添加量が薬用量に近似するため有効成分として扱われている。同剤は１日１回。