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【World Topics】薬のブラックマーケット

公開日時 2016/06/10 03:50

当局による医薬品供給の安全管理について、そのレベルの高さを世界に誇ってきた米国-。だが、最近、急速に拡大し続ける医薬品のブラックマーケットが米国を脅かしている。世間を騒がせたのは2010年春にイーライリリーの倉庫にトレーラーで乗り付け、抗精神薬やがん治療薬などの高額医薬品をフォークリフトを操作して大型パレットごと盗み出し、 フロリダ州の独立系の薬局などに売りはらった窃盗事件だ。末端価格で100億円以上を売り上げたと言われる事件の主犯はAmauryとAmedのVilla兄弟。2人は 医薬品のプロ窃盗団を率い、グラクソ・スミスクラインの倉庫からも喘息の治療薬など5億円相当を盗み出してテキサス州の22の薬局に売却した。(医療ジャーナリスト 西村由美子)


Villa兄弟のようなプロ集団は、製薬企業の内情や製品の流通経路に精通し、高額医薬品を正確に見分けて狙い、 盗品の販路も独自に開拓した広範なルートから薬局にも、介護施設にも、病院や医師にもスピーディに売りさばいている。


だが、販売ルートの実態は十分には解明できていない。盗品の買い手である薬局や医療機関などのプロバイダーが口をつぐんでいる限り、患者は盗品を買わされたという事実にも気づかない からだ。何事もなければ「非正規ルートで流通した医薬品を(それと知らずに)買わされ、飲まされた」というだけの被害にとどまるが、考えうるリスクには有効期限切れを無視しての販売、不適切な保管状態で劣化した医薬品の副作用や有害性などがある。


米国FDAのデータから医薬品 に起因する事故を析出しているFDAble社によれば、2010年以降今日までに医薬品の死亡事故レポートは1400人。だが、レポート数が被害者の数を反映しているとは到底考えられない。 たとえ効果がなくても、服薬に起因して入院や死亡する自他になっても、患者自身が 問題に気付くことはきわめて稀だからである。


ブラックマーケットのターゲットが50歳以上高齢者(米国の外来処方薬の71%を消費している)にシフトしていることに、米国政府は憂慮を深めているしかも、かつてのボトックスやバイアグラなどのライフスタイル関連の医薬品から、より一般的な慢性疾患の治療薬(高コレステロール治療薬や喘息治療薬)、あるいは生命に関わる疾患の高額治療薬(抗がん剤やHIV治療薬など)にシフトしている。


2014年に当局が摘発した違法医薬品は市場価格で75億円相当。 世界全体で20兆円を超えると言われている 医薬品のブラックマーケットの氷山の一角だ。




 

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