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厚労省・森審議官 最適使用は日本版プレシジョン・メディシン 医療ICT、患者レジストリー整備で研究開発効率化

公開日時 2016/09/05 03:53

厚生労働省の森和彦大臣官房審議官(医薬担当)は本誌取材に対し、高額薬剤問題で注目を集める最適使用について、医薬品の使用量を適正化するだけでなく、医療ICTや患者レジストリーの整備による研究開発を効率化する、産業振興の側面を併せ持った施策であることを明らかにした。厚労省は、医療情報データベース基盤整備事業(MID-NET)や、ナショナルセンターを中心とした「クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)」の整備を急ぐ。森審議官は、「疾患登録情報を活用して効率的な治験が実施できる環境整備することで、効率的な治験の実施をサポートしたいと考えている」と述べた。患者レジストリーを開発段階から市販後まで一貫したデータベースとして整備を推し進めることで、データベースを通じて得られたデータによる承認申請が可能になるとの考えも示した。


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米国では2015年1月、オバマ大統領が個別化医療の概念を一歩先に進めたプレシジョン・メディシンを提唱した。プレシジョン・メディシンとは遺伝子、ライフスタイル、環境など個々の特性に応じて患者をサブグループに分け、グループごとの予防法や治療法を確立することだ。欧州でも同様の施策が打たれており、いまや欧米での薬事承認にはバイオマーカーがあることが重要なカギとなっている。一方で、製薬企業にとっても、開発段階でバイオマーカーなどを確立することは、開発の意思決定の速度・精度を向上されることにもつながる。こうした中で、推進される日本の最適使用は、いわば国際競争を考えたときには、グローバルスタンダードと言える。


◎「リスクへの対処が製薬企業を応援することになる」



産業振興の観点も重要になるが、森審議官は、「日本で創薬しよう、育薬しようというモチベーションを維持してもらえるような施策の立案が非常に重要だ」と述べた。


日本では、先駆け審査制度などの施策を通じ、世界で最初の上市を日本で行うインセンティブを明確にするが、「ファースト・インクラスの薬剤は、臨床上のインパクトも大きいが、リスクを伴うものも多い」と指摘した。その上で、「新薬の毒性と危険性を早い段階から明らかにし、それを理解した上で適切な使い方の道筋をつけ、確立していく。これが、医薬品が本来の力を発揮する上で絶対に必要だ」と強調。「特に革新的だが、リスクのある医薬品については安全対策が重要なカギを握っている。リスクに対する対処にきちんと取り組むことが、革新的医薬品の創薬に取り組む製薬企業を応援することになると考えている」と述べた。


◎最適使用視野に開発された医薬品へのインセンティブも視野



厚労省は、医療情報データベース基盤整備事業(MID-NET)や、ナショナルセンターを中心とした「クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)」の整備を進める。データベースを開発段階から市販後まで一貫して整備することで、研究開発の効率性を向上させたい考えだ。森審議官は、「承認段階では、妥当な科学水準でできるチェックを事前に行い、市販後にも必要なモニタリングを行う。承認後にリスクの察知や有効性が必要とされるデータを統合させるような道筋をつけることも必要だ」との考えも表明。市販後の最適使用推進の重要性を強調する。抗がん剤・オプジーボについても、最適な投与対象や投与期間をめぐる研究が進められているが、「いまはまだ過渡期だ。医薬品の最適使用を進歩させる余地は間違いなくある。慎重に使う“最適使用”の枠組みの一方で、研究を通じて得られた知見を活かして病態を解明し、さらに進歩したがん免疫療法を開発した方が企業にとっても発展性があってよいのではないか」との考えを表明。「こうして適切な形で開発された医薬品については、保険適応されやすいような仕組みにすれば、皆やる気になるのではないかと考えている」と述べた。


◎医療ICTが「医薬品開発の現場を変える」 薬剤師から患者ニーズの集約も一考



医療ICTの構築は、「医療ICTは、医薬品開発の現場を変える」ことも指摘。これまでの業務は集約化される一方で、「データサイエンスやコンピューターサイエンスなど、これまでとバックグラウンドが異なる人がいなければ、画期的な新薬が生まれなくなる時代も迫っている」との考えも示した。こうした中で、現場ニーズを正確に把握することの重要性も指摘。「医師の嗜好だけでなく、患者の状況を把握し、マーケットを把握することが大切だ。それに合致した製品をタイムリーに提供できればビジネスとして成り立つはずだ」と述べた。マーケットの把握には、「高度薬学的管理機能を担う薬局、薬剤師を養成し、そこから新たに情報を吸い上げる形を構築することなども一考に値すると思う」と述べた。
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