厚労省・三浦経済課長 今後3年間の薬価改定が流通の方向性示す 川上・川中・川下の影響把握へ
公開日時 2018/01/19 03:52
厚生労働省医政局経済課の三浦明課長は1月18日、ユート・ブレーンセミナー(IMSジャパン主催)で薬価制度改革をテーマに講演し、今年4月の薬価改定を皮切りに、19年度の消費税改定、20年度の通常改定と、実質的に全品目を対象とした薬価毎年改定が3年連続で行われる可能性が高まっていると指摘した。その上で、薬価制度抜本改革の主旨を今後3年間で各企業が理解し、この間の市場実勢価格の推移、薬価差の推移、薬価差の状況、医薬品卸、医療機関、保険薬局の影響などを把握するなど、これからの流通改善に厚労省として取り組む考えを表明した。
今週17日の中医協総会で了承された薬価制度抜本改革の成案では、2021年度から薬価の毎年改定が実施されることを明記した。ただ、安倍首相が昨秋の衆院選で19年度中の消費税増税を公約に盛り込んで選挙に大勝したことに絡め、三浦経済課長は、「過去の消費税増税に伴う薬価改定の事例を踏まえても、すべての品目、通常通りの薬価調査を行っている」と説明。全品を対象とした薬価調査・改定が19年も行われる可能性が高いとした。加えて、翌20年4月は通常の薬価改定が行われるとし、実質的に3年連続の全品目改定を経験することになると指摘。三浦経済課長は、「医薬品の安定供給を考えたときに生命線は流通にある」と表明し、2021年度から実施する薬価毎年改定(中間年改定)を前に、川上、川中、川下のそれぞれの流通当事者が備える必要性を訴えた。
さらに流通改善の取り組みに触れ、未妥結減算制度の導入で妥結率に改善がみられたものの、一次売差や単品単価取引の実態には課題があるとし、「これら課題を健全にしていかなければ実勢価格に基づく薬価制度の根幹についての信頼性に反する」と指摘した。具体的な方策として「医療用医薬品関係者が遵守すべき指針」(ガイドライン)」に注力すると強調。取引品目数が多くなると、契約が煩雑になるとの課題にも触れ、こうした対応も踏まえて、「ガイドラインを作って一定の商習慣を示していきたい」と述べた。
薬価制度抜本改革の成案では、新薬創出等加算の品目要件・企業要件が見直され、品目要件からは平均乖離率が撤廃された。12年度に現行の新薬創出等加算が導入される前に、業界側が当時の薬価維持特例としての考え方を提案した背景には、2年に1度の薬価改定のたびに薬価が引き下がることが当然との考えがあったと指摘した。一方で、スペシャリティー領域の新薬は、単一卸を選定した流通を行い、マス市場の製品とは異なる価格形成が行われるようになったとの見方を示し、「薬価が下がって当たり前かどうかということは見直すべきではないかと思っている」と述べた。
その上で、革新性の高い新薬は薬価が維持される構造へと転換する必要性を指摘した。一方で、長期収載品の薬価見直しルールについては、後発品への置き換え期間が終了すると、「企業の主体性が奪われる形で薬価が下げられる」と説明。一部の製薬企業について多大な影響を受けることが懸念されることから、品目数が少ない医薬品やシェアの高い製品での影響を懸念し、緩和措置を行ったことも紹介した。
◎薬価担当と開発部門は「社内情報の共有を」
三浦経済課長は、社会保障費が増大する中で、「大事に思っているのは医療保険の持続性とイノベーション、この2つの目標をどうバランスを取るかだ」との考えを表明。「公正な競争環境を作ってよいものをしっかり評価していくという体制づくりをしっかりしていく」と述べた。17年末には、リアルワールドデータ(RWD)の活用による研究開発の効率性向上などを盛り込んだ医薬品産業強化総合戦略、さらには日本創薬力強化プランを策定し、予算も確保した。三浦経済課長は、「医薬品開発と薬価は、非常に密接、不可分だ。それが、新薬創出等加算の見直しでさらに高まってきた。上市した際にこんなはずはなかったということにならないように、社内の情報共有を積極的に行って欲しい」と製薬企業に要請した。