大日本住友製薬は3月1日、大阪府吹田市にiPS細胞由来の医薬品等の製造を行うための再生・細胞医薬製造プラント「SmaRT」を竣工した。iPS細胞由来製品の専用製造施設は世界初。
同社は理化学研究所などとの加齢黄斑変性の治療に向けたプロジェクト、厚労省の先駆け審査指定制度対象となっている京都大学iPS細胞研究所とのパーキンソン病院の治療に向けたプロジェクトを進めており、それぞれ近く治験段階に入る見通しにあり、2022年度の上市を目標としている。ほかにもiPS細胞由来製品を目指し臨床研究を準備しているプロジェクトが2つある(網膜色素変性、脊椎損傷)。プラントは、これらの治験薬製造とともに、承認されれば商用生産を行う。1製品あたり数百人程度の患者に向け製造できる能力を持つとしている。
プラントは同社の総合研究所内に建設、月内に稼働する。他家iPS細胞を原料とする再生医療等製品が対象で、iPS細胞を分化誘導し、容器に充填し、出荷する。海外への供給も視野に、製造にあたっては再生医療等製品の製造管理、品質管理に関する省令(GCTP)など国内外の製造基準に準拠する。同製品の製造は、複雑で長い工程になるが、全工程を外部から閉鎖された形で製造行えるようにした。また、空調が独立した3つの製造ゾーンを持ち、異なる製品を製造でき、それぞれの製造スケジュールに合わせて柔軟に定期補修や定期バリデーションが実施できる。
多田正世社長は、プラント内で記者会見し、「まずは国内向けの治験薬の供給を予定しているが、いずれは世界初の画期的な治療薬を世界の患者さんに向けて供給したい」と抱負を語った。プラントは鉄骨造2階建て、延床面積は2915m2、総工費は約36億円。