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第一三共 国内外の環境変化で対応急ぐ「重要施策を検討中」 MRの最適化も検討

公開日時 2018/05/01 03:52

第一三共の眞鍋淳代表取締役社長兼COOは4月27日の業績発表会見で、国内外の環境変化を踏まえ、「収益を支える重要な施策を検討中」であることを明らかにした。2018年3月期の国内売上高は6.6%増収(5400億円)を確保したものの、19年3月期の業績予想はARB・オルメテックの特許切れや薬価制度抜本改革などの影響から7.8%減収になるとの厳しい見通しを示した。眞鍋社長は、研究開発から生産、営業体制とあらゆる角度からコスト削減、効率化を進める考えを強調。この日は、北里第一三共ワクチンの生産機能を第一三共バイオテックに再編し、サプライチェーンの最適化にも着手することも発表した。一方、中山讓治代表取締役会長兼CEOは、国内のMR体制について「中長期の見通しの中で、もう一度慎重に環境を見極め、その中で最適な形をとっていきたい」と指摘。さらに18年度から効果をあげる施策も検討段階にあるとして、「相手があることなので、機が熟してから」と述べる一幕もあった。

第一三共が発表した19年3月期業績予想のうち、連結純利益は8.8%減収の550億円となる。売上高に相当する売上収益も5.2%減収の9100億円、国内売上高も7.8%減収の4980億円と見通した。第四期中期経営計画(2016~20年度)によると、17年度の売上収益は目標をクリアしたが、1000億円を掲げた営業利益は763億円と未達だった。20年度の売上収益は1兆1100億円、営業利益1650億円との目標を掲げるが、達成への道のりは厳しい。

ARB・オルメテックの特許切れや、抗潰瘍薬・ネキシウムが特例拡大再算定の対象となるなど、薬価改定の影響も響いた。海外事業では、米国の疼痛事業がミロガバリンのフェーズ3での失敗などで、当初目標の達成が困難な状況にある。国内でも、アルツハイマー型治療薬・メマリーの成長鈍化、抗血小板薬・エフィエントの脳領域効能追加の遅延などがあった。さらに政府の推し進める薬価制度抜本改革や人口の高齢化を背景とした地域包括ケアシステムの構築など、今後の医薬品市場の不透明感なども少なからず業績への影響を見通している。

こうした中で眞鍋社長は、「国内外の環境が大きく変化し、収益環境が悪化している」として、第四期中期経営計画の見直しを進めていることを明らかにした。見直し時期についても、「非常に保守的に申し上げて、第二四半期決算までには公表する。できるだけ前倒しして行う」(中山会長)と危機感も示した。

◎抗凝固薬・リクシアナが国内業績を牽引


一方で、同社の売上を牽引する経口抗凝固薬・リクシアナが国内で収益シェア25.4%(17年度第四四半期時点)、新規患者数の処方箋数シェア(AF+VTE)で41.6%(18年3月時点)まで市場浸透するなど、国内外で伸長。上市・承認国の拡大やライフルサイクルマネジメントでさらなる大型化を見据える。2025年のビジョンに掲げる“がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業”実現に向けた取り組みも進む。抗体薬物複合体(ADC)「DS-8201」は、転移性乳がんのフェーズ3が18年度第二四半期に開始予定であることに加え、大腸がんや非小細胞肺がん(NSCLC)もフェーズ2段階、開始予定にある。AMLの適応取得を目指すFLT3阻害薬・キザルチニブもフェーズ3段階にある。さらに、再生医療・細胞治療にも注力する。Kite社と包括提携を行ったCAR-T細胞療法「KTE-C19」は、「治療抵抗性又は再発の大細胞型B細胞リンパ腫」を対象とした国内でのフェーズ2開始に向けて、当局との相談を終えた。日立化成と治験薬の製造で委託契約を結ぶなど、国内生産の基盤構築も進める。

◎中山会長 「収益改善を考えた打ち手」を検討


中長期的には大型化が期待できる自社製品の上市も視野に入る中で、中山会長は、「中長期に成長を加速する打ち手と、収益改善を考えた打ち手を考えている」と述べた。

“日本ナンバーワンカンパニー”を掲げ、成長を遂げてきた同社。国内医療用医薬品売上高でトップの座をかけてしのぎを削る武田薬品は、アイルランド・シャイアー社の買収に動く。実現すれば、17年3月期決算で立ったトップの座を譲る可能性が高い。中山会長は、「最も重要なのは質、量含めてナンバーワンということだ。結果として、パテント(特許)のある製品を他社からも売ってほしいと思われ、パテントのある製品がわが社に集まることを狙っている」と述べ、現時点では目指す方針に大きな変更がないことも強調した。一方で、「それが現実に実現できれば、規模ばかりにこだわる必要はないと考えている。ただ、そういう製品が集まってくれば、自ずと売り上げも成長するだろうと思っている」と述べた。

◎武田のシャイアー買収「第一三共とは違う戦略」

武田薬品のシャイアー社の買収については、「武田の戦略は、第一三共と違うという印象。方法としてキャッシュ以外の株を使いながら、ということがどんな顛末になるか興味がある。日本発のグローバルファーマとして頑張っていただきたい」(眞鍋社長)、「社内にあるアセットの製品化と社外にあるアセットを獲得するかという意味では、特段珍しいという話ではない。ただ、自社株を使うなど手法については、示唆に富んだ結果になると思う。成功を祈っている」(中山会長)とコメントした。

◎17年3月期決算 オルメテックの売上減、ネキシウムの特例拡大再算定が影響


なお、17年3月期の決算では、特許切れしたオルメテックの売上高が35.8%減。18年度薬価改定で、特例拡大再算定による薬価引き下げを受けた抗潰瘍薬・ネキシウムの買い控えなども響いた。一方で、経口抗凝固薬・リクシアナや抗インフルエンザウイルス薬・イナビル、骨粗鬆症治療薬・プラリアが伸長。テルミサルタン、オルメサルタン、ロスバスタチンとラインアップを揃えたオーソライズド・ジェネリック(AG)を中心に、第一三共エスファ品の売上は467億円と131.5%の増収となった。

【17年度連結業績 (前年同期比) 18年度予想(前年同期比)】
売上高 9601億9500万円(0.5%増) 9100億円(5.2%減)
営業利益 762億8200万円(14.2%減) 780億円(2.3%増)
親会社帰属純利益 602億8200万円(12.7%増) 550億円(8.8%減)


【17年度のグローバル主要製品全世界売上高(前年同期実績) 18年度予想、億円】
オルメサルタン 1497(2180)1000
エドキサバン 771(373)1050
プラスグレル 328(416)非開示

【17年度の国内主要製品売上高(前年同期実績) 18年度予想、億円】
ネキシウム 865(840)760
メマリー 486(469)510
オルメテック 446(694)190
リクシアナ 453(250)540
ロキソニン 365(374)310
テネリア 263(242)270
プラリア 232(180)270
レザルタス 168(175)140
ランマーク 154(139)160
エフィエント 128(104)150
イナビル 253(196)190
クラビット 127(151)70
ユリーフ 111(114)100
オムニパーク 140(142)100
メバロチン 86(104)60
第一三共エスファ品 467(202)非開示
ワクチン事業 419(385)非開示

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