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【Focus】相次ぐ製薬業界のビジョン策定 “社会の見る目”を意識した提言を

公開日時 2019/01/29 03:52

製薬業界は、医療ICTの進展やこれに伴う地域医療システムの変革を見通し、新たな時代の産業ビジョン策定を急ぐ。日本製薬工業協会(製薬協)は1月24日、「政策提言2019-イノベーションの追求と社会課題の解決に向けて」を公表した。日本ジェネリック製薬協会も、ジェネリック医薬品産業ビジョンの今秋策定に向けた議論に着手した。(望月英梨)

産業ビジョンと言うと薬価の制度設計ばかり注目を集めがちだが、今回は少々様相が異なる。政府の推し進めるSociety5.0は、地域医療を一変させる力を秘めている。医療ICTやビッグデータの利活用が地域や社会のシステムを一変させるような破壊力を持つ中で、いまの製薬ビジネスにおいても無視できない存在にまで急成長してきた。極端に言えば、AI(人工知能)が診断の精度を高め、ロボットが手術を行い、処方薬はドローンが届ける。2040年には、そんな世界が到来する。破壊的イノベーションが我々の背中に音もなく迫っているのだ。まさに産業構造改革の羅針盤たるビジョン策定が急がれる背景はここにある。

ビジネス環境を一変させる代表格に「地域フォーミュラリ」の存在が台頭してきた。一つのデータが医療者の行動変容を促す。協会けんぽ静岡支部が注力するのは県内にあるレセプトデータの詳細分析だ。もちろんその視線は後発品の使用比率も含めた処方薬の使用状況に注がれる。基幹病院、保険薬局ごとに処方動向を分析したデータを活用し、地域フォーミュラリ導入に向けて病院薬剤部へ働きかけを行っている。


データを通じた処方動向の“見える化”は、基幹病院、保険薬局それぞれがベンチマークされ、医療従事者の処方動向を含めた行動変容につながる。この話は一見、ジェネリックビジネスにとっては追い風にも見えるが、そうとも限らない。ビッグデータの活用は、医療従事者自身の課題や改善ポイントを抽出する魔力がある。例えば医師や薬剤師が隣の芝生をみるように、自院における処方薬の課題を見つめ、そして解決策を自身が見出す。こうした個々の活動が地域内で行われ、そのデータが集積され、それを共有することで、地域医療のシステムそのものを大きく改善し、変革させるパワーを秘めている。

これまで医薬品産業を論じる基盤にあった地域医療のシステムが、データヘルスの登場と最新テクノロジーとの融合で変革の時を迎える。新たなビジョンの策定は、ある意味必然とも映る。

◎製薬協の政策提言 社会をプラスに生み出す


製薬協が公表した、「政策提言2019」では、ビッグデータやAIの“Society5.0”時代を見据え、新たなヘルスケアイノベーション創出エコシステムの構築を提言した。がんゲノム情報などのビッグデータをAIで解析することで、治癒を可能にする革新的新薬の創出を目指す。さらに“未病”にフォーカスしたソリューションの早期実用化なども視野に入れる。健康寿命の延伸、さらには日本経済への貢献も期待できるというわけだ。

こうした将来像に向け製薬協は、「医薬品の多面的価値」の評価を政府側に要望した。新薬の有効性や安全性といった既存の評価軸だけでなく、革新的新薬の処方で治癒した患者の社会や職場復帰や労働生産性の向上などの社会的価値を薬価に反映する制度設計を求めている。

「医薬品のイノベーションが社会にプラスを生み出すものかを、ぜひ機会あるごとに伝えていきたい。中長期的に意味のあるイノベーションには投資しようと理解は得られるものだと思っている」-。中山讓治会長(第一三共会長)は記者会見でこう話した。

会見で印象に残ったのが、イノベーション実現に向けた投資に対する”国民からの理解”という言葉を中山会長が繰り返したことだ。高齢化に伴う医療費の伸長が社会課題となるなかで、製薬業界が破壊的イノベーションを起こす可能性を秘める産業であることを国民に理解してもらうことは、今や必須と言える。”イノベーション”という言葉だけが独り歩きするのではない、新たな産業像を業界自らが強い言葉で発信することが必要だ。

◎1兆円市場に成長したジェネリックビジネス その先は・・・

いまや1兆円市場に成長したジェネリックビジネスも同様だ。新年早々、ジェネリックビジネスの話題が新聞各紙をにぎわした。高リン血症治療薬・炭酸ランタンの販売で独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会は日本ケミファとコーアイセイ(山形市)に立ち入り検査を行った。発売前に医薬品卸に提示する仕切価を談合した価格カルテルの疑いが強まったためという。「ジェネリックメーカーではよくある話」との声も囁かれるが、一つの製品を複数の製薬企業が販売するビジネスモデルに疑問の念を抱く関係者は少なくない。後発品の数の多さが、保険薬局での在庫の問題となり、医薬品卸のビジネスにも大きく影響しているのは否めない。いまこそ、ビジネスモデルそのものを見直すべき時ではないか。

ジェネリック医薬品産業ビジョンを描くためには、会員各社もマイナス面ばかりいとわずに、まずは将来像を描き、そこから現代まで遡るロードマップを作成する勇気も時に必要だ。日本ジェネリック製薬協会の策定するビジョンではこれからの‟社会の目“を意識し、将来を照らす大胆な切り口となることに期待したい。

 

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