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アステラス安川会長らが政策提言 持続可能な“保健医療システム”へ「医薬品含む保険給付範囲の再設計を」

公開日時 2026/01/23 06:00
日本医療政策機構は1月22日、持続可能な保健医療システムに向け、「医療技術の高度化と超高齢社会の進展を踏まえ、保険給付の範囲を再設計する」ことを求める政策提言を公表した。医療の高度化と高齢化が進展する中で、高水準の保健医療サービスを低い負担で保ち続ける前提を「現実的ではない」として、「見直しは避けて通れない」との見方を示した。そのうえで、公的保険と民間保険の役割分担の必要性にも言及。この線引きは「社会が共有する価値観と密接に結びついている」として、国民的な対話の場を設け、「社会的な合意形成」を得る必要性も指摘した。

◎国民皆保険基盤の保健医療システムの姿「現実に即して改めて描き直す」

政策提言では、「国民皆保険を基盤とする我が国の保健医療システムの姿を現実に即して改めて描き直すことが求められている」と指摘した。「理想を言えば、全ての人にあらゆる医療を等しく保障することが望ましい」としたうえで、「限られた財源のなかで、負担を抑えたまま給付を維持しつづけることは現実的ではなく、むしろこのままでは基本的な医療まで圧迫されかねない局面を迎えている。社会として公的に保障すべき保健医療の範囲と資源配分のあり方の見直しは避けて通れない」と強調した。

そのうえで、医療技術の高度化と超高齢社会の進展を踏まえ、保険給付の範囲を再設計する必要性を指摘。具体的には、「低価値医療等を保険給付から除外し、必要な医療に資源を集中する」、「医薬品の給付を最適化し、イノベーションと持続可能性を両立する」ことを提言した。

◎低価値医療の保険除外「いち早く取り組むべき」 医薬品「一度収載されれば永続」問題視

ウイルス性の風邪に対する抗菌薬の処方や、適応外や不必要な検査・手技等、“低価値医療”の「保険給付からの除外や自己負担率引き上げは、短期的には財政の適正化への影響が限られているとしても、いち早く取り組むべき」との考えを示した。

医薬品については、「一度薬価収載されると、その後もほぼ永続的に保険適用が継続することが一般的」として「保険給付の範囲から除外されない限り、リアルワールドデータで効果が乏しいと判明した医薬品であっても使用が続きやすい構造になっている」と指摘した。「薬価削除の対象や判断基準はなお限定的であり、低価値医療の観点を踏まえた制度の一段の見直しが求められる」と提言した。

◎高額医薬品 公的保険、民間保険、自助の役割分担を 社会的な合意形成も必要

「医薬品の給付を最適化し、イノベーションと持続可能性を両立する」必要性も提言した。医薬品は保険給付率70%(自己負担30%)が基本とされているが、「諸外国では医療上の重要性や疾患などに応じて保険給付率を変える制度がある」として、「今後は海外事例も参考に、患者アウトカムや安全性のデータを基盤として、価格や給付率、給付期間を柔軟に調整できる保険給付の仕組みを導入していくことが望ましい」と主張した。

高額医薬品の一部については、施設基準や最適使用推進ガイドラインの設定、先進医療や患者申出療養といった保険外併用療養費制度の活用を通じて、使用方法や対象患者を絞り込みつつ、公的な医療保険の枠内で柔軟な運用を図る取り組みが進みつつあるとした。一方で、「制度全体の設計はいまだ過渡期」と指摘。「混合診療の原則禁止や国民皆保険の理念、公的な医療保険、私的な医療保険、自助の役割分担を含め、制度間の理念と仕組みの整合性を一段と高めていく必要がある」と主張した。公的保険と民間保険の協会については、「共通の原則や認識を育てていくことが重要である」と強調。「保険給付の範囲を再設計する取り組みは、単なる制度改正や技術論ではなく、社会全体が目指す方向性を問い直す営みでもあり、患者・当事者に留まらず多様な市民を含めた社会的な合意形成が欠かせない」とも指摘している。

◎歳入の確保や効率化で最適化も 不足分は「給付の優先順位を社会的合意に基づいて検討を」

また、「保健医療システムを支える社会保険料や自己負担の仕組みも、制度全体の構造のなかで再点検していくことが重要」と指摘。「日本でも、まず税や社会保険料を含む歳入の確保や制度の効率化を通じて負担の最適化を図り、それでも財政的な余地が不足すると判断される場合に、給付の優先順位を社会的合意にもとづいて検討するという順序が重要だ」としている。

◎年齢だけでなく資産状態や健康状態加味した負担のあり方再設計を 高齢者を再定義

負担の観点からは、「健康寿命の延伸や人口減少の進行を見据え、より公平な負担を実現する」必要性を強調した。「年齢だけに頼るのではなく、資産状態や健康状態(医療の利用度)も加味した多層的な負担のあり方を再設計することが求められている」と指摘。「健康寿命の延伸を踏まえ、高齢者を相対的に再定義する」ことや、「所得と資産も含めた、より公平な応能負担を実現する」ことも盛り込んだ。

保健医療システムを持続可能な形で次世代に引き継ぐために、「科学的根拠に基づく判断と、信頼と透明性に裏打ちされた意思決定の仕組みがこれまで以上に重要」とも指摘。「保険者や審査支払機関等が連携し、エビデンス創出に向けた社会基盤を強化する」必要性にも触れた。

◎“次世代に高品質な医療を継承するために今何を選択するべきか”前向きな姿勢で議論を

社会的な合意形成に向けて、「国民的な対話の場を設け、若年層や現役世代の参画を促進する」重要性を強調。議論に際しては、「重要なのは、“財政制約があるから給付を抑制する”という消極的な発想ではなくはなく、“次世代に高品質な医療を継承するために今何を選択するべきか”という前向きな姿勢で議論を進めること」とも指摘している。

◎ディスカッションメンバーにアステラス・安川会長、元財務次官、前厚労省医務技監ら

政策提言は、「持続可能な保健医療システムへの道筋-社会的合意が期待される三つの視点-」。「視点1:医療技術の高度化と超高齢社会の進展を踏まえ、保険給付の範囲を再設計する」、「視点2:健康寿命の延伸や人口減少の進行を見据え、より公平な負担を実現する」、「視点3:科学的根拠と社会的な合意形成を基盤として、保健医療システムを次世代に継承する」-が柱となっている。

ディスカッションメンバーには、矢野康治・元財務事務次官(国際医療福祉大学 社会保障政策研究所長)や、鈴木康裕・前厚労省医務技監(国際医療福祉大学長)、保険者の佐野雅宏・健康保険組合連合会会長代理、安藤伸樹・前全国健康保険協会理事長(東和薬品社外取締役・監査等委員)、患者の立場から、天野慎介・全国がん患者団体連合会理事長(グループ・ネクサス・ジャパン理事長)、アカデミアから後藤励・慶應義塾大大学院経営管理研究科教授、このほか乗竹亮治・日本医療政策機構 代表理事・事務局長が参加。これに加え、製薬業界からは、安川健司・アステラス製薬代表取締役会長、濱田いずみ・ノボ ノルディスク ファーマ取締役 医療政策・渉外本部本部長が参画している。なお、日本医師会や日本薬剤師会などの臨床を代表するメンバーは含まれていない。
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